【札幌記念】ステレンボッシュの成長力と復活に期待 穴馬は横山典弘騎手が乗るトップナイフ

山崎エリカ

2025年札幌記念のPP指数,ⒸSPAIA

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能力値1~5位の紹介

2025年札幌記念のPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 ホウオウビスケッツ】
昨夏の巴賞(OP・函館芝1800m)と函館記念を連勝した馬。昨年の函館記念は12番枠からまずまずのスタートを切り、二の脚で楽に内からハナを主張したアウスヴァールの外2番手を確保。1~2角で同馬が飛ばしていくと、それを追い駆けず2馬身半ほど離れた2番手で進めた。

3角ではアウスヴァールと3馬身差だったが、3~4角で徐々に差を詰めながら外に持ち題し4角で一気に並びかける。直線序盤で並ぶ間もなく3/4馬身差ほど前に出ると、ラスト1Fで突き抜けて3馬身半差で圧勝した。

当時はややタフな馬場で前後半5F59秒6-59秒6の平均ペース。巴賞を逃げ切り勝ちした後の一戦から控えたことでやや掛かってはいたが、アウスヴァールがペースを引き上げたことで折り合いがつき、今回の出走馬でNo.1の自己最高指数を記録した。

本馬は休養明けの2走前金鯱賞でも2着に健闘。大逃げするデシエルトから大きく離れた2番手で我慢させていたが、向正面で同馬を捉えにいき、3~4角で仕掛けて5馬身差で直線へ。ラスト1Fでデシエルトを捉えたが、最後に外からクイーンズウォークに強襲され、ハナ差で惜敗した。

2走前は超タフな馬場の激流を早めに動いており、デシエルトに次ぐ好内容だった。このように本馬は時計の掛かる馬場やハイペースで上がりの掛かる競馬が良い。

前走の大阪杯は前々走が消耗度の高いレースになったことで余力を残せず、本馬を含め金鯱賞組が全滅。今回はそこから立て直されての一戦となる。

今夏の札幌開催はコンクリートレベルの高速馬場でスタート。先週土曜の稍重から回復した日曜はまだまだ高速馬場だったが、本馬は昨秋の毎日王冠2着、天皇賞(秋)3着の実績があるように、コンクリート馬場でもそれなりに対応できる。

ただ今回はアウスヴァール以外にも同型のケイアイセナが出走しており、他にもリビアングラスやボーンディスウェイなど、先行馬が多数の組み合わせ。毎日王冠や天皇賞(秋)のようなマイペースの競馬はできないだろう。それでも本馬の能力を考えると軽視できない。

【能力値2位 コスモキュランダ】
昨秋の菊花賞こそスタンド前で包まれたことで外からアドマイヤテラに先に動かれ、後方外から動いていくチグハグな競馬で14着と大敗したが、それ以外の芝2000m以上では大崩れしていない。

2走前のAJCCでも3着。同レースは15番枠からいつものように出遅れ、後方外から追走。このときはアウスヴァールの逃げでそこまでペースは遅くなかったが、2角過ぎの下りでスピードに乗せて一気に進出し、3角では2頭分外の好位置につけた。

4角手前で2列目に上がり4角のロスを1頭分に減らし、出口で先頭のチャックネイトに並びかけて直線へ。直線では早々と先頭に立ったが内からマテンロウレオに食らいつかれた。そこから踏ん張り2着争いのハナ差3着を死守したが、外からダノンデサイルに差された。

このときはややタフな馬場で前後半5F60秒6-59秒6の緩みない流れ。レース最速が3~4角中間地点のラスト4F目で、結果的に早仕掛けだった。

中山芝2200mは向上面が短いため、本馬が2着だった昨年のセントライト記念のようなスローならともかく、流れが速いとどうしても早仕掛けになってしまうが、恐ろしいほど長くいい脚を使っていた。

前走の大阪杯は8着とやや崩れたが、2走前に自己最高指数を記録した後の休養明けで、本調子ではなかったと見ている。その上コンクリート馬場の緩みない流れをやや出遅れ、かなり押して好位の外を取りにいく苦しい競馬だった。

今回はそこから4か月半の休養明け。状態が悪くなければレースを使う、マイネル、コスモ軍団が4か月半も休ませた点が不安。実際に追い切りでも体が緩く反応も甘く、今回は叩き台の可能性が高いと見ている。

【能力値3位 ココナッツブラウン】
デビュー当初から馬体重の二桁以上増減を繰り返している馬。大幅体重減の昨秋ローズSや3走前の斑鳩S(3勝クラス・京都芝1600m)では気難しさを見せて末脚が不発、馬券圏外に敗れた。

しかし、昨夏の函館、札幌の滞在時は大きく体を減らすことなく、安定した成績を残せており、今回も7月中旬から札幌に滞在して調整。前走のクイーンSは馬体重20kg増で出走し、2着に健闘した。

前走は4番枠からやや出遅れ、そこからコントロールして後方の中目で我慢。道中は後方馬群の最内で脚を温存し、3角手前では後方2列目の内と外で悩んで中目を選択した。

3角で内目に狙いを絞ってスペースを潰し、4角で最内に進路を取り中団まで押し上げて直線へ。直線序盤で3列目付近だったが、進路を作り切れずフェアエールングの後ろでやや仕掛けを待たされる場面があった。ラスト1Fで内目を捌き最後は急追したがアタマ差届かず。

前走はコンクリート馬場で前後半4F46秒7-47秒6のハイペースで後方有利の展開。内有利の馬場&コースでもあり、本馬は展開と馬場に恵まれた面はあったが、最後の直線でスムーズなら勝っていたような内容だった。

本馬は前走後に放牧予定だったが、不完全燃焼だったからなのか、ここに出走。2005年にヘヴンリーロマンスがクイーンS2着から札幌記念に出走(当時は連闘)して勝利したことがある。しかし、同馬は次走の天皇賞(秋)で勝利するほど実力をつけていた。

それ以外にクイーンSからの出走では、2012年フミノイマージン、2017年フサイチパンドラが勝利しているが、両馬ともクイーンSは休養明けで崩れており、同レースは叩き台だった。

つまり、本馬は前走で余力を残せているかが取捨選択のポイントとなる。個人的には前走である程度、能力を出し切っていると見ているが滞在競馬は良く、展開にも恵まれる可能性が高いため警戒はしておきたい。

【能力値4位 リビアングラス】
3走前の京都記念の2着馬。そのときは3番枠から五分のスタートを切り、かなり押して先行策。かなりペースが遅かったこともあり、最内のスペースをじわっと拾って逃げ馬の後ろ3番手を確保。道中はコントロールして前のスペースを維持し、上手く折り合って進めていた。

3~4角で一気にペースが上がったところで最短距離を通り、4角でも鞭を入れられて2列目の最内で直線へ。

直線序盤でひとつ外のヨーホーレイクに一気に抜け出されたが、最内から一杯に追われて3番手に上がった。ラスト1Fでバビットを捉え、外のマコトヴェリーキーの追撃をクビ差で振り切った。

当時はタフな馬場で前後半5F62秒9-59秒7のかなりのスロ―ペース。やや内有利の馬場で前有利の展開を完璧に立ち回っての結果だった。

しかし、前々走の日経賞も0秒1差の4着に健闘。日経賞は15番枠からまずまずのスタートを切り、じわっと促して2番手の外を追走。道中もかなりのスローで逃げるバビットについていく形だった。

3~4角でペースが上がったが、4角で外から追っつけてバビットと半馬身差で直線へ。直線序盤でマイネルエンペラーに並ばれるが食らいついて抵抗。ラスト1Fでバビットを捉えたが、外差し勢に屈してクビ+クビ+クビ差だった。

当時は超タフな馬場で前後半5F62秒9-61秒3のかなりのスローペース。ただ3角から一気にペースが上がっており、3角で仕掛けを我慢していればもっと上の着順を狙えていた可能性がある。

前走の宝塚記念は休養明けの影響もあって7着に敗れたが、平均ペースの2列目最内で進めて着差1秒0。この日は内有利の馬場で最内を通ったことも善戦した要因だが悪くない。

ただ本馬は距離2200m~2500mで結果を出してきた馬であり、本質的に2000mは距離が短い。さらに現在の札幌はまだまだ高速でスピード不足を露呈する可能性もあると見ていたが、今回も3走前の京都記念同様に内枠。本馬は当落線上の一頭だったが、この枠ならば警戒しておきたい。

【能力値5位 ケイアイセナ】
前走の巴賞(OP・函館芝1800m)の勝ち馬。前走は4番枠からやや出遅れたが、かなり押して3番手を確保。道中はセットアップとコンクシェルが競り合いながら飛ばしていったが、そこから離れた単独3番手で進めた。

3~4角で前2頭が苦しくなり、4角で自然と先頭に立ち1馬身半ほどのリードで直線へ。直線序盤でしぶとく伸びてその差を2馬身に広げる。ラスト1Fでコントラポストに食らいつかれたが、何とかクビ差で振り切った。

このときは函館10日目だが、A→Bコース替わりの影響もあり、超高速馬場。ただ前後半4F45秒9-47秒4のかなりのハイペースで前に不利な展開だった。これを3番手から早め先頭に立って押し切った価値は高く、3着馬に3馬身半も差をつけた。

本馬は5勝中4勝が逃げ切りだが、逃げにこだわる馬ではない。ただ上がりの掛かる競馬に持ち込み、粘り強さを生かしたいいタイプだ。

札幌はまだまだ高速馬場だけに、アウスヴァールが飛ばさなければ競っていくだろう。ただ前走が消耗度の高い競馬で自己最高指数を記録しているだけに、余力を残せていない可能性が高い。おそらく苦しい競馬になるだろう。

本命候補は成長力に期待のステレンボッシュ

ステレンボッシュは昨年の桜花賞馬でオークス、秋華賞ではチェルヴィニアに完敗の2着、3着。しかし、秋華賞では出遅れて後方馬群の中目を追走する形となり、3~4角で包まれて直線序盤で前が壁。進路取りがスムーズではなかった。

秋華賞の次走となる3走前の香港ヴァーズは勝ち馬ジアヴェロットに6馬身離されたが3着に善戦。このときは13番枠から出遅れて後方馬群の中目に突っ込んだが、結局進路がなく、最後方列の外で進めた。

3~4角でじわっとペースが上がっていくなかで仕掛け、4角でややペースが落ちると、外からすっと押し上げて一気に2列目の外まで進出。直線序盤でいったん先頭に立ったが、最後はさすがに甘くなり3着争いで何とか踏ん張った。

このときはおおよそ標準馬場で前後半5F63秒15-59秒29(日本の計測法なら前半があと1秒速い)のかなりのスローペース。また3~4角で内目を通ったジアヴェロットとドバイオナーがワン、ツーだったように、この日は内有利の馬場だった。それを最後方付近から3~4角で大外を回るロスがありながらも早めに仕掛けたことが、上位2頭に離された理由だろう。

休養明けの2走前の大阪杯は、3走前で健闘した疲れもあって13着に敗退。このときもコンクリート馬場のややハイペースの12番枠で、やや内有利な馬場を終始中団外々を追走する苦しい形になったのも敗因のひとつだ。

前走ヴィクトリアマイルも8着に敗れているが、このときは内と外の馬場差が大きくあったなかの2番枠で、馬場の荒れた中団最内を追走。最後の直線でやや外に出してはいるが、馬場の良いところを走れずに敗れた。

本馬は桜花賞からほぼ横ばいの指数推移で成長力を見せていない。しかし、クラシックの勝ち馬が古馬になってから成長しないというのは稀だ。近2走は本調子ではなかったと推測され、追い切りでも動きの良さを見せていた今回は、変わり身に期待したい。

穴馬は一昨年の札幌記念の2着馬トップナイフ

トップナイフは一昨年の札幌記念で休養明けながら2着に健闘。同レースは10番枠からやや出遅れ後方から空いていた最内を走り、2角で好位の最内を確保した。

向上面でプログノーシスが上がってくると同馬に抵抗して3角で早々に仕掛け、4角外から追いかけてきたプログノーシスと1馬身差で直線へ。直線序盤で同馬に前に出られたが、ラスト1Fは粘って3着馬に3馬身差の2着を確保した。

当時は超タフな馬場で前に不利な展開だけに、この2着の価値は高く、このとき自己最高指数を記録した。

こう書くとスタミナ特化型のような感じになるが、本馬は超高速馬場の弥生賞でも先行して2着の実績があるように、超高速馬場も悪くはない。

休養明け、タフな馬場&展開で結果を出した代償は大きく、札幌記念2着以降は完全スランプだったが、3走前のアンドロメダSでは3着と復調の兆しを見せた。

3走前はデシエルトが引っ張る緩みない流れを2馬身出遅れ、単独最後方を追走。最後の直線で苦しくなった馬をかわして3着。展開に恵まれたものだった。

近2走のエプソムCや函館記念は横山和生騎手に乗り替わり、先行して11着、10着に敗れているが、今回は一昨年の札幌記念や3走前アンドロメダSで上位争いへ導いた横山典弘騎手に手が変わる。それならば序盤で無理をさせずの後方待機策だろう。

穴馬は芝3000mの阪神リニューアル記念を圧勝しながらも、実は芝2000mくらいがベストの印象があるハヤテノフクノスケと迷ったが、最終的にはハマった時が強烈なトップナイフを推す。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ホウオウビスケッツの前走指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い
●能力値 =(前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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