【阪神JF】能力は文句なし、米国馬メイデイレディが最有力 国内ならアルテミスS覇者ブラウンラチェットが筆頭

勝木淳

過去10年のデータから見る阪神ジュベナイルフィリーズ,ⒸSPAIA

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海を渡ってきた超大物メイデイレディ

メイデイレディの参戦は想定外といっていい。海外所属の2歳牝馬がJRAで走るのは史上初のこと。それもメイデイレディは前走ブリーダーズCジュベナイルフィリーズターフ2着。通算4戦3勝という才媛だ。なにより初黒星を喫した相手レイクヴィクトリアは5戦5勝、GⅠ・3連勝中の超大物だ。

その前走、メイデイレディは1コーナーで不利を受けながら、最後は1馬身半まで詰めてきた。文句なしで“超A級”の2歳牝馬だ。馬場や流れなど乗り越えないといけない壁はあるものの、実力だけならぶっちぎってもおかしくない。

今年の舞台は京都。牝馬にとって走りやすいコースだが、芝の状態は気になるところだ。以降は過去10年分のデータを使用して分析する。

人気別成績,ⒸSPAIA


人気別成績では、1番人気【5-0-0-5】勝率、複勝率50.0%とかなり極端。主役は勝つか馬券圏外か。勝った5頭は前走「東京か京都のオープン以上」で「2番人気以内かつ2着以内」だった。アルテミスS1着のブラウンラチェットは3番人気。さてどうか。

勝ち馬はすべて5番人気以内。10番人気以下は【0-2-1-85】複勝率3.4%。22年はリバティアイランドが勝ち、2、3着は12番人気シンリョクカ、10番人気ドゥアイズだった。人気薄の激走もある。また、馬券圏内に入った3頭のうち2頭は関東馬。どちらも1勝馬であり、抽選突破の関東馬に大穴が潜む。

キャリア別成績,ⒸSPAIA


続いてキャリア別成績を見る。1戦1勝馬は【0-1-0-13】複勝率7.1%。抽選をくぐらないと出走できないため、新馬勝ちの好素材といえど簡単ではない。特に今年は2勝馬が多く、抽選は狭き門だ。やはり新馬からの連勝組が望ましい。

キャリア2戦馬は【5-3-3-38】勝率10.2%、複勝率22.4%。同3戦【5-5-6-48】勝率7.8%、複勝率25.0%までが理想の範囲だ。メイデイレディも国は違えど、パターンは同じ。未勝利→オープン→GⅡと勝ち、GⅠへ。日本の同級生よりひと足先にGⅠを経験したといった感じ。キャリアが浅いうちは日本も海外も道程に大した差はない。

ブラウンラチェット筆頭も

日本勢は2連勝のブラウンラチェットを筆頭にデイリー杯2歳Sを勝ったランフォーヴァウ、札幌2歳S2着アルマヴェローチェ、無敗のクリノメイ、ビップデイジー、ファンタジーSを制したダンツエラン、コートアリシアンあたりが上位を担う。

前走クラス別成績,ⒸSPAIA


GⅠ挑戦となると、やはりオープン、重賞での経験は強みになる。前走1勝クラス組は【1-4-1-46】勝率1.9%、複勝率11.5%と勝ちきれない。若駒はあまりレースの格やクラスを意識しないものだが、データ上は格を意識せよと出ている。前走GⅢ組は【8-3-7-61】勝率10.1%、複勝率22.8%で、勝ち馬8頭はここから出た。

前走アルテミスS・着順別成績,ⒸSPAIA


なかでも前走アルテミスS組は【5-3-3-19】勝率16.7%、複勝率36.7%と強力だ。その着順内訳は1着【3-1-1-4】勝率33.3%、複勝率55.6%、2着【2-1-1-3】勝率28.6%、複勝率57.1%。賞金加算に成功した馬が中心となる。

確実に出走可能のブラウンラチェット、ミストレスは馬券に入れないといけない。とはいえ、前後半800m47.7-46.1の超スローを好位から抜けたブラウンラチェット、逃げたミストレスはどこまで高く評価すべきか迷う。ラスト600m11.5-11.1-11.0と加速ラップを描くも、スローならこのぐらい記録しても不思議ではない。今秋の東京は絶好の馬場で、上がりの速いレースが続出した。

前走ファンタジーS1着馬は【2-0-1-5】勝率25.0%、複勝率37.5%。アルテミスSと比べれば、劣勢は否めない。今年は舞台が同じ京都なので親和性は深まるか、注目だ。

前走1勝クラス・距離別成績,ⒸSPAIA


そのほかでは、劣勢ながら、1着1頭、2着4頭の前走1勝クラス組は簡単には切れない。その距離内訳は同距離【0-4-1-25】複勝率16.7%、距離延長組【1-0-0-20】同4.8%。14年ショウナンアデラが勝って以来、距離延長組の好走はない。サフラン賞を勝ったクリノメイ、アスター賞のジャルディニエあたりが候補だ。

インパクトでいえば、メイデイレディと肩を並べる存在はいない。国内組の序列はきっちり決めつつも、今年はメイデイレディにかけてもいい。それだけの存在だ。

過去10年のデータから見る阪神JF,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。

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