【京都記念】傾向通り先行馬を狙いたい一戦 本命候補はセイウンハーデスとプラダリア

山崎エリカ

2025年京都記念のPP指数,ⒸSPAIA

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「2角3番手以内」が有利

京都で行われた過去10回(2012~2020年と2024年)を振り返ると、ややハイペースと言えるのは不良に近い重馬場で行われた2020年くらい。半数以上はかなりのスローペースとなっている。

例年12頭立て以下の少頭数になることが多いレースで、前半がかなり遅く、3角の上り坂でもペースダウンしにくいため、中団から後方の差し馬が位置を挽回しきれずに善戦止まりというパターンが大半だ。

これは実績馬が大阪杯やドバイ国際競走の前哨戦的な位置付けで挑んでくることや、前年秋のGⅠ戦線で活躍していた馬たちの大半が休養明けで出走してくることも影響している。

そのため、傾向も逃げ先行馬有利となり、「2角3番手以内」だった馬が8勝(うち逃げ1勝)している。今年は先行馬多数の組み合わせだが、捲れる馬は不在。ここも先行馬を中心に予想したい。


能力値1~5位の紹介

2025年京都記念のPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位タイ ヨーホーレイク】
2021年の皐月賞5着、日本ダービー7着馬。そこから7カ月の休養明けとなった5走前の日経新春杯(中京芝2200m)では、同世代の皐月賞3着、ダービー3着馬ステラヴェローチェを破り、嬉しい重賞初制覇を達成した。

その5走前は10番枠から出遅れ後、内に刺さって接触。そこから中団馬群の中目まで挽回し、折り合い重視で進める。

道中も中団中目でヤシャマルを壁にしながら進めて3角へ。3~4角では外のスペースを拾いながら、ステラヴェローチェの後ろまで上がって直線序盤で3列目付近をうかがう。

ステラヴェローチェの外に誘導して追われると、先に抜け出した同馬に迫り、ラスト1Fで競り落として3/4馬身差で勝利。3着馬には3馬身3/4差をつけ、今回のメンバーでは1位タイの指数を記録した。

その後は屈腱炎を発症して2年2カ月もの長期休養を余儀なくされたが、2走前の鳴尾記念で見事な復活を果たす。その2走前は平均ペースを好位中目から前に壁を置いて進めて勝利しているように、前半で上手く壁を作って脚を溜められるかがカギとなる。

前走の毎日王冠は4角1~5番手の馬が掲示板を独占する結果だったように、かなりのスローペース。12番枠から出遅れ、中途半端に出したため前に壁が作れず、やや折り合いを欠いてしまったのが敗因だ。

今回は1番枠。この枠なら前に壁を作れるし、ロスなく立ち回れる優位性もある。また、前走のようなレースの上がり3F33秒7という上がりの速い決着にはならないだろう。2、3着には突っ込んできそうなタイプだけに要注意だ。

【能力値1位タイ チェルヴィニア】
長期休養明けの桜花賞では13着に敗れたが、その後はオークスと秋華賞を連勝した。

秋華賞では5番枠から五分のスタートを切り、コントロールしながら中団中目を追走。道中はセキトバイーストが逃げ、離れた2番手にクリスマスパレードと前の2頭が後続を離していく展開。向正面でクイーンズウォークが上がってきたが、そこでも中団中目を維持した。

3~4角では3番手以下の鞍上の手が動いて前を追いかけたが、本馬はほぼ馬なりでその流れに乗って仕掛けを待つ。4角でようやく鞍上C.ルメール騎手の手が動くも、進路を作り切れずにワンテンポ待って直線へ。直線序盤で中目のスペースを拾って2列目まで上がり、ラスト1Fで先頭列をさばいて突き抜け、1馬身3/4差で完勝した。

超高速馬場で前後半は5F57秒1-60秒0の激流。上がりが掛かって差し追込馬に向く展開ではあったが、ラスト1Fで加速したことからもオークスに続き、中距離戦で前進した。実際、桜花賞では出遅れて追走に忙しさを見せていた。そこから大幅な距離延長となったオークスで一変したことからも、前走のジャパンCも通用の余地はあったはずだ。

しかし、前走は上位3頭に2馬身半も差を付けられる形での4着。レースはかなりのハイペースだったオークスや秋華賞とは一転、逃げ馬不在でかなりのスローペースに。ここでは道中でドゥレッツァらの捲りもあって位置を下げているものの、9番枠からやや出遅れての先行策と、前半でポジションを取りにいったことが祟ってラスト2F以降で甘さを見せた。

今回も2200mという距離は合っているが、例年の京都記念のようにペースが上がらない公算が高い。そうなると前を捉え切れないか、前走同様に勝ちに行って甘くなるかになりそう。まして今回はドバイを見据えた始動戦。先週の東京新聞杯で1番人気4着だったブレイディヴェーグ同様、太目残りの可能性もある。

【能力値3位 セイウンハーデス】
極悪馬場で逃げ馬不在だった2023年新潟大賞典の2着馬。ここは6番枠からまずまずのスタートを切り、二の脚の速さの違いでハナを主張。そのまま淡々と進め、1馬身差のリードで3角を迎える。

3~4角では手綱を引いてペースを落とし、直線序盤で軽く促されてリードは1馬身半差ほど。ラスト2Fで食らいついてきたカラテに徐々に迫られ、ラストで1Fでも踏ん張りを見せていたが3/4馬身差で敗れた。

このレースは緩みないペースで、3着馬には8馬身差をつけており、豊富なスタミナを見せつける内容だった。前に行って持久力を活かしてこそのタイプだろう。

一転してスローペースで3角からペースアップする展開だった次走の七夕賞でも、2頭分外から馬なりで進出すると最後の直線では後続を捻じ伏せ、1馬身1/4差で勝利している。長期休養明けで馬体重14kg増と太目だった前走のチャレンジCでも、緩みない流れの2列目外を追走、4角先頭から5着と見せ場があった。

1回京都開催の芝は2日目以降やや時計が掛かっている点も好ましく、極端に馬場が高速化しなければ、先行馬有利のこの舞台で本命も視野に入る。

【能力値4位 プラダリア】
昨年の京都記念で重賞3勝目を達成した馬。同レースでは3番枠からまずまずのスタートを切り、軽く促して外のアフリカンゴールドらを行かせ、好位の内目を追走。アフリカンゴールドが淡々と逃げて2番手以下をやや離していく展開を、本馬は中団中目で3角に入った。

3~4角では中団の外目からじわっと仕掛け、4角で好位3列目の外から馬場の外目に誘導して直線へ。序盤で追われてしぶとく2番手に上がると、ラスト1Fで内から伸びてきたベラジオオペラを寄せ付けず3/4馬身差で勝利した。

本馬はやや時計が掛かる馬場の芝2200m前後がベストの馬だ。タフな馬場で行われた3走前の宝塚記念(京都芝2200m)でも、7番枠から出遅れ、かなり押して出ムチも入れて2番手の外を追走。前半で無理をさせたなか、3角で一気に仕掛けて4角先頭という競馬をしながらも4着に善戦している。

宝塚記念では本命に推していたが、前半で無理をさせたうえに、3角から仕掛けたことが敗因に。本馬は総合力で勝負するタイプにもかかわらず、このレースでは前述のセイウンハーデスのような乗り方だった。3角から一気に仕掛けなければ2、3着はあったと見ている。

昨秋は夏負けが尾を引き、2023年に勝利した実績のある京都大賞典でも7着敗退。前走の香港ヴァーズは手応えが良く、調子は良かったと見ているが、スタミナがそれほどないなか逃げてしまい、かなりのスローペースではあったが論外だったと見ている。

上でも触れたように1回京都開催の芝はやや時計が掛かっているが、ある程度高速化するようならこちらが本命候補となる。

【能力値5位 マコトヴェリーキー】
4走前に京都芝2200mの保津峡S(3勝クラス)で2着に入った馬。ここでは4番枠からやや出遅れたが、促して中団最内を追走。道中で逃げ馬が単騎大逃げを打って隊列が縦長になるも、じわっと前との差を詰めて3角へ。

3~4角では最内から上手く押し上げ、好位列の後ろまで上がって直線を向く。序盤で中目に誘導して追われると2列目まで上がり、ラスト1Fで先に抜け出したブラックブロッサムに迫ったが、クビ差及ばなかった。

ブラックブロッサムはデビュー2戦目の大寒桜賞(重馬場)で好位から突き抜け、8馬身差で勝利した素質馬で、これでキャリア5戦4勝。この馬を3~4角から捉えに動き、オープン通用レベルの指数を記録したことは評価できる。

前走の中日新聞杯は緩みなく流れ、最内を立ち回った馬が1着、3着、4着に入る展開。ここで17番枠と外枠を引き、さらに後方から終始4頭分外を回るかなりのロスがあった。また、本馬は芝2000mではやや追走に忙しさを見せており、上がりの掛かる展開でないと苦しい。

つまり、前走からの距離延長は好条件。ただ、GⅡで一気に相手が強くなるここで通用するかは微妙なところだ。

穴は前走で復活したリビアングラス

リビアングラスは2023年の阿賀野川特別を逃げ切り、続く菊花賞でも4着と健闘した馬。その後は不振に苦しんだが、休養明けの前走・八坂Sで復活Vをあげた。

その前走は大外7番枠から五分のスタートを切り、じわっと先行して逃げ馬の外2番手を追走。道中はペースが遅く、コントロールしながら2番手を維持し、3角でも逃げ馬と半馬身差。3~4角で仕掛けて先頭列へ。直線序盤で内からチルカーノに出し抜かれ先頭に立たれたが、ラスト1Fで差し返すと、外から迫るインザモーメントの追撃を振り切ってクビ差で勝利した。

今回は紙一重の勝利から中1週での出走となるが、前走はかなりのスローで消耗の少ないレースだけに、ここでさらに前進する可能性もある。逃げが予想されるバビットのひとつ外という枠も好ましく、先行して流れに乗れれば一発あっても不思議ない。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ヨーホーレイクの前走指数「-18」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.8秒速い

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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