【シリウスS回顧】ホウオウルーレットが重賞初制覇 阪神ダート2000mで輝いたパワーとしぶとさ

勝木淳

2025年シリウスS、レース結果,ⒸSPAIA

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しぶとさを活かしたホウオウルーレット

ダート中距離路線を展望するシリウスステークス(GⅢ)はホウオウルーレットが制し、重賞初制覇。2着サイモンザナドゥ、3着ジューンアヲニヨシで決着した。

阪神ダート2000mは芝スタートで1コーナーまで距離が長く、やや序盤が速くなる傾向がある。内枠のルクスフロンティア、ジューンアヲニヨシに人気のジンセイが先行する構えをみせ、外枠ホウオウプロサンゲが一歩遅れながらもハナを叩いたことで、序盤の600mは12.5-11.2-11.4の35.1と若干突っ込んで入った。

だが、そこから13.3-13.1-13.3とペースは落ちていき、後方から進める馬たちもそう遅れることなく流れに乗れた。ほぼ一団で進む競馬は前から後ろまで勝負圏外がない。そんな中団のペースダウンを利用したのが、勝ったホウオウルーレットだ。

下げてインに潜り込み、遅いラップに乗じて少しポジションを押し上げた。砂を被って嫌がる素振りもあったが我慢して進み、インで脚を溜めながら終盤のペースアップを待った。残り600mからペースは一気に上昇して12.2-12.1-12.9の37.2。ここをインで立ち回れたことが最後の伸びにつながった。

それも終始インにいたわけではなく、4コーナー出口で馬場の真ん中に出して進路をつくった。岩田康誠騎手も手応えを感じていたようにみえる。最後の最後に先行勢の脚が鈍ったところで、鋭く伸びてきた。いかにもホウオウルーレットらしい競馬でもあった。


兄オメガパフュームとの共通点と違い

ホウオウルーレットはデビューから連勝を飾った中山ダート1800mが得意。ダートのなかでもパワー寄りのコースに強く、瞬時の加速を要求される展開だと少し動ききれない面がある。

道悪のダートでも結果を残しているが、速い時計に強いというより、スピード志向のダートで前が苦しくなったときに伸びてくる。2年前のオープン昇級後は特にその傾向が顕著に出ており、1800mを超える距離で上位に顔を出す。中盤までじっくり走れれば終いで上位にくる。中盤で緩む2000mという舞台は最適だった。

母はオメガフレグランスなので、兄は2018年にシリウスSを制したオメガパフューム。兄は父スウェプトオーヴァーボードのためダートでもスピード勝負に強かったが、東京大賞典4連覇など大井2000mでの強さが目立った。外回りコースの大井2000mも長い直線を利して最後まで伸びてくる馬向きであり、その点では兄との共通点がみえる。

一方、ホウオウルーレットは父ロージズインメイなので、兄よりもパワー寄り。苦しいところで伸びてくる。兄のシリウスSは不良馬場で決着時計2:01.5。弟は良馬場で2:04.8。共通点と違いがはっきり出た。

岩田康誠騎手は今回の勝利でホウオウルーレットとは【3-2-0-3】。同騎手は関東馬を中心に特定の相性がいい馬がいる。騎乗馬の騎乗成績に注目すると、穴馬券を狙える騎手だ。


京都で見直したいジンセイ

2着サイモンザナドゥもホウオウルーレットに似たタイプ。前走こそ小倉ダート1700mで抜け出したが、ちょっと動ききれない面をみせる。

今回は先行勢がプレッシャーをかけ合うなか、その背後でじっくり進めることができた。勝負どころでは一旦ジューンアヲニヨシに離されながら、しぶとく伸びてハナ差かわした。ペースアップへの対応には苦労するものの、今回のように序盤で位置をとれれば、しぶとい。川田将雅騎手が騎乗した直近2戦で教えたことが実になってきた印象もある。

3着ジューンアヲニヨシは先行勢のなかでも先に動いて先頭と、しぶとい競馬で善戦した。中盤までもう少し楽に運べれば、粘りも違った。成績の通り2000mはやや長そう。今回は夏休み明けでもあり、叩いて上昇してくるだろう。適性距離より長い舞台でこれだけやれれば、重賞通用のメドを立てたといえる。

ハナ差4着だったのは2番人気ジンセイ。ペースアップした3、4コーナーの手応えをみると、直線ではジューンアヲニヨシをとらえられそうな雰囲気だったが、最後はそこまで伸びきれなかった。いずれも1900m戦だった春の2戦をみる限り、距離が長いわけでもなさそう。急坂で伸びが鈍る可能性があり、次開催の京都で見直せるのではないか。

1番人気テーオーパスワードは7着。勝負所で外にサイモンザナドゥがいたため、直線は内を選択。ルクスフロンティアとタイトニットの後ろに入ってしまい、ちょっと嫌気が差したか。


2025年シリウスS、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 純白の奇跡』(ガイドワークス)に寄稿。

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