【CBC賞回顧】インビンシブルパパが芝転向2戦目で重賞初制覇 今後も“徹底先行”で活躍期待
勝木淳

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中京と中山の違い
サマースプリントシリーズ第4戦・CBC賞はインビンシブルパパが逃げ切って重賞初制覇。2着ジューンブレア、3着シュトラウスで決着した。
国内スプリントGⅠの舞台は中京芝1200mと中山芝1200m。このふたつを連勝するのは非常に難しい。なぜなら同じ急坂の1200mでも問われる適性が違うからだ。
2コーナーから一気に駆け下りる中山は前半が速く、後半でいかに失速しないかが勝負をわける。一方で中京芝1200mは3コーナーまでの距離が短く、コーナー区間でようやく下りに転じる構造のため、前半は中山ほど速くならない。前後半を同じスピードで駆け抜ける持続力と末脚が試される舞台だ。
旧コースの高松宮記念は直線が平坦で短いことも手伝い、超ハイペースを頻発したが、現在の高松宮記念は短距離でもバランス感覚がないと乗りきれない。速くなりにくいコースである。
過去2年のCBC賞を見ても、前後半600mは2023年33.7-33.5、24年33.6-33.9とほぼイーブン。短距離だからハイペースというのは固定観念にすぎず、そこまで速くならない構造の1200m戦は京都や阪神、札幌も同じ。初角までの距離がペースを決する。
父系の器
今年のCBC賞もまた、前後半600m34.0-33.4。スプリント戦としてはスローに近い。インビンシブルパパは極めて楽なペースに感じたはずだ。前走函館スプリントステークスは前後半32.5-34.1のハイペースであり、2走前の京葉Sもダートだが34.7-36.4。中山の短距離戦は芝もダートも速い。
インビンシブルパパは近2走でハイペースを逃げていただけに、単騎で34.0は苦しくなかった。やはり外枠であってもきっちり主張し、カルチャーデイを退け、ハナをとったことが最大の勝因だろう。
3コーナーまで距離がない分、外枠からハナに立つには相当なダッシュ力が必要だが、ここをすんなり進められたのは、鞍上の好判断とインビンシブルパパの経験の賜物でもある。それにしても芝転向後2戦で重賞タイトルをつかんだのは、器の大きさを感じる。
父シャラーはヨーロッパ短距離GⅠ・2勝のスプリントチャンピオン。その父インヴィンシブルスピリットはキングマンの父として知られ、ほかにもフランスダービー馬ローマンを送った。仕上がりが早く、短距離からマイル、中距離と幅広い距離に対応するなど万能の血だ。
父系は短距離血統だが、母ラファがフランスオークス馬であることも大きい。インヴィンシブルスピリットの懐の深さとシャラーのスピード血脈が、インビンシブルパパの芝ダート兼用の逃げにみえる。
当然ハイペース耐性も保持しており、たとえ相手が強くなってもおもしろい。重賞ウイナーになり、マークされる立場になるかもしれないが、追いかければ潰されると思わせれば、ダッシュ力は抜けており、再度マイペースもありそうだ。徹底先行を貫いてほしい。
シュトラウスの可能性
2着ジューンブレアは上手くインの4番手に潜り込めたものの、最初のポジション争いでわずかに引く場面があったため、馬自身が少しエキサイトしたようだ。その乱れが仕掛けのタイミングを逃すことにつながってしまった。外目を気分よく追走する形がよさそう。
こちらも函館スプリントSでハイペース追走を経験しており、今回は余裕があった。やや行きたがったのは前走の影響もあったのではないか。
3着シュトラウスは折り合い難に悩まされる現状を打破すべく、思い切ってスプリント戦に挑戦した。結果としてこれが好走につながったが、それでも道中はついていけないというより、少し行きたがるのを抑えるぐらいにみえた。もはやペースの問題ではなく、シュトラウスの本質のようだ。
なかなか根が深いものの、短い距離で終いまで脚を残せたのは収穫だった。体力だけならトップレベルであり、コントロールを楽にするためなら短距離は好都合。スプリント戦での大成を目指すのもよさそうだ。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。
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