【エルムS回顧】ペリエールが2年ぶりの重賞V スピードとスタミナを兼備したヘニーヒューズの“進化系”
勝木淳

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重賞経験豊富なウィリアムバローズのペース
北海道唯一のダート重賞・エルムステークスはペリエールが制し、重賞2勝目。2着ロードクロンヌ、3着ミッキーヌチバナで決着した。
北海道のダート中距離は大沼S、マリーンSと進み、エルムSを迎える。今年、両レースに出走してエルムSに進んだのはテーオードレフォン(5着→2着)とショウナンライシン(6着→11着)だけ。マリーンSには向かわず、大沼Sから駒を進めたのが勝ったペリエールだった。
今年の大沼Sは稍重で行われ、1:43.3で決着するスピード志向の強い競馬。一方、マリーンSは良馬場で少し時計を要する競馬だったので、重賞特有の速い流れへの対応力の差が出た印象がある。
以前ほどマリーンS組の数が多くなく、春のダート重賞経由が人気の中心となり、レースの流れもかしわ記念2着以来のウィリアムバローズが握った。重賞経験豊富な同馬がメリハリある流れを演出し、1000m通過は推定1:00.7。速すぎず遅すぎずの平均的なラップを刻みつつ、中盤で息を入れるなど巧みなレースを展開した。
残り800mは11.6-11.8-12.6-12.5。久々の影響もあったか、終盤は少し息切れしたものの、向正面終盤から3コーナー付近の加速は目立ち、ここで末脚を削られた馬が多かった。
父ヘニーヒューズはエルムS【3-1-0-1】
ペリエールは2年前の東京ダート1600m重賞ユニコーンSの勝ち馬であり、ほかにも武蔵野S3着など東京中心の戦歴。ダートのスピード型であり、反面、小回りコースへの課題を残していたが、今夏はそのイメージを一変させた。
以前は差す形もみられたが、ここ2戦はコーナー4回でも好位にとりつき、立ち回りが格段に向上した。エルムSでも1番枠を利して、終始好位の内目で脚を溜めながら追走し、最少手で抜け出した。
内を回って体力を温存できた点は大きく、この立ち回りができれば、相手が強力になっても食い下がれる。元来から備えていたスピードがあれば、ペースアップにも動じない。
父ヘニーヒューズはJRA重賞15勝目。フェブラリーSを勝ったモーニンやJBCスプリント覇者タガノビューティー、かしわ記念ワイドファラオなどスピード色が濃いが、東京ダービーを勝ったアランバローズ、羽田盃アマンテビアンコ、重賞3勝セラフィックコールなどタフな中距離タイプもいる。エルムSはフルデプスリーダー、セキフウに続き3勝目。産駒通算でも【3-1-0-1】となり、掲示板を外したことがない。
ペリエールの戦歴はスピード、スタミナ兼備の総合力を感じる。ヘニーヒューズの価値をさらに高められるのではないか、そんな期待を抱く。
3代母は武豊騎手が騎乗した1994年のムーランドロンシャン賞を勝ったスキーパラダイス。そこにエルコンドルパサーやフジキセキの血が注がれ、ペリエールにつながる。根底にスピードの持続力があるのも心強い。
ドゥラエレーデは馬体重に注意
2着ロードクロンヌは昇級後、GⅢを3戦して3着、2着、2着と安定感がある。それもすべて異なる舞台、距離でのものなので、頭が下がる。
反面、ちょっと勝ち味の遅さも気になるところ。ペリエールとの差は外を回った分でもあるが、パンチ力の差も感じる。ラスト200mの伸びをどうやって引き出すか、重賞を勝ち切るにはレース戦略の工夫も必要になるだろう。
3着ミッキーヌチバナは前走アンタレスS4着。重賞ウイナーであり、最後に底力の差で3着まで押し上げた。
優位に進む好位勢に対し、あえて打ち負かしにいかず、末脚に懸けたことが好走につながった。近況が冴えず、10番人気と低評価だったことも無欲の差しに影響した。勝ちに行くと甘くなるので歯がゆいところだが、差し脚を磨けば、新たな一面を引き出せそうだ。
6着ブライアンセンスは3着ミッキーヌチバナが直線で外に斜行したため、その煽りを食ってしまった。追撃態勢に入ったところでの不利は痛かった。
2番人気ドゥラエレーデは7着。前走から+10kgの524kgは最高体重タイ。大型馬のわりに馬体重の増減が激しく、ふた桁増での好走がない。反面、14kg絞った23年チャンピオンズカップなど、馬体を絞った際に激走する傾向があるので、今後も馬体重はしっかり確認しよう。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。
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