【阪神JF】スピードを伝え、早熟なデインヒルの血に注目 メイデイレディほか有力馬の血統を解説
坂上明大
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傾向解説
阪神競馬場の改修工事の影響により、京都芝外回り1600mで行われる2024年阪神ジュベナイルフィリーズ(以下、阪神JF)。ただ、地力差の大きい2歳戦だけに適性面よりも素質や完成度の方が重要で、京都に舞台を移しても大きくレース傾向が変わらないのではないでしょうか。本記事では2歳戦に強い血統を中心に、阪神JFのレース傾向を整理していきます。
まず、紹介したいデータは前走距離別成績。朝日杯FSや桜花賞でも同様の傾向にありますが、阪神JFでも1600m以上からとなるローテーションの成績が高水準となっています。
日本競馬は芝1600~2500mを中心に番組が構成されており、2歳戦においても1600m以上のレースにレベルの高い馬が集まる傾向にあります。そのため、よほど強い競馬をした馬でない限り、距離延長馬は割り引くのがセオリーといえるでしょう。
<前走距離別成績>
距離延長【3-1-4-76】
勝率3.6%/連対率4.8%/複勝率9.5%/単回率28%/複回率27%
同距離【6-8-5-61】
勝率7.5%/連対率17.5%/複勝率23.8%/単回率29%/複回率64%
距離短縮【1-1-1-11】
勝率7.1%/連対率14.3%/複勝率21.4%/単回率20%/複回率58%
(過去10年)
また、馬体重別成績も注目。馬体重にはさまざまな要素が関係しており、あくまで一側面ではありますが、阪神JFでは一定以上の馬体重がある馬の方が好走する傾向にあります。
筋肉質でガッチリとした馬体の馬であれば、スピードや完成が早いことにも期待が持て、2歳GⅠで好走するための素質につながるというわけです。過去10年の勝ち馬すべてに該当する馬体重460kg以上が基準として良いでしょう。
<馬体重別成績>
~419kg【0-0-0-21】
勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回率0%/複回率0%
420~439kg【0-3-2-33】
勝率0.0%/連対率7.9%/複勝率13.2%/単回率0%/複回率38%
440~459kg【0-3-4-41】
勝率0.0%/連対率6.3%/複勝率14.6%/単回率0%/複回率67%
460~479kg【7-3-4-36】
勝率14.0%/連対率20.0%/複勝率28.0%/単回率65%/複回率56%
480kg~【3-1-0-17】
勝率14.3%/連対率19.0%/複勝率19.0%/単回率84%/複回率35%
(過去10年)
血統ではオーストラリアで一大父系を築き上げたデインヒルに注目。オーストラリア競馬は2歳戦と短距離戦が充実しており、そのカテゴリーをけん引してきたのがデインヒル父系です。
同父系が伝えるスピードは阪神JFにおいても非常に強力で、早熟な傾向にある点も2歳戦で心強いです。馬券圏内の好走馬以外にも2020年の5着馬ヨカヨカ(10番人気)や2021年の5着馬ナムラクレア(6番人気)、一昨年の5着馬ミシシッピテソーロ(16番人気)など、早期から活躍できる馬を多く輩出しています。
ただ、日本で種牡馬入りしたハービンジャーは明らかに欧州の芝中長距離タイプのため、同血脈は避けた方がベターでしょう。
<デインヒル内包馬の成績 ※ハービンジャーを除く>
デインヒル内包馬【3-1-1-13】
勝率16.7%/連対率22.2%/複勝率27.8%/単回率110%/複回率91%
(過去10年)
また、サンデーサイレンスを経由しないHalo系の血も活躍が目立ちます。サンデーサイレンスは1990年代以降、日本の血統地図をたった一頭で塗り替えた大種牡馬ですが、産駒のJRA・GⅠ勝ちの約2/3は芝2000m以上のレースという芝中距離で強いタイプ。現2歳馬で同血脈を持たない馬は少ないですが、母方からHaloらしさを強化するような仕掛けがあると本レースでの好走率は高くなるでしょう。
代表的な血筋には、Glorious Song=Devil's Bag、Machiavellian=Coup de Genie(バゴの母母)、グッバイヘイロー(キングヘイローの母)などが挙げられます。
有力馬の血統を解説
・ブラウンラチェット
3代母ローミンレイチェルに遡る牝系に属し、本馬の3/4同血の兄にはフォーエバーヤング(2023年全日本2歳優駿、2024年ジャパンダートクラシック)がいる良血です。
キズナ産駒の本馬は手足の長い中距離馬体型で、北米血脈主体の血統構成だけに高速馬場の大箱コースがベスト。将来的に1600mはやや短くなりそうで、GⅠの引き締まった流れなら中団以降で脚をタメる競馬が合うでしょう。
・メイデイレディ
BCジュベナイルフィリーズターフでは馬群を割って2着まで追い込んだ米国馬。母父More Than Ready(父父Halo)譲りの俊敏なマイラーで、本来は前々で機動力を生かす競馬がベストでしょう。ただ、現状は発馬に課題があり、日本馬相手に直線一気の勝負では少々分が悪い印象です。
・テリオスララ
今回の注目血統はテリオスララ。Ballade→Glorious Songからつながる名牝系に属し、兄にはダート重賞2勝馬セラフィックコールや日本ダービー4着馬サンライズアースがいる良血馬です。
母シャンドランジュがHaloの3×4を持ち、父シスキンはDanzig系Oasis Dreamなどを持つ早熟なマイラー血統。前走馬体重は496kgと馬格にも恵まれ、マイルから中距離であれば、どんな競馬にも対応できそうな優等生タイプです。
・リリーフィールド
デインヒル内包馬で注目したいのはリリーフィールド。母ハイリリーは芝1600~2000mで3勝。モズアスコット産駒の本馬は芝ダート兼用のスピード馬で、芝ならハイペースの1400m前後がベストです。ただ、前走馬体重428kgと小柄な点は割引が必要でしょうか。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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