【ヴィクトリアマイル】ハイレベルの中距離路線で3連勝中シランケドが本命 対抗はアスコリピチェーノ

山崎エリカ

2025年ヴィクトリアマイルのPP指数,ⒸSPAIA

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後方からでは届きにくいレース

過去10年の勝ち馬は逃げ~中団までで7勝。差しは3勝しているが、追込の3着以内はゼロ。2着は逃げ~中団までが6回、3着は逃げ~中団までが9回だった。差し馬の2勝は2016年のストレイトガール(18頭立ての3角11番手)と17年のアドマイヤリード(17頭立ての3角12番手)で、17年は雨の影響で外差し有利の馬場だった。

日曜は本降りの土曜から馬場がどこまで回復するかにもよるが、今週からBコ―スに替わる影響もあり、後方からでは届きにくく、ある程度は前目にいないと厳しいレースとなる見込みだ。


能力値1~5位の紹介

2025年ヴィクトリアマイルのPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 クイーンズウォーク】
古馬牡馬と初対戦となった前走の金鯱賞を勝利した。前走では6番枠から五分のスタートを切り、楽に先行して2列目の外で進めていたが、デシエルトが飛ばしていったので、3番手を追走。道中は2番手のホウオウビスケッツをマークする形で進めた。

3角でひとつ外の3番手で仕掛けを待って、4角出口で馬場の良い外に誘導して直線へ。序盤で追われてややもたついていたが、じわじわ差を詰めて先頭とは3馬身差ほど。ラスト1Fでグンと伸びて内のホウオウビスケッツをハナ差で捉えて勝利した。

前走はかなりタフな馬場で前後半5F58秒2-63秒1の超ハイペース。前へ行った馬にはかなり不利な展開だったが、後続を大きく離して逃げたデシエルト以外は実質差し競馬だった。本馬は展開に恵まれる形で自己最高指数を記録しての勝利だった。

稍重馬場で時計が掛かった昨秋のローズSを勝利しているように、時計の掛かる中距離がベスト。超高速馬場のマイル戦だと、後方から進めたクイーンC時のように、位置取りに苦労しそうだ。クイーンCでは前がバテたことで差し切ったが、古馬一線級が相手だと、前もそうそうバテないだろう。

また金鯱賞組は大阪杯で全滅したように、タフな馬場&ハイペースでの激走は次走でダメージを残しやすいもの。その金鯱賞で自己最高指数を記録した後の一戦となると、成長期の4歳馬でも疲れが出る可能性がある。

【能力値2位 アドマイヤマツリ】
上昇一途の4歳馬で前走の福島牝馬Sでは重賞初出走ながら勝利した。前走は1番枠からまずまずのスタートを切り、軽く促して好位の最内を確保。そこからやや掛かってはいたが、前にスペースを作ってコントロールしながら進め、前3頭からやや離れた好位の最内で3角に入った。

3角でもまだ仕掛けを待って、前のスペースを詰めていったが、4角で2列目の最内にいたアマイがタイミングよく外を選択。これによりほぼ最短距離を通ることができ、4角出口で前2頭の外に誘導して2列目の3番手で直線へ。直線序盤で追われて2番手争いに加わり、ラスト1Fで突き抜けて2馬身差で完勝した。

前走は高速馬場で前後半4F47秒2-47秒0の平均ペース。脚質による大きな有利不利はないが、内有利の馬場で4角まで最短距離を通り、4角出口でアマイが動いた後ろをついていき、そのまま一気に加速と完璧な騎乗だった。

本馬は新馬戦こそ7着に敗れているが、以降は連対率100%と安定感も勢いもある。ただ、前走があまりに完璧な騎乗だっただけに、ここでは前走以上を期待しにくい。

【能力値3位 アルジーヌ】
3走前に牡馬混合オープンのカシオペアSを勝利。ここでは8番枠から五分のスタートを切り、コントロールしながら先行策。ほぼ馬なりで好位の中目から追走した。道中では緩みなく流れたが、好位を維持したまま外に誘導して3角に入った。

しかし、3~4角では前が雁行状態となったので、再び中目に誘導して直線へ。直線序盤で追われると一気に抜け出して2馬身のリードを奪った。ラスト1Fでトゥデイイズザデイをはじめとする外差し勢に詰め寄られたが、3/4馬身差で振り切った。

この日は馬場の内が荒れており、本馬は上手く内を避けてレースを進めていた。標準馬場で前後半4F46秒1-46秒7の平均ペース。緩みなく流れて後方有利な展開を好位から早めに抜け出して勝利した内容は高く評価できる。

本馬は前走、2走前で芝1600mを使われ、2走前はターコイズSを勝利。前走は阪神牝馬Sで2着とマイルもしっかり対応している。ただ、極端なスローペースで上がり3F33秒8の後半勝負となった京都芝1600mの2勝クラス時に4着と敗れたことがあるように、上がりの速い決着は得意ではない。

前走の阪神牝馬Sもかなりのスローペースで上がりの速い決着だったが、1番枠からスタートして3角手前で最内から好位まで挽回できたこともあって、上がりの速い決着にも対応できた面がある。今回も3番枠と内目。この並びなら好位~中団の内目が取れるだろう。これなら崩れない可能性が高い。

【能力値4位タイ シランケド】
デビュー5戦目の紫苑Sでは、1勝クラスの身ながら3着に入った。その後、休養を挟んだ1勝クラスの戸畑特別では馬体重14kg増と成長した姿を見せて5馬身差で圧勝。ここではオープン通用級の指数を記録し、この時点で能力が本物、後に活躍することは必至だった。そこから成績を上げて、前走の中山牝馬Sでは初重賞制覇を達成した。

前走は11番枠からやや出遅れ、押して挽回し好位を狙ったが、好位列が雁行状態で窮屈になり、一列下げて中団の外を追走。道中は中団の外でホーエリートをマークして進め、仕掛けを我慢させた。

3~4角ではホーエリートの外から押し上げ、4角では同馬に張られて4頭分外を回るロスもあったが、直線序盤ですっと2列目に上がる。ラスト1Fで内のホーエリートとの叩き合いとなったが、アタマ差で振り切った。

このレースは標準馬場で前後半4F48秒2-47秒5の平均ペースだが、レース最速がラスト5F目の11秒4。向正面で逃げ馬がペースを引き上げたことでやや差し馬に有利な展開ではあったが、やや内有利の馬場を外々からロスを作りながらも最後までしぶとく粘った内容は高く評価できる。

本馬はエンジンが掛かってからがしぶとく、本質的には中距離向きだが、もう一枚奥がある可能性を感じさせる。今回は12番枠と外目の枠で出遅れた場合には位置取りが悪くなりそうだが、最近は出遅れ癖がだいぶ改善されている。また土曜の東京芝レースを見ると、各馬、最後の直線で内を空けており、中~外のほうが伸びていた点も好材料。中距離で3連勝中の本馬を本命に推す。

【能力値4位タイ アスコリピチェーノ】
デビューから3連勝で阪神JFを勝利した実績馬。その後、マイル路線を徹底して使われ、桜花賞、NHKマイルCで2着。昨秋の休養明け初戦、京成杯AHでは古馬を圧倒した。

京成杯AHでは10番枠からやや出遅れ、そこから押して中団の中目を追走。時計の出る馬場で道中は内に入れたいところではあったが、入れられないまま3角に入った。

3~4角の中間でペースが落ちると外から取りつき、4角で外目から押し上げて3列目で直線へ。直線序盤ですっと伸びて一気に先頭列付近まで上がり、ラスト1Fで突き抜けて1馬身1/4差で勝利した。

ここは前後半4F45秒6-45秒2の平均ペース。脚質による大きな有利不利はないが、秋の中山開幕週の超高速馬場で内有利な状況のなか、一度も内に入れることなく4角で外から押し上げて勝利した内容は高く評価できる。

今回のメンバーで実績、マイル適性は明確に上位。前走ではサウジアラビアに遠征し、1351ターフスプリントを勝利。ここも五分のスタートではあったがしっかり先行しており、マイル戦ならポジションを取っていけるはず。

今回は前走時の疲れが取れているかがカギになるが、対抗に推す。

【能力値4位タイ ボンドガール】
2走前の東京新聞杯で2着。2走前は4番枠から五分のスタートを切ったが、コントロールして中団内目を追走。道中も中団馬群の中目から折り合い重視で進めた。

3~4角でも前2頭から離れた中団中目で仕掛けを待って、直線序盤で前のゴートゥファーストの後ろからスムーズに外に誘導し、楽々と4番手に上がる。ラスト2Fでさらに前との差を詰めたがまだ4番手。ラスト1Fで先頭のメイショウチタンを捉えたが、外からウォーターリヒトに差し切られてクビ差で敗れた。

2走前は標準馬場で前後半4F46秒1-46秒5の平均ペース。脚質による大きな有利不利はないが、末脚型の本馬がいつもよりも早めに動いて押し切った内容に進化を感じさせた。

本馬はNHKマイルCこそ、最後の直線で最内から先頭を狙ったところをアスコリピチェーノに寄られて窮屈になり、安全確保のために位置を下げて流し17着と崩れたが、それ以外は全て着差0秒3以内の3着に善戦しているように、自在性があって安定感も抜群だ。

前走の阪神牝馬Sは9番人気のサフィラが2番手から抜け出して勝利しているように、超高速馬場でかなりのスローペース。前と内が有利な展開だった。本馬は10番枠からやや出遅れ、軽く促して中団の外を追走していたが、道中でやや折り合いに苦労して位置を下げたことが主な敗因。結果、3~4角で外々から押し上げる形となり、前を捉え切れなかった。

前走は展開を考えれば5着でも仕方のない内容ではあったが、同じように出遅れて中団中目を追走したラヴァンダとの末脚比べで敗れた点はやや不安。ただ今回は前走ほど高速馬場のスローペースにはならない公算が高い。能力を出し切れれば通用するだろう。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)クイーンズウォークの前走指数「-23」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.3秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値 =(前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

《ライタープロフィール》
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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