クロワデュノール全弟への期待、アドマイヤマーズ産駒の注目株も 血統で見抜く新馬の力

今週デビュー予定の注目新馬
出走する全馬が初出走となる「新馬戦」は、他のレースと予想のアプローチが全く異なる。調教で能力を見定める方法もあるが、実戦で同様の走りができるかは未知数だ。
従って、血統面からのアプローチが他のレースに比べて格段に有効となる。そこで今回は血統のなかでも“牝系”にフォーカスして、今週デビュー予定の2歳新馬のなかからピックアップした2頭を解説。デビュー戦の展望はもちろんのこと、血統から想定できる潜在能力や将来性についても深掘りしてみたい。
6/21(土)東京5R・芝1800m チャリングクロス

5代母Windmill Girlを根幹として広がるファミリーの一頭。Windmill Girl自身もリブルスデールS(GⅡ・芝12F)勝ちや英オークス2着がある実績馬で、産駒にはBlakeneyとMorstonという2頭の英ダービー馬がいる。ファミリーの牝祖としては十分なポテンシャルを持つ優秀な繁殖牝馬で、ヨーロッパのクラシック牝系といっても過言ではなく、スタミナと持続力は抜群だ。
母ライジングクロスは英国産馬で、現役時は英オークス2着や愛オークス3着の実績があり、繁殖としても今年のダービー馬クロワデュノールを出した。秀でたスタミナや持続性能を誇る反面、スピード性能はそこまで高くないのが以前までの産駒の特徴だったが、キタサンブラックを父に迎えたことでその弱点を上手く補完した。
本馬も父キタサンブラックで、クロワデュノールの全弟にあたる。もともとのファミリーの特徴に加え、キタサンブラックらしい粘り強さを活かしたいタイプ。前々で競馬ができれば新馬勝ちもあるだろう。調教よりも負荷がかかる実戦向きだ。
<血統から想定できる潜在能力>
・馬場適性:芝
・距離適性:1800~2600m/ベスト2400m
・能力:スピードB/瞬発力A/パワーS/持久力S
・同タイプ:クロワデュノール
・特徴:先行したら粘り強い。早期から活躍できるが古馬になって更に強くなる
※持久力=スピードの持続力
6/22(日)東京5R・芝1600m ウィングブルー

祖母Pearly Shellsが実績馬で、ヴェルメイユ賞(GⅠ・芝12F)を含む重賞を3つ勝っている。ファミリーには芝での活躍馬が多く、芝適性がありスタミナ豊富なことが特徴の一族だ。
また、ウィングブルーはフランスの二冠馬で年度代表馬にもなったSt Mark's Basilicaと4代母が共通で同じファミリー。世界で勢いがある馬がいることは。牝系の活力という点で高く評価できる。
1600mでデビュー予定であることからもわかる通り、アドマイヤマーズを父に迎えた本馬の距離適性はファミリーのイメージよりは短くなるだろう。
豊富なスタミナとスパッと切れるような瞬発力はもともと牝系も持ち合わせていたが、トップスピードがそこまで高くなかったため本馬の兄妹から活躍馬は出ていない。しかし、優れたスピード性能をもつ馬が多いダイワメジャー産駒の中でも抜けていたアドマイヤマーズが父になったことで、弱点をカバーしていて仕上がりも早い。新馬戦向きの血統だ。
<血統から想定できる潜在能力>
・馬場適性:芝
・距離適性:1600~2000m/ベスト1600m
・能力:スピードA/瞬発力S/パワーA/持久力S
・同タイプ:シゲルピンクダイヤ
・特徴:高い持続性能と瞬発力があり東京向き。タフな馬場も歓迎
※持久力=スピードの持続力
《ライタープロフィール》
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか「競馬王」など商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。
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