【セントライト記念回顧】ミュージアムマイルが持続力勝負でねじ伏せる 2着ヤマニンブークリエは菊花賞への適性示す
勝木淳

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皐月賞レコードVは伊達ではない
菊花賞トライアルのセントライト記念は皐月賞馬ミュージアムマイルが貫禄の勝利で重賞2勝目。2着はヤマニンブークリエ、3着はレッドバンデで決着。この3頭に菊花賞の優先出走権が与えられた。
皐月賞馬ミュージアムマイルはこの秋、古馬中距離路線への挑戦を表明。その始動戦に選んだセントライト記念を快勝した。もちろん、古馬トップ戦線に挑むからにはたとえGⅡであっても世代限定戦はクリアしないとその先を展望できない。
とはいえ、菊花賞に向かわないという選択肢には残念という言葉が漏れるほどのレース内容だった。やはり皐月賞レコードVは伊達ではなかった。
スタート直前、ファイアンクランツがゲートを潜ろうとしてしまい、外枠発走になるアクシデントに見舞われた。パドックで発汗が目立ち、返し馬も決してスムーズではなかった。レース前から精神面で消耗しており、力を出せず、結果は12着。
途中でまくって見せ場をつくったが、モレイラ騎手も我慢させられない状況ゆえのまくりだったようだ。最後は無理をしていない。歩様も乱れており、心配だ。心身がかみ合っていなかった。
後半1000mのロングスパート戦
そんなサラブレッドのコンディショニングの難しさを痛感させられただけにミュージアムマイルの盤石なレース運びが際立ってしまう。予想通りジーティーアダマンが先手をとり、外からサクラファレルが番手につける流れはスローペース。1000m通過1:00.3は馬場を考えれば遅い。引っかかってファイアンクランツが動き、勝負は後半1000mのロングスパート戦へ。
11.9-11.5-11.9-11.4-11.6と11秒台が続くラップ構成をミュージアムマイルはファイアンクランツよりひと呼吸遅らせ、外から進出。最後は馬群の外からねじ伏せた。頭ひとつ力が抜けている馬の競馬だった。
ダービーでは速い上がりに苦戦したが、中山特有のロングスパート戦となれば、走りが違う。もちろん、次走が東京なら末脚強化は必須だが、古馬のGⅠなら持続力勝負になる可能性も高く、斤量差をアドバンテージに善戦してくるだろう。操縦性も高く、混戦向きでもある。
菊花賞向きのヤマニンブークリエ
菊花賞への権利を獲得した2着ヤマニンブークリエはこの開催のトレンドでもある、インにこだわったレース運びで、最後は馬群を割って抜け出した。速い上がりだと分が悪いが、ロングスパート戦で持続力を問う流れになれば、スタミナが活きる。いかにも長距離向きのレース内容であり、菊花賞でも楽しめる。父キタサンブラックとの父子制覇にも期待したい。
3代母はワンオブアクラインなので、この夏話題を集めたヤマニンウルス、ヤマニンアルリフラと同じ一族。勢いがある。ヤマニンブークリエの母ヤマニンプードレはチチカステナンゴ、エリシオと欧州の血が入っており、スピード勝負にならない決着への可能性が高く、長距離への適性も感じる。
3着レッドバンデも先行策をとり、うまく内目に潜って進めた。まくってくる有力どころに距離のアドバンテージを利用して食い下がり、権利を獲得できた。父キズナ、母フィオドラという血統はリメンバーメモリー、フェステスバントと同じ。総じて時計がかかる芝を得意としていたが、レッドバンデは高速決着にも対応できる。適性を考えても、これまでの産駒より上の成績を期待できる。
4着ピックデムッシュは今の中山だと苦しい外を回る形になってしまった。それでも4着まで来ており、現状の力は出せた。レース展開や馬場状態ひとつで上位を狙える器ではある。2勝クラスからの出直しになるが、今回のような内先行優位の馬場でなければ、突破できる。もっとも条件戦なら先行できるので、確勝級ではないか。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 純白の奇跡』(ガイドワークス)に寄稿。
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