【ローズS】穴は前に行ける馬、ヴーレヴーが本命候補 対抗はパラディレーヌ
山崎エリカ

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前に行ける馬が波乱の使者に
阪神開催の直近10回ではかなりのスローペースが4回で、かなりのハイペースになったのは重馬場で行われた2013年のみ。良馬場ならば平均ペースよりも遅い傾向だ。
脚質は逃げ0勝、先行4勝に対し、中団2勝、差し2勝、追込2勝。2着も逃げ馬が2回で追込も2回。阪神芝1800mは外回りで直線が長く、4角から直線序盤にかけての坂の下りで差し追込馬が勢いをつけやすいため、後半型の馬も活躍しているが、意外と前からの押し切りも見られる。
さらに差し追込で連対した馬を詳しく見てみると、2013年デニムアンドルビー(1番人気1着)や2015年ミッキークイーン(1番人気2着)、2023年ブレイディヴェーグ(1番人気2着)など、1番人気および上位人気馬が大半だった。
一方、逃げや4角先頭で連対した馬は2016年クロコスミア(11番人気2着)や2017年カワキタエンカ(6番人気2着)、2018年カンタービレ(5番人気1着)、2019年ビーチサンバ(6番人気2着)など、どの馬も人気薄だ。
今年は桜花賞もNHKマイルカップもオークスもことごとくハイペースで後方有利の展開となっており、今回はそのNHKマイルCやオークスで展開の後押しもあって好走した馬が多い組み合わせ。ペースは上がりそうもなく、かなりのスローペースも視野に入る一戦と見ている。それならば、前からの押し切りを期待したい。
能力値1~5位の紹介

【能力値1位 カムニャック】
芝1600mのアルテミスSやエルフィンSは内容的にもイマイチだったが、距離を延ばして一変。今春のフローラSを7番人気の低評価で勝利すると、オークスで戴冠を果たした。
前走のオークスでは15番枠から五分のスタートを切り、コントロールして中団の外を追走。道中は前に壁を作って折り合い重視で進めた。
3角で外からリンクスティップが上がってくると、その後ろに誘導。4角では同馬の外から軽く仕掛けて直線へ。
序盤で楽にリンクスティップをかわして好位列に上がると、ラスト2Fでしぶとく伸びて先頭列付近。ラスト1Fでは内で粘るアルマヴェローチェとの叩き合いをアタマ差で制した。
この日はやや内が荒れており、稍重馬場から回復して標準レベルの馬場状態。道中でペースは緩んでいるが、前半3Fが34秒8と速く、後方有利な展開だった。つまり、本馬は4角でかなり外を回るロスを作ったが、展開に恵まれた面が大きい。
本馬はテンが速くないので芝2000m以上がベスト。芝1800mとなるとオークス時のように展開の後押しが欲しいところだが、あくまでも前哨戦のここは馬場が悪化しない限り、ペースが上がりそうもない。
それでも能力値、最高値はともにNo.1であり、復帰戦のここでもしっかり乗り込まれている点は好ましい。
【能力値2位タイ ミッキージュエリー】
目下3連勝中の上がり馬。前走は古馬相手の北海ハンデキャップ(2勝クラス/函館芝1800m)を勝利した。
その前走は3番枠から好スタートを決め、しっかりと出して楽にハナを主張。先頭に立つとコントロールしながらも、先行勢が突いてくるので淡々と逃げて3角に入る。
3~4角では先行勢との差を広げ、3馬身差で直線へ。序盤ではさらに差を広げて3馬身半差。ラスト2Fでも後続を寄せ付けず、3馬身半差で圧勝した。
この時は1分45秒6のレコード決着。同日の巴賞でこのタイムを0秒8も上回る走破タイムが記録され、すぐにレコードが塗り替えられたように、この日は超高速馬場で逃げ先行馬が活躍していた日だった。
加えて52kgの軽斤量でテンの速さに拍車が掛かった面はあったが、前後半4F47秒2-46秒5の緩みないペースで逃げ切ったことは高評価できる。
本馬の母ミッキーチャームも函館芝1800mの未勝利戦を逃げて圧勝し、素質が覚醒した馬。藻岩山特別(1000万下/札幌芝1800m)を斤量52kgで逃げ切った後、秋華賞でも2着に健闘したが、ミッキージュエリーもそういった成長力を感じさせる。
今回はオークスの1着、3着、4着馬が出走しているが、どれも差し追込馬。NHKマイルC3着のチェルビアットは前に行けないこともないが、距離延長を意識して後半型の競馬をする可能性が高い。それを考えると、前で戦える本馬の優位性が光る。
【能力値2位タイ タガノアビー】
2走前のオークスでは13番人気で3着と健闘。波乱を演出した。この時は13番枠から出遅れ、無理をさせずに最後方からの追走。道中も最後方で脚をタメた。
3~4角では最内のスペースを拾って後方2列目で直線へ。序盤ですっと伸びて中団まで一気に上がり、ラスト2Fでもそのまま内を通って2列目付近に上昇。ラスト1Fでパラディレーヌとの叩き合いをクビ差制した。
今年のオークスはカムニャックの解説でも述べたように、後方有利の展開。馬場の内側がやや荒れており、各馬が内を開けていたことで、労せずに先頭との差を詰めることができた。
本馬は3走前の矢車賞(3歳1勝クラス/京都芝2200m)でも前が止まらない展開を最後方からラスト1Fでグングン伸びて勝利しているように、しっかり脚をタメれば弾けるタイプ。ただし、ゲートも二の脚も甘い点が弱点だ。
前走の長久手特別(2勝クラス/中京芝2000m)は、まさにその弱点が出た一戦。超絶高速馬場で前後半5F61秒6-58秒1の超絶スローペースで、この時は1番枠から多少出遅れた程度だったが、ペースを意識して好位から離されない位置を取りに行ったため、ラスト1Fで伸び切れずに2着に敗退した。脚をしっかりタメなかったことで末脚が不発に終わったのだ。
ここは前走ほどではないだろうが、ペースが上がりそうもない組み合わせ。道中で動いて勝ちに行き過ぎると崩れる危険性もあるが、後方から着狙いの騎乗なら2着、3着はありそうだ。
【能力値4位 パラディレーヌ】
3走前のつばき賞(3歳1勝クラス/京都芝1800m)では、後の若葉S(L)2着馬ローランドバローズに3馬身差をつけて勝利した馬。この時は5番枠からやや出遅れ、そこから押し進めたが、後方2番手からの追走。道中で外から徐々に挽回して、好位の外で3角に入った。
3~4角でペースダウンすると、楽に2列目の外から先頭列まで上がって直線へ。序盤ですっと伸びて一気に抜け出し、3馬身ほど前に出る。ラスト1Fでも踏ん張り通して3馬身差で完勝した。
この時はややタフな馬場で、前後半4F47秒3-47秒1の平均ペース。3角の上りから4角までペースが落ちているが、後方2番手から位置を挽回。ラスト2Fで一気に抜け出しての勝利はかなりインパクトがあり、重賞でも通用する好指数を記録している。
その走りが評価され、次走のフラワーC(GⅢ)では断然の1番人気に支持されたが、ここでは勝ち馬レーゼドラマに2馬身半も離された2着だった。
しかし、ここでは出遅れて進路が狭くなり、後方からの追走。道中で包まれて3~4角でも後方馬群の中目で進路がなく、直前序盤も前が壁。ようやく伸び始めたラスト1Fでも内から寄られるなど、度重なる不利が影響したものだ。
前走のオークスでは4着。ここでは3番枠から促して最内に切り、アルマヴェローチェをマークする形。道中は中団最内で我慢させた。
3~4角でアルマヴェローチェが外目に動くと、そのまま内から直線へ。序盤で結局アルマヴェローチェの後ろを通して2列目に上がったが、ラスト1Fで内のタガノアビーにクビ差前に出られて4着だった。
この日は馬場の内側がやや荒れていたが、アルマヴェローチェと同様に内目を通したことや、後方有利の展開で1着カムニャックや3着タガノアビーよりも前の位置から早めに仕掛けたことが、ラスト1Fで甘くなった理由だろう。
オークスの1着、3着馬よりも良い内容だっただけに、今回は本命も視野に入れていたが、岡田スタッドの始動戦としては調教が軽い点から本番狙いのようにも感じる。対抗評価までとしたい。
【能力値5位 ダンツエラン】
前走はしらさぎS(GⅢ)で8着。13番枠から五分のスタートを切って押し進めていたが、外のニホンピロキーフがハナを主張すると、じわっと下げて中団の外を追走した。
3~4頭分ほど外を回るロスがあり、直線序盤では3角手前で外から捲って好位に上がった3着馬コレペティトールの後ろから伸びたが、ラスト1F手前から甘さを見せて同馬に3/4差ほど離された。
この時は高速馬場で前後半3F35秒1-33秒9のスローペース。最後に甘さを見せたのは、4角からペースアップしたなかで絶望的なロスを作ったことが大きい。ここでは51kgの軽斤量だったが、それでも古馬牡馬を相手に勝ち馬と0秒6差ならば悪くない。
本馬は芝1600mの阪神ジュベナイルフィリーズや桜花賞では2桁着順に大敗しているが、その着順ほど悪い内容ではなかった。
阪神JFは3番枠から外の馬と接触してやや後手を踏み、やや掛かりながら中団中目で進めていたが、外から寄られてやや狭くなり一列下げる形。3~4角でやや荒れた馬場の内から3列目まで挽回し、直線でも内を通したことでラスト1Fでは大失速した。
桜花賞は稍重の標準的な馬場で緩みない流れ。ここでも14番枠と外枠で、3~4角では2~3頭分外を回るロスを作っている。
本馬は京都芝1400mのファンタジーS(GⅢ)の勝ち馬だが、芝1600mの前走でもそれなりに走れており、高速馬場の芝1800mで内枠なら通用しないこともなさそう。開幕4日目、内有利の馬場をロスなく立ち回ればチャンスはありそうだ。
ヴーレヴーを本命候補に抜擢
ヴーレヴーはデビューから長らく芝1200~1400mを使われていたが、芝1600mのエルフィンSで一変。後続に0秒1差の勝利を挙げた。
同レースでは8番枠からまずまずのスタートを切り、二の脚ですっと先頭に立ったがコントロールして内のラージギャラリーを行かせ、2番手の外を追走。道中もペースが遅くやや掛かっていたが、我慢させながらやや位置を下げ、1馬身ほど後ろの2番手外で3角に入った。
3~4角でも持ったまま追走し、4角で軽く促して半馬身差ほどの差で直線へ。序盤で追い出されるとじわっと伸び、先頭に立ってクビ差ほど前に出る。ラスト1Fはそのまましぶとく伸び、外から食らいつくグローリーリンクを振り切って3/4差で勝利した。
この時は雨と雪の影響による代替開催でタフな馬場ではあったが、前後半3F35秒3-34秒8のスローペース。前有利の展開に恵まれる形での勝利ではあったが、スタミナが不足しがちな休養明けで距離延長に対応したところに、潜在的なスタミナを感じさせた。
2走前の桜花賞は緩みない流れ。1番枠からやや出遅れ、押し進めて好位の最内を狙ったが、先行争いが激化したために最終的には3列目の最内で進めて8着に敗退。この日は雨の影響で前日から様相一変し、馬場の内側が伸びていなかったことや、進みが悪かった辺りに休養明けのエルフィンSで好走した反動も大きかったと見ている。
前走のNHKマイルCはラスト2Fで大失速して17着に敗退。しかし、ここでは先行争い激化していくなか、17番枠からしつこく競ってハナを取り切る形。強引にハナを取りに行ったためにオーバーペースとなり、先行馬が総壊滅する結果となった。
レース後、鞍上の浜中俊騎手は「落ち着きが出てきたことはいい傾向」とコメントしているように、馬自身が掛かっていた様子はなく、距離が延びても折り合い面での大きな不安はなさそう。
今回も手綱を取る浜中騎手は逃げて大失速すると次走で控えすぎる面があり、そこが不安といえば不安だが、今回は超人気薄。実績馬が差し追い込み馬ばかりのここでは前に行ける優位性を生かした騎乗で、クロコスミア(2016年11番人気2着)のようなパターンに期待する。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)カムニャックの前走指数「-17」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.7秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
《ライタープロフィール》
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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