【阪神JF】「京都芝の杉山佳明厩舎」は複回収率238% データで導く穴馬候補3頭
鈴木ユウヤ
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データで見る「穴候補3頭」
今週日曜の京都メインは阪神ジュベナイルフィリーズ(以下、阪神JF)。2歳牝馬の頂点を決するマイルGⅠだ。アルテミスSを制したブラウンラチェットの1番人気が濃厚で、コートアリシアンやテリオスララ、そして異例の参戦となる米国馬メイデイレディにも注目が集まる。
今年は阪神競馬場が改修のため使えず、京都での代替開催となる。正直なところ例年の傾向がどこまで通用するか読めないところもあるが、様々な切り口のデータを駆使して3頭の穴候補を導き出した。
「札幌芝1800mデビュー勝ち」は崩れない アルマヴェローチェ
まず1頭目はアルマヴェローチェ。夏の札幌芝1800m戦でデビュー勝ちを収めると、札幌2歳Sで牡馬の強豪に挑んで2着。3戦目でGⅠに駒を進めてきた。
阪神JFでは「デビュー戦の距離」がヒントになる。過去10年、1500m以下でデビューした馬は【2-1-3-82】複勝率6.8%、単回収率19%、複回収率22%と低調だ。最もいいのは「1800mデビュー馬」で、その成績は【4-3-3-16】複勝率38.5%、複回収率92%となっている。この要因として下記の2つが考えられる。
(1)中距離戦の流れで折り合いを覚えたことがレースに好影響をもたらす
(2)期待が大きい馬ほど長めの距離でデビューさせる傾向がある
中でも「札幌芝1800mでデビュー勝ち」の馬は【1-2-1-0】複勝率100%。14年2着レッツゴードンキ、16年1着ソウルスターリング、22年3着ドゥアイズ、そして昨年2着ステレンボッシュのいずれも馬券に絡んだ。
夏の札幌は気候的にダメージが残りにくく、またトップ騎手もそろうことから芝中距離新馬戦は総じてハイレベルになりがち。勝てば阪神JFまで時間的な余裕をもってローテーションを組むこともできる。好成績になるのも納得だ。
今年の該当馬はアルマヴェローチェただ1頭。札幌2歳Sは外有利のトラックバイアスが見られるなか、1番枠から直線最内を突いてゴール寸前まで先頭をキープしていた。敗れはしたが内容は非常に濃い。ここでも勝ち負けになる。
「早生まれ」×「前走上がり3F34.1秒以下」が好走多数 ビップデイジー
2頭目は紫菊賞を勝った2戦2勝馬ビップデイジー。4代母にキャサリーンパー、つまり同牝系にマリアライトやダンビュライト、アロンダイト、リアファル、クリソベリル、クリソライト、オーソクレースなど数多くの活躍馬がいる良血馬。本馬は2022年2月15日に生を受けた。
2歳重賞の定番データとして「早生まれ有利」というネタがある。阪神JFにおいてもそうで、過去10年で「2月以前生まれ」【5-5-4-42】複勝率25.0%、複回収率71%、「3月以降生まれ」【5-5-6-106】複勝率13.1%、複回収率34%で確かに差が存在する。
ただ、これ単体で決め手になるほどでもない。そこでもう少し掘り下げる。「2月以前生まれ」のうち「前走上がり34.1秒以下」を満たすと【5-5-4-17】複勝率45.2%、複回収率130%と一気に好走率が高くなる。早生まれかつ前走で速い上がりを使った馬。これが狙い目だ。
該当馬は複数いるがなかでもビップデイジーに注目した。前走は全体時計1:48.8、ラスト3F11.4-11.2-11.0で自身の上がりは33.3秒。なかなかお目にかかれない秀逸な数字である。
京都芝1800mの2歳戦を上がり33.5秒以下で勝った馬は86年以降で8頭。そのうち全体時計が1分50秒を切ったものはエピファネイア(菊花賞、ジャパンC)、マカヒキ(日本ダービー)、ブラックスピネル(東京新聞杯)、そして今年のビップデイジーとマディソンガールの5頭だ。数字的には少なくとも重賞級といっていい。GⅠでもいい勝負になる可能性はある。
頼れる「杉山佳明厩舎」は京都芝で複回収率238% カワキタマナレア
ラストはカワキタマナレアを取り上げる。札幌芝1200mでデビューから2連勝し、重賞初挑戦のファンタジーSは0.1秒差の5着。さらなる距離延長でここへ臨む。
管理するのは杉山佳明厩舎。「栗東の杉山厩舎」といえばジャスティンパレスやデアリングタクトの杉山晴紀厩舎をイメージするかもしれないが、こちらの杉山佳明厩舎も馬券好きならぜひ覚えておきたい名前だ。
なぜなら、杉山佳厩舎の本年成績は【23-29-28-225】複勝率26.2%、複回収率133%。複勝ベタ買いでもプラスになっているのだ。特に京都芝では【4-4-9-26】複勝率39.5%、単回収率133%、複回収率238%と好走率も回収率も跳ね上がる。見かけたらどんどん買っていこう。
カワキタマナレアの前走ファンタジーSは不良馬場で前後半3F36.0-34.7のスローペース。自身も上がり最速34.0秒の脚は使ったが、あの日の馬場コンディションとペースからすると5着が精一杯だった。力負けではない。
戦績から距離延長を懸念されそうだが、半兄にはマイルで3勝を挙げるカワキタレブリーがおり、マイルまでは守備範囲だろう。
余談だが、そのカワキタレブリーはデイリー杯2歳Sで7頭立て7番人気3着、NHKマイルCで18番人気3着と、二度も重賞最低人気で穴を開けた。妹にも大穴演出を期待しよう。
<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、X(Twitter)やブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。
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