【菊花賞】機動力、スタミナ、末脚の3つが重要な舞台 京大競馬研の本命はコスモキュランダ

京都大学競馬研究会

菊花賞 上がり3F4位以内馬の成績,ⒸSPAIA

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高い機動力と持続する末脚が生きる

10月20日(日)に菊花賞(GⅠ)が行われる。ダービー馬のダノンデサイルをはじめ、前哨戦セントライト記念勝ち馬アーバンシック、神戸新聞杯勝ち馬メイショウタバル、昨年の勝ち馬ドゥレッツァと同様に日本海Sを制して挑むヘデントールなど、牡馬クラシック三冠の最終戦に相応しい有力馬が集結。混戦模様の難解な一戦となった。

以下では、本レースが行われる京都芝3000mのコース形態とそれに起因するレースの質、そして想定される展開を踏まえ予想する。

まずは京都芝3000mのコース形態をみる。向正面3コーナー手前の上り坂からスタートし、初角までの距離は約200m。3コーナーで頂上を迎え、そこから4コーナーにかけて一気に下る。スタンド前の直線は平坦で、そこから1~2コーナーを回ると、向正面半ばから再度上り坂。1周目同様、3コーナーにかけて上り、4コーナーへかけては下り坂だ。最終直線はAコース使用時403.7mで平坦となっている。これが今回のコースレイアウトだ。

まず注目すべきは初角までの距離が約200mとかなり短いこと。通常、初角までの距離が短いコースは先手争いが長引きにくく、序盤のペースは落ち着きやすい。しかしこのコースは1周目の3コーナーから4コーナーにかけて下り坂でダッシュがつく。したがって序盤のペースは比較的流れやすい。その後のスタンド前の直線も平坦であり、下り坂からの惰性でしばらくペースは落ちない。

1~2コーナーに入った後はペースが落ち着き、向正面半ばからの上り坂を登り切るまで、中盤はゆったりと進む。加速するのは2周目の3コーナーの上り坂頂上から。ここからの下り坂で、中盤で脚を溜めていた先行勢が一気にスピードを上げていく。最終直線に入るまでに後方勢が先行勢とのポジション差を埋めにくい。こういうコース形態の場合、通常は先行勢がそのまま押し切りやすい。

しかし京都芝3000mは、この長距離にして序盤の先行負荷がそれなりに大きいため、地力のない先行勢は最終直線半ばで一気に脱落する。したがって3~4コーナーの下り坂を生かして前目の位置までマクる差し馬が恵まれやすい。これがこのコースで生まれやすいレースの質だ。

菊花賞、上がり3F4位以内馬の成績,ⒸSPAIA


<菊花賞 上がり3F4位以内馬の成績(京都開催の直近10回)>
【10-10-7-19】勝率21.7%、連対率43.5%、複勝率58.7%、単勝回収率129%、複勝回収率190%

この傾向は数字にも表れている。菊花賞で「上がり3F4位以内馬」の成績は上記に示した通り優秀。馬券内となった30頭中27頭、また連対した20頭全てが上がり3F4位以内を記録している。速い上がりを持たない先行馬の残り目はほぼ皆無。速い上がりを使えることは本レースで好走するための絶対条件だ。

また、ここで言う「速い上がり」とは、瞬発力による33秒台の上がりではなく、スタミナと持続力が重要な3F34秒後半から35秒台の上がりであることを強調したい。下り坂から最終直線にかけた4~5Fのロングスパート戦において長く良い脚が使えることが重要だ。

下り坂を生かして前目の位置までマクる機動力、3000mという距離でのロングスパート戦をこなすだけのスタミナと持続する末脚。今回印を打つ上でこの3点を重視したい。

下り坂でマクる差し馬が有利

続いて今回想定される展開から恵まれる馬を考える。メンバー構成は前走通過順位に3番手以内のある先行馬が7頭と出走馬全18頭に対して多い。

ただ今回はメイショウタバルのテンの速さが抜けていて、この馬がペースメーカーとなる可能性が高い。同馬の近3走を見ても他馬にあわせて逃げるペースを変える馬ではない。単騎逃げとはいえ、不安定な気性も考えれば序盤の下り坂で折り合うのは難しい。1000m通過61秒を超えるような楽逃げはまず考えられない。この距離にしてはかなりのハイペースで逃げるだろう。他の先行勢もそれなりに追走できる馬が多く、このペースについていけば序盤の負荷は大きくなる。

このコースで生まれやすいレースの質から、高い機動力を持つ差し馬が恵まれる。序盤に流れる分、中盤のペースは間違いなく緩む。そのタイミングで徐々に位置を押し上げていき、終盤の下り坂を生かして前目の位置まで浮上できる差し馬が理想的だ。

持ち味のマクり差しで

◎コスモキュランダ
前走のセントライト記念は内有利の高速馬場のなか、勝ち馬アーバンシックとの比較で3頭分外を回すロスがあったが0.3秒差2着。勝ち馬は内で脚を溜め続けたのに対し、本馬は3~4コーナーにかけて12.3-12.0-11.7-11.4のラップを大外からマクる競馬。着差以上に評価できる内容だった。

2走前の日本ダービーは前半1000m62.2秒の超スローペースで前残り展開。道中マクって位置を上げるも、瞬発力戦で上がり3F14位とキレ負けした。逆に3走前の皐月賞は前半1000m57.5秒の超ハイペースで上がりのかかる競馬になり、勝ち馬ジャスティンミラノにタイム差なしの2着。4走前の弥生賞も上がりのかかる競馬でダービー3着馬シンエンペラーをレースレコードで完封した。世代屈指の実力を持っているのは間違いない。

この馬の最大の武器は高い機動力と持続する末脚。好走パターンは明確で、上がりのかかるロングスパート戦で位置を押し上げるのがベストだ。ダービーのような一瞬のキレ味が問われる瞬発力勝負は分が悪い。今回想定される展開は本馬の好走パターン。折り合いに課題もないため、大幅な距離延長も問題ない。持ち味を最大限に生かせれば勝ち負け必至だ。

◯ダノンデサイル
前走の日本ダービーは超スローペースで内前有利の展開が向いたとはいえ、2着に0.4秒差の圧勝。3走前の京成杯では今回上位人気が予想されるアーバンシックに完勝し、4走前の京都2歳Sでは進路を切り替えるロスがありながら、ダービー3着シンエンペラーから0.1秒差の4着と高く評価できる内容だった。その能力の高さは疑う余地がなく、世代上位の一頭だ。まだ底を見せておらず、ダービーの着差を見ても、オッズ以上に能力が抜けている可能性は十二分にある。軽視はできず2番手評価とする。

▲アーバンシック
前走のセントライト記念は内有利の高速馬場で内をロスなく立ち回った上での勝利。素直に評価できる内容ではない。反対に、2走前の日本ダービーは超スローペースで内前有利の展開を後方待機から大外へ回ったもので、評価を下げる必要はない。皐月賞は言わずもがなのハイレベルなメンバーを相手に0.4秒差の4着に入った。前記2頭同様に今回のメンバーでは実績上位だ。ただ展開を味方につけて完璧に立ち回った前走の勝利と鞍上C.ルメール騎手で過剰人気が予想される今回は3番手評価までにした。

△ヘデントール
3勝クラス・日本海Sでは2着に0.6秒差をつけて圧勝。レース後半5F57.5秒、ラスト2F11.3-11.1の加速ラップと非常に優秀な数字で、まだまだ余力を感じる内容だった。ここでも通用する。

×ショウナンラプンタ
中団から堅実な末脚を使えるタイプ。前走で折り合い難も克服し、距離延長も問題ない。

×メイショウタバル
まだ能力の底を見せていない。今回も逃げる可能性が高く、残る目も考えて押さえ。

買い目は◎単勝1点、◎-◯▲△×馬連5点、◎-◯▲-◯▲△×3連複7点で勝負する。(花田)

▽菊花賞予想▽
◎コスモキュランダ
◯ダノンデサイル
▲アーバンシック
△ヘデントール
×ショウナンラプンタ
×メイショウタバル

ライタープロフィール
京都大学競馬研究会
今年で30周年を迎える、京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えの本格派がそろう。

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