【日本ダービー】今年は馬場悪化で外枠もチャンスあり、本命候補はサトノシャイニング 穴馬はエリキングとホウオウアートマン

山崎エリカ

2025年日本ダービーのPP指数,ⒸSPAIA

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Cコース替わりで先週より約3m内側が有利に

日本ダービーは東京開催12日目、Cコース替わり(先週よりも3m外側に仮柵を設置)で行われる。先週のオークスは外差し馬場で15番枠のカムニャックの外差しが決まったが、今回は最後の直線で同馬が通ったところの約3m内側が伸びることが予想される。

2019年オークスも今年のような外差し馬場で、勝ち馬は13番枠のラヴズオンリーユー。翌週のダービーで優勝したのは最後の直線で内目を通った1番枠のロジャーバローズだった。

しかし、もっとも伸びるところを通っていたのは、前週のラヴズオンリーユーよりも約3m内目を走っていた7番枠のダノンキングリーだった。

雨の影響で馬場が悪化し切るとその限りではないが、今年は例年のように内有利とはならず、外枠にもチャンスがある日本ダービーとなりそうだ。

能力値1~5位の紹介

2025年日本ダービーのPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 クロワデュノール】
昨年のホープフルSを勝利し、2歳中距離王となった馬。そのホープフルSは6番枠からトップスタートを決めると、外に誘導しながら好位に控え、外に出し切って中団やや前方を追走した。

道中はかなりのスローでやや掛かっていたが、向正面のファウストラーゼンが捲ったところで追いかけるように外から押し上げて2列目の外で3角に入った。

3~4角では逃げ馬がファウストラーゼンに抵抗する形でペースが上がり、前のスペースが広がった。そこでじわっと進出して4角で軽く押していくと、3番手で直線へ。直線序盤ですっと伸びて先頭列に上がり、ラスト1Fで抜け出して2馬身差で完勝した。

当時は標準馬場で前後半5F61秒4-59秒1のスローペース。ゲートをポンと飛び出したことで控えるのに苦労する場面もあったが、捲ったファウストラーゼンの後を追う形でペースが上がる3角までに好位を取れたのが好走要因のひとつだ。

またここでは3走前の東京スポーツ杯2歳Sで馬体重24Kg増と太目だった馬体が絞れたことも指数の上昇に繋がっている。

前走の皐月賞はミュージアムマイルと1馬身半差の2着。前走も向上面でファウストラーゼンが捲ってくると外に誘導し、同馬を追いかけたがこの時はホープフルSと違って緩みない流れ。

前半3F34秒5とかなり速い流れを好位の外4番手と位置を取りに行ったことや、捲り発生時に外からぶつけられて一旦下がり、そこから3~4角で4頭分外から押し上げるロスが堪えた。

前走はホープフルSから指数を下げたが、負けて強しの内容。また前走はホープフルSで馬体を絞り切ったことで、調整が難しい面もあったはず。今回は巻き返しが期待できる一戦で対抗評価だ。

【能力値2位 ミュージアムマイル】
前走の皐月賞はクロワデュノールを2着に下して勝利。レースは11番枠からやや出遅れたが、押して挽回してクロワデュノールをマークしながら中団中目を確保。道中は同馬にやや遅れを取り、ファウストラーゼンの捲りをやり過ごして3角に入った。

3~4角でクロワデュノールが外から動いたのをワンテンポ待ち中団中目を進み、ペースが上がった3角でも仕掛けをワンテンポ待ち、4角で外に誘導して中団列で直線へ。

直線序盤でしぶとく伸びて3列目付近に上がり、ラスト1Fで先頭のクロワデュノールを捉えて1馬身半差で勝利した。

前走はコンクリート馬場で前半3F34秒5とかなり速かったが、さらに向上面でファウストラーゼンが動いてペースアップする後方有利の展開。向上面で同馬を追いかけたクロワデュノールやサトノシャイニングに対して、本馬はやり過ごして3~4角でもなるべくロスなく立ち回ったことで展開に恵まれた。

皐月賞は本命だったが、想定どおりにJ.モレイラ騎手が完璧に乗り、自己最高指数を記録。本馬は4走前の朝日杯FSでも出遅れを道中で挽回しながらも、最後までしぶとかったように長くいい脚が使える馬。ラスト5Fからペースアップする前走のような展開は向いていた。

今回は前走で展開に恵まれて自己最高指数を記録した後の一戦で、ここで上昇しきれない可能性が高い。しかし、2019年のダノンキングリーのように、7番枠から最後の直線でもっとも伸びるところを走れる優位性がある。それを考えると押さえてはおきたい。

【能力値3位 サトノシャイニング】
きさらぎ賞の勝ち馬。レースは大外10番枠からまずまずのスタートを切ったが、内の3頭も速く、コントロールしながら徐々に位置を下げて中団の外を追走。道中でも前が飛ばしていったため、コントロールしながら中団やや後方まで下げて3角に入った。

3角付近で前がペースダウンしても仕掛けを待って後方外から直線へ。直線序盤で追われて先頭列まで上がり、ラスト1Fでしぶとく抜け出して3馬身差で完勝した。

当時はタフな馬場で前後半4F46秒1-48秒3のかなりのハイペース。前崩れの展開に恵まれる形での勝利だったが、ここで記録した指数はホープフルS出走なら2着ジョバンニに先着できるもの。

前走の皐月賞は5着。レースは中団外から向正面で捲ったファウストラーゼンを追いかけて進出したが、3角手前で内から外に出したクロワデュノールに外に弾かれて速度が落ち、3~4角で同馬の後ろ4頭分外から必死に押して押し上げたため、ラスト1Fで苦しくなった。

前走はタフな馬場の2走前で好走した後の疲れ残りの一戦だったことや、内有利な馬場の16番枠で本馬を無印とした。しかし、3角手前の接触やレコード決着となり苦しい競馬になったが、予想していたよりも崩れなかったのは立派だ。

今回も大外18番枠。例年の内有利の日本ダービーなら乗り難しい枠だが、馬場の内が傷んでいる今年なら外枠でもチャンスがありそうだ。本馬はタフな馬場の2走前で自己最高指数を記録しているように、上がりの掛かる競馬がベスト。高速馬場だと勝ち切れない可能性もあるが、皐月賞の上位馬で当時もっとも能力を出し切れていないのは本馬。ここは本命候補としたい。

【能力値4位 マスカレードボール】
前走の皐月賞で3着。レースは6番枠からやや出遅れ、進路が狭くなり押して中団馬群の内目に突っ込んでいく形。1~2角でペースが落ちたが、1角で内のエリキングにぶつけられて位置が下がり、向上面ではファウストラーゼンの捲りの影響でさらに位置が下がり後方馬群の中目で3角に入った。

3~4角でも後方馬群の中目でジョバンニをマークし、4角で同馬が外を選択したことでそのスペースを上手く詰めて後方で直線へ。直線序盤で外に誘導し、しぶとく伸びて中団まで上がり、ラスト1Fで突っ込んできたが2着クロワデュノールとはクビ差までだった。

前走はコンクリート馬場で前半3F34秒5とかなり速く、さらに向上面でファウストラーゼンが動いてペースアップする後方有利の展開だった。前走時は鞍上の意に反して好位が取れなかったが、それによって展開に恵まれる形となった。

本馬もミュージアムマイル同様に長くいい脚を使えるタイプ。前走時は道中がスムーズではなかったが、展開に恵まれたことで自己最高指数を記録。今回はミュージアムマイル同様に上昇しきれない可能性が高い。

また本馬はゲートに不安もあり、17番枠から出遅れると外々を回るロスが生じることになりかねない。しかし、共同通信杯時のようにスタートを決めた場合や、時計の掛かる馬場になったときは上位争いに加わる可能性はある。

【能力値5位 ファンダム】
デビューから3戦3勝で前走の毎日杯を勝利した馬。前走は7番枠から好スタートを切り、すっと位置を下げて折り合いに専念。道中で後方2番手まで下げ、最内で3角に入った。

3~4角でも後方最内で我慢しながらキングノジョーをマークし、4角出口で仕掛けて外に誘導。序盤でリラエンブレムの後ろから外に出して中団まで上がり、ラスト1Fですっと伸びて前を強襲し、ガルダイアを捉えて1馬身差で完勝した。

当時は高速馬場で前後半4F47秒9-45秒4のかなりのスローペース。京成杯で積極的に前2頭に競り掛け、オーバーペースにしたガルダイアの存在を怖がり、同型馬が控えたことで明確に前有利の展開となった。

並みの馬では4角後方付近では届かなかったが、上がり3Fタイム2位の3着馬ネブラディスクを0.6秒も上回る上がり3F最速の32秒5で勝利した。

2走前のジュニアCで2着モンドデラモーレのその後の活躍(ファルコンS、NHKマイルCともに0秒1差)からもここでも見劣りしない。

しかし、本馬はコンクリート馬場だった秋の中山開幕週の芝1600mデビュー馬でスピードと瞬発力に優れた馬。前走から3Fの距離延長は不安もある。

穴馬はエリキングとホウオウアートマン

【エリキング】
デビュー2~3戦目の野路菊S、京都2歳Sでは後のホープフルS2着、皐月賞4着のジョバンニを2着に下して連勝した。

2走前の京都2歳Sは大外8番枠から五分のスタートを切り、じわっと進出して好位の外まで上がったが、最終的には中団の外を追走。3角の上りで外から徐々に押し上げ、2列目の外で3角に入った。

3~4角も2列目外で進めていたが、徐々に手応えが怪しくなり、4角では激しく追われたが、動き切れずに3列目に下がって直線へ。

しかし、直線序盤で激しく追われると盛り返して2列目に上がり、ラスト1Fで食らいつくジョバンニを一気に突き放して1馬身1/4差で完勝した。

2走前は指数という観点ではこれまでで一番良かったが、ペースアップした4角では外からの追走にかなり苦労していた。

レース後、鞍上の川田将雅騎手は「4角でなかなか動きが出てこなかったので、無理をして動かすことを教えながら行った」とコメント。また、今週の共同会見では「中山は良い舞台というわけではないと思う」ともコメントしている。

要約すると、まだまだ完成途上でコーナーでは自分から動くことができないため、中山のような小回りで皐月賞のように流れが速くなるレースは向かないということだろう。

つまり、直線の長い東京芝2400mに変わるのは加点材料ということ。前走の皐月賞は骨折による休養明けの一戦だったこともあり、大事に乗られていたところがあったが、今回は叩かれての前進が見込める。

1週前の坂路でもよく動いていただけに、3番枠と内目の枠を引いた点は不安だが今回での変わり身に期待したい。

【ホウオウアートマン】
2走前の青葉賞から着用したブリンカーが効果てきめんで上昇一途。前走の3歳1勝クラスを楽勝し、抽選突破でダービー出走権を手にした。

前走は6番枠から五分のスタートを切り、じわっと先行して4番手を追走。向上面で徐々に進出して外3番手で3角に入った。3~4角では仕掛けを待ち、直線序盤で馬場の良い外に誘導。ラスト2Fで追われるとしぶとく伸びて先頭に立ち、ラスト1Fで抜け出して3馬身半差で完勝した。

前走は朝からの雨の影響で後半になるにつれて時計が掛かり、9R以降は「稍重」発表でややタフな馬場。6Rの当レースも標準以上に時計が掛かっており、レースの上がり3Fは35秒2。字面のペース以上に前に行った馬には苦しい展開だった。

今回は逃げ馬不在。本馬の鞍上は田辺裕信騎手だけに、他馬がハナに行かないようであれば、ハナを主張する可能性もあるとみている。

また日本ダービー当日が時計の掛かる馬場であればあるほど、前走で時計の掛かる馬場や苦しい展開を経験している馬に優位性が出る。今回で前に行ってスタミナを生かせば、一発あっても不思議ない。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)クロワデュノールの前走指数「-16」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.6秒速い
●能力値 =(前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

《ライタープロフィール》
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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