【天皇賞(春)】超長距離路線を牽引するディープインパクトとステイゴールドの血 「スタミナ豊富な配合形」ヘデントールらを評価
坂上明大

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傾向解説
芝3200mという日本競馬の最長距離GⅠ天皇賞(春)。マイラーや中距離馬の参戦が多い菊花賞よりも本質的なスタミナが求められる古馬GⅠでありながら、ハイレベルな中距離路線でも戦える地力の高さも求められる一戦です。本記事では血統面を中心に、天皇賞(春)のレース傾向を整理していきます。
まず抑えておきたいのは軽量馬の方が大型馬に比べ、距離適性が高い傾向にあるということ。これは天皇賞(春)に限らず、芝3000m以上で行われるような超長距離戦に共通します。
2010年以降に行われた芝3000m以上のレースでは牡/セン馬で馬体重459kg以下の馬の成績が非常に良く、これは重量馬の好走率が高いスプリント戦とは真逆の傾向です。
キタサンブラックのようにフレームが大きいがために馬体重が500kg以上となる馬もいますが、全体の傾向としては無駄肉の少ない軽量馬の方が超長距離戦に向く可能性が高いといえるでしょう。

<芝3000m以上 牡/セン馬の馬体重別成績(2010年以降)>
~459kg【17-17-16-139/189】
勝率9.0%/連対率18.0%/複勝率26.5%/単回収率91%/複回収率89%
460~499kg【51-55-49-635/790】
勝率6.5%/連対率13.4%/複勝率19.6%/単回収率78%/複回収率71%
500kg~【30-24-26-324/404】
勝率7.4%/連対率13.4%/複勝率19.8%/単回収率143%/複回収率78%
血統面では近年の超長距離路線を牽引するディープインパクトとステイゴールドの血が大活躍。両馬は3頭の天皇賞(春)優勝馬を輩出し、フェノーメノ(2013、14年)とフィエールマン(2019、20年)はともに連覇を果たしました。
近年は直仔が減ってしまいましたが、ディープインパクト系ではキズナ産駒のディープボンドが4年連続で馬券圏内に入り、ステイゴールド系では一昨年に6番人気シルヴァーソニックが3着と好走。母父に入る形でも活躍が目立ってきており、特に両馬に似た小柄な馬は非常に優秀な成績を残しています。

<天皇賞(春) 馬体重459kg以下の牡/セン馬 血統別成績>
ディープインパクト内包馬【0-1-0-1/2】
勝率0.0%/連対率50.0%/複勝率50.0%/単回収率0%/複回収率160%
ステイゴールド内包馬【1-1-2-6/10】
勝率10.0%/連対率20.0%/複勝率40.0%/単回収率60%/複回収率202%
また、2頭が出走して2、4着のエピファネイア産駒にも要注目。同馬の産駒は菊花賞でも2着2回3着1回と存在感を強めており、長距離戦や距離延長で好成績であることから今後の芝長距離路線を牽引する種牡馬になる可能性は高いとみています。
有力馬の血統解説
・ヘデントール
母コルコバードは芝1800~2400mで5勝を挙げたステイゴールド産駒。ルーラーシップ産駒の本馬はノーザンテーストの血を4×5でクロスしており、コロンと映る馬体は血統通りといえるでしょうか。
Hyperion血脈の濃いスタミナ豊富な配合形でもあり、一見すると緩さが目立つような柔軟な馬体もステイヤーとしての資質を表すモノ。折り合い面にも不安がなく、今後の超長距離路線を牽引する一頭であることは間違いないでしょう。
・サンライズアース
名門Ballade牝系に属し、半兄にセラフィックコール(2023年みやこS、2024、25年ダイオライト記念)、半妹にテリオスララ(2024年阪神JF3着)がいる良血。レイデオロ産駒の本馬はNureyevの5×3を持つ機動力型の中長距離馬で、芝なら2200m以上の内回りコースがベストではないでしょうか。
また、500kgを優に超す馬体と立ち繋からダートの2000m前後での走りも見てみたいところ。素質はホンモノですが、適性面については他の人気馬に少々劣るでしょうか。
・ジャスティンパレス
母パレスルーマーはアメリカで2013年ベルモントS勝ち馬パレスマリスを出し、日本でも本馬の他に2022年阪神大賞典2着馬アイアンバローズなどを出すスタミナ豊富な繁殖牝馬です。
父ディープインパクトは産駒が菊花賞5勝、天皇賞(春)4勝を挙げる、近年の超長距離路線を牽引する大種牡馬であり、自身も天皇賞(春)を当時のレコードタイムで圧勝した歴史的名馬。470キロ前後の馬体重からも超長距離適性の高さが窺え、2年ぶりの天皇賞(春)で久々の勝利に期待したい古豪の一頭です。

《ライタープロフィール》
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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