【しらさぎS】チェルヴィニア、レーベンスティールに不吉なデータあり 注目は前走マイル勝ちのダイシンヤマトとシヴァース
勝木淳

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米子から姫路へ
昨年までサマーマイルシリーズ開幕を告げる米子Sは、今年からしらさぎSに名称を改められ、重賞に格上げされた。しらさぎとは、国宝姫路城の別称でもある。現在の白鷺城は関ケ原の戦いのあと、入城した池田輝政によって大改築されたものとなる。
その後、城主は池田氏から本多氏にかわり、姫路城を出た池田氏は鳥取城へ移っている。その後、鳥取城の城下町も整備され、山陰地方の中心となった。米子SからしらさぎSへの名称変更は歴史の逆再生でもある。
データは重賞格上げとなれば、米子Sのものは使用せず、2020年以降、阪神芝1600m、古馬オープン・重賞30レースを使い、コースデータを紹介していく。
データ集計期間で米子Sは5レース行われ(2024年は京都)、1~3着の人気は2、9、8番人気、2、1、4番人気、1、6、8番人気、10、7、6番人気、4、3、10番人気だった。時期的なものか人気馬同士ですんなりという競馬がなく、波乱傾向だった。
だが、阪神芝1600mというコース自体は、外回りを使用するシンプルなワンターンであり、波乱のイメージはさほどない。1番人気【9-5-3-13】勝率30.0%、複勝率56.7%、2番人気【6-3-6-15】勝率20.0%、複勝率50.0%と半数は1、2番人気が勝利をあげた。
3番人気が【2-4-1-23】勝率6.7%、複勝率23.3%とトーンダウンするため、やはりすんなり上位人気独占はないが、1、2番人気は手ごわい。
ツボがあるとすれば、9番人気【4-2-4-20】勝率13.3%、複勝率33.3%あたり。穴馬として狙いがちな7、8番人気がさほど好走できておらず、伏兵の狙いどころが難しい。
上記で紹介したように比較的シンプルなコースレイアウトながら、枠番には特徴が出ている。2枠【5-3-4-33】勝率11.1%、複勝率26.7%、7枠【9-5-3-43】勝率15.0%、複勝率28.3%と内も外も二番目がいい。
特に外は8枠が【2-2-3-60】勝率3.0%、複勝率10.4%と結果が出ておらず注意が必要だ。最後の坂を意識し、仕掛けがゆっくりになりがちなコースであり、内枠は馬群に潜り、ロスを抑えるメリットがあり、外は進路をつくりやすいメリットがある。
とはいえ、外を追走して壁がつくれないケースや、外を回りすぎて届かずといったデメリットもあり、7枠はそのバランスが絶妙であるともとれる。面白い傾向なので、頭に入れておいてほしい。
チェルヴィニア、登場
新設重賞を記念してというわけではないが、今年は昨年の二冠牝馬チェルヴィニアという大物が出走を予定している。さらに重賞3勝馬レーベンスティールもおり、かなり活気にあふれるサマーマイルシリーズ開幕戦になりそうだ。
前走距離傾向をみると、同距離が【17-17-10-158】勝率8.4%、複勝率21.8%と一歩リードだが、距離短縮が【8-9-14-82】勝率7.1%、複勝率は27.4%と高く、馬券圏内なら短縮組もおもしろい。
急坂が待ち構えるコースでは、長い距離の経験が最後にモノをいう。さらにその急坂を意識し、序盤ゆっくり入る傾向も短縮組に味方する。
短縮組は前走より前半が速くなるため、急かされるデメリットがある。ところが、比較的遅く入ってくれれば、レースの入りがスムーズになり、デメリットが消える場合がある。距離変化は後半より前半に与える影響が大きい。
チェルヴィニアが該当することもあり、まずは距離短縮組に注目する。素直に前走1着【2-2-2-6】勝率16.7%、複勝率50.0%もいいが、総じて掲示板以内であれば、着順に左右されない。
ただし、チェルヴィニアが当てはまる6~9着は【1-1-1-32】勝率2.9%、複勝率8.6%と阪神マイルでは必ずしも相性はよくない。
ただ、チェルヴィニアの場合、そもそもマイル戦出走が桜花賞以来。アルテミスS勝ちがあるとはいえ、距離への対応はカギを握る。能力の違いで押し切るシーンもありそうだが、さてどう出るか。
ほかにもレーベンスティール、デビットバローズ、マテンロウオリオンなど不吉なデータに合致する馬は多い。
前走マイルの平行移動の場合、前走1着が【6-1-2-17】勝率23.1%、複勝率34.6%と強力。下級条件勝ちも【4-0-1-9】勝率28.6%、複勝率35.7%なので、ダイシンヤマト、シヴァースも割って入る。
ここまでは短縮と変わらないが、同距離の場合、6~9着【5-7-3-35】勝率10.0%、複勝率30.0%、10着以下【3-3-3-53】勝率4.8%、複勝率14.5%と大きな着順からの巻き返しがある。タシットが人気を落としているようなら警戒が必要だ。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。
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