【関屋記念】様変わりした夏のマイル重賞 フォーチュンタイムやイミグラントソング、シヴァースの逆襲期待

勝木淳

15年以降の新潟芝1600mデータから見る関屋記念,ⒸSPAIA

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条件変更で傾向に変化はあるか

夏の新潟開幕週メインは関屋記念。どうもこの文字列には違和感しかない。新潟の夏も今年から日程が大きく入れ替わり、関屋記念からスタートする。

さらに別定重量からハンデキャップに変更され、かつての堅い決着とは傾向も変わる可能性が高い。時期と施行条件が変わってしまっては、過去10年データは使いたくても使えない。そこで、ここでは2015年以降、新潟芝1600m古馬オープン以上に計20レースのデータを用いてコース傾向を探っていき、好走候補を絞っていく。


人気別成績,ⒸSPAIA


関屋記念が堅い重賞だったように、1番人気は【8-3-4-5】勝率40.0%、複勝率75.0%と強い。馬券圏外はわずか5頭しかおらず、実力上位馬がその力をいかんなく発揮するコースといえる。

それもそのはずで、新潟外回り芝1600mは極めてシンプルなコースレイアウトであり、正面直線は658.7mと長く、さらに向正面もマイル戦では600m近くある。直線部がコース全体の75%以上を占め、コーナー区間はほぼない。後半の直線に注目しがちだが、前半の長さが展開に与える影響は大きい。

先行勢が長く競り合うことになれば速い流れになるが、そういった展開は少なく、たいていは直線が長いため、隊列が決まるのが早く、それが乱れることがない。そこに陽炎がみえるほどの長い正面直線とくれば、スローの瞬発力勝負は決定的。基本は後半の速力勝負になるため、実力上位馬は崩れない。

とはいえ2番人気が【3-2-1-14】勝率15.0%、複勝率30.0%と1番人気ほどアテにならず、2番人気から4番人気はほぼ横並び。4番人気以内での決着が目立ち、総じて堅いコースではあるものの、10番人気以下【3-2-3-116】勝率2.4%、複勝率6.5%と波乱がないこともない。

この間の5~9番人気が冴えず、堅いか荒れるか極端な面も。関屋記念もハンデ戦に生まれ変わることで、その極端な傾向が一気に荒れる方向に振れる可能性はある。


所属別成績,ⒸSPAIA


新潟の特徴として、東西の輸送の違いがある。美浦から新潟に入るルートと栗東から新潟を比べると、なんなら栗東の利便性がいいとされる。新潟は福島よりもさらに関西馬が走る傾向があり、夏の新潟を攻略する上では関西馬は欠かせない。

といいつつ、実は芝外回り1600mのオープン以上に限ると、美浦【11-3-8-116】勝率8.0%、複勝率15.9%に対して栗東【9-17-12-127】勝率5.5%、複勝率23.0%で関東馬が優勢。ここは“関西馬が強い”という全体的なデータに惑わされないようにしたい。

関西馬は2、3着が多く勝ちきれない。脚力で粘る関西馬を瞬発力で交わす関東馬といったイメージか。脚力を鍛える関西と、ウッド終い重点で加速力を養う関東の調教パターンの違いからくる管理馬の個性も影響しているだろう。


一変する先行馬とは

今年の出走予定馬をみると、関東馬はボンドガール、イミグラントソング、ダイシンヤマトらが中心を担い、関西馬はフォーチュンタイム、オフトレイル、シヴァースあたりか。抜けた存在はなく、このメンバーでハンデ戦となると、相当難易度は高そうだ。


前走距離別成績,ⒸSPAIA


好走条件を前走距離に絞る。前走同距離は【11-14-13-140】勝率6.2%、複勝率21.3%となっており、一貫してマイル路線を歩むパターンはここに当てはまるため、当然分母が大きく数字がでにくい。それを差し引くと、数字的にはまずまずと言える。

一方、目立つのは前走1600m未満のいわゆる距離延長【5-1-3-44】勝率9.4%、複勝率17.0%だ。コース全体が平坦でスローが多い新潟では、距離経験をいかせるスタミナを問う流れになりにくく、短い距離から転戦してくる馬たちのスピードがいきる。


前走1600m未満・位置取り別成績,ⒸSPAIA


延長組の前走位置取りをみると、先行が【3-1-1-9】勝率21.4%、複勝率35.7%と圧倒的。上記の通りスピードをいかしてマイルを乗り切るパターンが目立つ。

阪急杯5着フォーチュンタイムは約半年ぶりの実戦だが、データに一致する。阪急杯はアサカラキングがペースを握り、2ハロン目からゴールまですべて11秒台でまとめたスピード志向の競馬だった。2着に粘ったアサカラキング以外は差し馬たちが上位に入っており、好位から見せ場を作ったフォーチュンタイムは評価できる。


前走1600m・位置取り別成績,ⒸSPAIA


では、主要パターンである同距離の位置取りはどうか。こちらは逃げが【3-2-1-11】勝率17.6%、複勝率35.3%と目立ち、次いで先行【4-4-4-31】勝率9.3%、複勝率27.9%となる。位置が後ろになるほど好走確率は下がっており、やはり先行力がキーワードだ。

NHKマイルカップ11着イミグラントソングや、しらさぎステークス10着シヴァースはイメージに近い。どちらも差し馬が上位を占めたレースであり、先行優位の新潟での変わり身に期待できる。


15年以降の新潟芝1600mデータから見る関屋記念,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。

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