【東京新聞杯】4、5歳のノーザンファーム生産馬が強い 血統から中距離型のブレイディヴェーグが狙い目
坂上明大

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傾向解説
GⅠシーズンまでは少々時間があるため、実績の足りない馬が賞金加算のために使うことも多い東京新聞杯。安田記念と同じ東京芝1600mで行われますが、レースの質が大きく異なるため好走する血統にも違いが出てきます。本記事では血統面を中心に、東京新聞杯のレース傾向を整理していきます。
最初に紹介したいデータは年齢別成績。前述の通り、2月頭に行われる当レースでは、GⅠ上位勢が休養している間に賞金を加算したい若手の台頭が目立ちます。そのため、4歳>5歳>6歳>7歳以上と、若いほど好走率が高い傾向にあります。
昨年は7歳馬のワンツー決着になりましたが、基本的には賞金が足りない若手の素質馬を狙うのが本レースのテーマといえるでしょう。
<年齢別成績(過去10年)>
4歳【4-5-5-31】
勝率8.9%/連対率20.0%/複勝率31.1%/単回収率44%/複回収率80%
5歳【2-2-4-31】
勝率5.1%/連対率10.3%/複勝率20.5%/単回収率49%/複回収率86%
6歳【3-1-1-31】
勝率8.3%/連対率11.1%/複勝率13.9%/単回収率69%/複回収率50%
7歳以上【1-2-0-27】
勝率3.3%/連対率10.0%/複勝率10.0%/単回収率112%/複回収率42%
特に注目したいのがノーザンファーム生産の4、5歳馬。東京芝1600mは3つのGⅠが行われる日本の主流条件のひとつであるため、ノーザンファーム系の末脚強化型の血統や育成がマッチします。
なかでも4、5歳馬の成績は非常に優秀で、一昨年は3頭の出走馬から2着ナミュール、3着プレサージュリフトと2頭の好走馬を出しました。
<ノーザンファーム生産馬の年齢別成績(過去10年)>
4歳【3-4-1-11】
勝率15.8%/連対率36.8%/複勝率42.1%/単回収率76%/複回収率91%
5歳【1-2-2-6】
勝率9.1%/連対率27.3%/複勝率45.5%/単回収率70%/複回収率153%
6歳【0-1-0-9】
勝率0.0%/連対率10.0%/複勝率10.0%/単回収率0%/複回収率79%
7歳以上【0-0-0-10】
勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回収率0%/複回収率0%
血統面では芝中長距離血統に注目。過去10年の平均前後半3Fのラップは35.3-34.3と後傾1.0秒で、スローペースの瞬発力勝負になりやすいのが東京新聞杯の特徴です。スプリント寄りの適性よりも中長距離寄りの、道中で脚をタメる資質が求められ、実績面でも血統面でも中距離戦に強い馬が走りやすいレースとなっています。
過去10年の勝ち馬10頭を見ると、その父親はいずれも現役時代に芝2400m以上の重賞勝ちがあります。また、過去10年で3着以内だった30頭中28頭の父もこれに該当。ディープインパクトやハーツクライ、今年ならネオユニヴァース(サクラトゥジュールが該当)を中心とした芝中長距離種牡馬の産駒には要注目です。
<勝ち馬を出した種牡馬(過去10年)>
ディープインパクト【3-4-1-22】
勝率10.0%/連対率23.3%/複勝率26.7%/単回収率78%/複回収率73%
ハーツクライ【2-2-1-3】
勝率25.0%/連対率50.0%/複勝率62.5%/単回収率135%/複回収率211%
スクリーンヒーロー【1-1-1-2】
勝率20.0%/連対率40.0%/複勝率60.0%/単回収率190%/複回収率182%
ステイゴールド【1-0-1-5】
勝率14.3%/連対率14.3%/複勝率28.6%/単回収率38%/複回収率174%
トゥザグローリー【1-0-1-0】
勝率50.0%/連対率50.0%/複勝率100%/単回収率580%/複回収率260%
ネオユニヴァース【1-0-0-1】
勝率50.0%/連対率50.0%/複勝率50.0%/単回収率1690%/複回収率315%
タニノギムレット【1-0-0-0】
勝率100%/連対率100%/複勝率100%/単回収率640%/複回収率160%
有力馬の血統解説
・ブレイディヴェーグ
母インナーアージは二冠牝馬ミッキークイーンの全姉で、母自身も芝1600~2500mで4勝を挙げた中距離馬です。スレンダーな体つきは母譲りのそれで、ロードカナロア×ディープインパクトという主流配合にNureyevの5×5など欧州血脈のクロスを併せ持つ点も◎。トモが薄い中距離馬の体型ではありますが、中距離血統馬が強い東京新聞杯の血統傾向にはピッタリの一頭ではないでしょうか。
・ボンドガール
母コーステッドは2016年BCジュベナイルフィリーズターフの2着馬で、本馬の半兄にはダノンベルーガ(2022年共同通信杯)がいる良血馬です。末脚に懸ける競馬で中距離戦にも対応してきましたが、ダイワメジャー×北米血脈の牝馬であり、まとまりの良い馬体からも本質は高速馬場のマイル戦がベストではないでしょうか。東京芝1600mは得意コースのひとつで、ノーザンファーム生産の4歳馬という点も魅力の一頭です。
・オフトレイル
母母Manningtonはオーストラリアの芝短距離GⅢ勝ち馬。母ローズトレイルは不出走馬ですが、その半兄にはBenicio(2005年VRCヴィクトリアダービー)などがいる優秀な一族です。また、母は欧州繋養(けいよう)時にフランスの芝短距離GⅢの勝ち馬Rosa Imperialなどを出しており、オフトレイルは同馬の3/4同血の弟にあたります。Farhh×Kingmambo×デインヒルという欧州の芝マイラー血統で、底力が求められる芝のマイル前後がベスト。1600mへの距離延長はプラスですが、東京よりも中山の方が持ち味は生きそうです。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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