【有馬記念】スピードと持続力を伝える血に注目 ドウデュースら有力馬3頭を血統から評価
坂上明大
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傾向解説
2024年を締めくくるグランプリレース、有馬記念。東京開催の天皇賞(秋)やジャパンCとは異なり、中山芝2500mというトリッキーなコースで行われる本レースは、地力だけでなく立ち回りも重要となる一戦です。本記事では血統面を中心に、有馬記念のレース傾向を整理していきます。
まず、紹介したいデータは年齢別成績。日本競馬が芝1600~2500mを中心に形成されていることはGⅠの数や賞金額からも明白で、それは競走馬の生産自体が強い芝中距離馬をつくることを主軸にしていることを意味します。
そして、層が厚いことから世代交代のスパンが短くなり、過去10年の有馬記念では6歳以上での好走が2018年3着馬シュヴァルグラン(6歳)のみとなっています。また、菊花賞からローテーションを組みやすく、斤量面の恩恵も大きい3歳馬の活躍が目立つため、菊花賞や天皇賞(秋)からここを目標に参戦してきた3歳馬には大注目です。
<年齢別成績(過去10年)>
3歳【4-3-2-16】
勝率16.0%/連対率28.0%/複勝率36.0%/単回収率63%/複回収率95%
4歳【3-5-1-39】
勝率6.3%/連対率16.7%/複勝率18.8%/単回収率51%/複回収率42%
5歳【3-2-6-40】
勝率5.9%/連対率9.8%/複勝率21.6%/単回収率33%/複回収率60%
6歳【0-0-1-22】
勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率4.3%/単回収率0%/複回収率16%
7歳以上【0-0-0-13】
勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回収率0%/複回収率0%
血統面ではLyphardの血に注目。Lyphardの直仔では凱旋門賞馬ダンシングブレーヴが有名ですが、ディープインパクトの母父AlzaoもLyphardの直仔。ハーツクライの母母父にも名を残す日本競馬とも関係の深い種牡馬です。
Lyphardは母の父Court Martialに馬体の輪郭が似ており、Lady Juror→Fair Trial→Court Martialから受け継いだスピードと持続力が特徴といえます。その特徴が強く出ていたのが、Lyphardを4×4でインブリード(近親交配)した2014年勝ち馬ジェンティルドンナや2017年勝ち馬キタサンブラックだったのではないでしょうか。
50年以上前に生まれた競走馬であるため、ジェンティルドンナやキタサンブラック、リスグラシュー、イクイノックス、ドウデュースのようにインブリードによって同血脈を多くする必要はありますが、現在においても有馬記念で重要な血筋であることは間違いないでしょう。
<血統別成績(5歳以下・過去10年)>
Lyphard内包馬【8-6-5-54】
勝率11.0%/連対率19.2%/複勝率26.0%/単回収率52%/複回収率66%
→インブリード【5-2-2-3】
勝率41.7%/連対率58.3%/複勝率75.0%/単回収率206%/複回収率158%
また、Lyphardと同じくFair Trialの血を内包する種牡馬とは総じて相性が良く、特にNorthern Dancer直仔であるDanzigの血を引く馬はLyphardに負けず劣らずの好成績を残しています。そのほか、NureyevやBe My Guestなどと組み合わせるパターンでも同様の効果が見込め、一昨年2着馬ボルドグフーシュの血統表はその参考になるのではないでしょうか。
<血統別成績(5歳以下・過去10年)>
Danzig内包馬【4-3-2-20】
勝率13.8%/連対率24.1%/複勝率31.0%/単回収率128%/複回収率105%
有力馬の血統を解説
・ドウデュース
母ダストアンドダイヤモンズはダート短距離の北米重賞勝ち馬で、父ハーツクライにスピードを強化した典型的な成功パターン。本馬は500kg強の雄大な馬格を有しており、馬体が完成した現在は高速時計が出る良好な馬場でLyphard由来の機動力を生かす競馬がベストでしょう。
ハイペースになるとスタミナ面で不安がありますが、逃げ馬不在のメンバー構成なら今年も持ち味を存分に生かせそうです。
・アーバンシック
3代母ウインドインハーヘアに遡る名牝系に属し、母母ランズエッジは名馬ディープインパクトの3/4同血の妹。さらに、母エッジースタイルは2023年ホープフルS優勝馬レガレイラの母であるロカの全妹であり、本馬はレガレイラと同じスワーヴリチャードの産駒でもあります。
Lyphardの5×6・5を持ち、長く使える末脚を生かす競馬が合う一方、先行争いに弱い点が課題。大跳びのフットワークでもあり、中山内回りの急コーナーも課題となりそうです。
・ダノンデサイル
母トップデサイルは2014年BCジュベナイルフィリーズ2着馬。エピファネイア産駒の本馬はRobertoの4×5、Seattle Slewの5×4などバランスの取れた配合形となっています。
父の産駒らしい気性の危うさがあり、日本ダービーではようやく本馬の本当の強さを披露しました。中山芝2500mも苦にすることはなく、今回も横山典弘騎手とのタッグ。自身の力を存分に発揮してほしいところです。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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