【スプリングS】サンデーサイレンス産駒が最多5勝、馬券内11回も断トツ 活躍馬多く輩出の登竜門を「記録」で振り返る

緒方きしん

スプリングS、思い出の記録,ⒸSPAIA

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人気馬が強く1番人気は14勝

今週は中山競馬場でスプリングSが開催される。オルフェーヴルやナリタブライアンといった三冠馬を輩出しているだけでなく、キタサンブラックやネオユニヴァースといった後に種牡馬として活躍する馬も数多く輩出している。

過去にはシンザンやタニノムーティエ、ハイセイコーにテンポイントといった伝説の名馬たちも勝利を挙げている歴史ある一戦だ。今回はそんなスプリングSを記録で振り返る。なお、データは1986年以降のものを使用する。

スプリングSは人気馬が強いレースだ。勝ち星の多い順に見ていくと1番人気が14勝、次いで2番人気が6勝、3番人気が5勝と続く。

4~6番人気は合計9勝をあげているものの、7番人気以降は5勝のみ。特に単勝オッズ20倍以上の勝ち馬は、2019年のエメラルファイト(27.1倍)を除いて5例中4例が1990年代に集中している。

GⅠには手が届かなかったダイタクリーヴァ

なかでも特に人気を集めた馬、勝ち馬の単勝オッズを低い順にランキングにすると以下の通り。

1位 1.2倍 ナリタブライアン(1994年)
2位 1.3倍 タニノギムレット(2002年)
3位 1.4倍 アグネスゴールド(2001年)
4位 1.5倍 バブルガムフェロー(1996年)
5位 1.8倍 ダイタクリーヴァ(2000年)

5位のダイタクリーヴァは当時キャリア4戦3勝。唯一の敗戦は素質馬ロスマリヌス(2戦2勝で引退)の2着で、前走のシンザン記念でもフサイチゼノンら評判馬を相手に3馬身差で完勝するなど、世代トップの評価を得るに相応しい戦績を挙げていた。

迎えたスプリングSも後のダート王者カネツフルーヴや名ステイヤーとなるエリモブライアンなどが出走していたが、危なげない走りで通算4勝目を手にした。

ところが、1番人気に推された皐月賞でエアシャカールに敗れると、日本ダービーでは2番人気で12着と惨敗。その後はマイルCSで2着、鳴尾記念で重賞初制覇、京都金杯連覇など活躍を見せたが、GⅠ制覇には手が届かないまま引退となった。

引退後は父として、マーメイドS勝ち馬ブライティアパルス、京都ハイジャンプ勝ち馬ルールプロスパーなどを輩出した。母父としてはブライティアパルスの仔ブライティアレディがJRAで4勝を挙げている。

1.3倍タニノギムレットはダービー制覇

2位のタニノギムレットもシンザン記念の勝ち馬だった。

デビュー戦はダート1000mで2着に敗れるも、2戦目で芝に路線変更すると3連勝でシンザン記念とアーリントンCを連勝。破竹の勢いでスプリングSに乗り込んできた。

同年のスプリングSはテレグノシスやローエングリン、アグネスソニックなどスピード自慢の素質馬が揃っていたが、タニノギムレットは上がり最速タイで勝利。連勝を4に伸ばした。

しかし、こちらも皐月賞では3着に敗れてしまい、NHKマイルCに挑戦するもここではテレグノシスとアグネスソニックの逆襲に遭い、2頭に続く3着に敗れた。

それでも、そこから3週後のダービーでは連敗中にもかかわらず1番人気に推されると、2着シンボリクリスエスに1馬身差をつける勝利で見事期待に応えた。

引退後はウオッカが牝馬として64年ぶりに日本ダービーを制し、ダービー父娘制覇の偉業を達成。種牡馬としても競馬史に名を深く刻み込んでいる。

後の三冠馬ナリタブライアンは単勝1.2倍に応える完勝

ナリタブライアンはデビュー戦(2着)や函館3歳S(6着)、デイリー杯3歳S(3着)とスプリングSを迎える前に3敗を喫していた。使われてきたレースもデビューから3戦連続で芝1200m戦に出走するなど、いわゆる“クラシック戦線”においては微妙な立場であった。

ところが、京都3歳Sで後続に0秒5差をつけて快勝し、つづく朝日杯3歳Sは1番人気で勝利。共同通信杯4歳Sではファンから圧倒的な支持を集め、単勝1.2倍で勝利を挙げている。

スプリングSはその連勝街道まっただ中の一戦。2着フジノマッケンオーは同年のマイルCSでノースフライト、サクラバクシンオーに続く3着に食い込む実力馬だったが、結果は3馬身半差をつける完勝だった。

ナリタブライアンの快進撃はその後も続き、三冠プラス有馬記念制覇の快挙で年度代表馬に輝いた。1997年には顕彰馬に選出されるなど、時代を代表する名馬として今なお語り継がれている。

2004年はサンデーサイレンス産駒が馬券内独占

5位のダイタクリーヴァはフジキセキ産駒で、4位バブルガムフェローと3位アグネスゴールドはサンデーサイレンス産駒。いずれも“サンデー系”である。一方、2位タニノギムレットと1位ナリタブライアンはどちらもブライアンズタイム産駒だ。

ブライアンズタイムは輸入種牡馬で、1995年から2006年まで10年以上に渡り種牡馬リーディングで3位以内をキープするなど一時代を築き上げた。上述2頭の他にもマヤノトップガンやシルクジャスティスといった芝の活躍馬や、タイムパラドックスにフリオーソといったダート王者も送り出している。

上述したように、サンデーサイレンス産駒が圧倒的な存在感を示しているこのレース。一方でその血を引くディープインパクトやハーツクライ、ネオユニヴァースなどの産駒はそれぞれ1勝のみと目立つ活躍がない。

サンデーサイレンス産駒が5勝をマークしているなか、それ以外は2勝を挙げている種牡馬が複数(ブライアンズタイム、フジキセキ、ステイゴールド、ロードカナロア)いるのみ。勝ち星だけでなく馬券圏内数に範囲を広げた種牡馬ランキングは以下の通り。

1位 11頭 サンデーサイレンス
2位 5頭 キングカメハメハ
3位 4頭 フジキセキ
3位 4頭 ディープインパクト
5位 3頭 ステイゴールド
5位 3頭 ロードカナロア

当然のように最多勝種牡馬サンデーサイレンスが11頭で圧倒的な首位に君臨している。特筆すべきは2004年のレースで、1番人気コスモサンビーム(父ザグレブ)が5着に沈むなか、1〜3着をサンデーサイレンス産駒が独占した。

1着ブラックタイド、2着キョウワスプレンダ、3着ダイワメジャーは2番人気、6番人気、11番人気という決着。ご存じの通り、ブラックタイドとダイワメジャーは後に種牡馬としても大活躍を収める。

ブラックタイドは産駒のキタサンブラックとその子であるイクイノックスがこれからも血を広げていくのはほぼ確実であり、ダイワメジャーも産駒のアドマイヤマーズが初年度産駒となる現3歳世代からエンブロイダリーなど活躍馬が出ている。いつの日か、ブラックタイドとダイワメジャーの孫やひ孫がスプリングSで激突することもあるだろう。

また、3位タイのディープインパクトは産駒の勝利こそ2016年マウントロブソンが唯一だが、馬券圏内に食い込んだ馬はディープブリランテにダノンプラチナ、リアルスティールと活躍馬がズラリ。なかでもリアルスティールは歴史的ダート馬フォーエバーヤングの父としてその名を轟かせている。

また、リアルスティールとダノンプラチナは2015年に出走しているが、その年の勝ち馬はキタサンブラック。いま思えば、相手が悪かったとも言えるだろう。

“ダートの名馬”といえば、2023年のドバイワールドCを制したウシュバテソーロも忘れてはならない。そのウシュバテソーロの父であるオルフェーヴルもまた、スプリングSの勝ち馬だ。

オルフェーヴルが勝利した2011年の2着馬がベルシャザールで、同馬はその後ジャパンカップダートを制した。こうしてみると、芝の活躍馬も当然多く輩出しているが、意外とダートとも縁深いレースと言えるかもしれない。

今年の上位馬たちはどのような道を歩んでいくのか。クラシック戦線はもちろん、数年先まで注目したい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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