【富士S】「前走安田記念」は大敗馬も好走 エアロロノア、レッドモンレーヴらもチャンスあり

勝木淳

過去10年のデータから見る富士S,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

世代交代を待つマイル路線

2020年からGⅡ昇格。その後、4年間で前走富士S組はマイルCS【2-0-1-15】で、3年連続3着以内馬を出し、2年連続で富士Sを制した馬が勝利を飾っている。そして、不思議なことに馬券になった3頭はマイルCSで5、6、5番人気と上位3番人気以内に入らないのに好走した。

昨年のマイルCS1番人気は毎日王冠3着シュネルマイスター、2番人気は安田記念2着以来の出走だったセリフォス。ローテーションの工夫が当たり前になった時代だが、実績にとらわれず、前哨戦の内容を精査すべきではないか。そんなメッセージを感じる。データは過去10年分を使用する。

人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気【4-1-0-5】勝率40.0%、複勝率50.0%、2番人気【3-0-2-5】勝率30.0%、複勝率50.0%をはじめ、勝ち馬はすべて5番人気以内から。東京のマイル戦となると、そう恵まれた好走は多くない。混戦になりやすく人気の割れる年が多くてもこの結果なので、なにはともあれ上位人気馬を中心に組み立てよう。

年齢別成績,ⒸSPAIA


年齢では3歳【4-1-2-28】勝率11.4%、複勝率20.0%、4歳【5-5-2-19】勝率16.1%、複勝率38.7%がリードする。3歳は秋を境にマイル路線へ舵(かじ)を切る中距離型や春から一貫してマイル路線をひた走る馬など、実績を積んだ馬も多い。

今年は3歳マイル王ジャンタルマンタルが熱発で回避となったが、ダービーに出たゴンバデカーブース、関屋記念4着ロジリオンが出走を予定している。4歳馬は重賞実績がない馬が多く、5歳馬【1-3-6-34】勝率2.3%、複勝率22.7%ぐらいまでは十分やれそうだ。


安田記念は大敗でもチャンスあり

マイル戦線は6歳ソウルラッシュ、5歳セリフォスあたりが中心で、流れが停滞している。もちろん、マイルCS連覇をかけるナミュールという存在もいるが、それとて5歳秋。安田記念をロマンチックウォリアーにもっていかれ、新星登場を期待したくなるカテゴリーではある。

前走クラス別成績,ⒸSPAIA


今年はソウルラッシュ、セリフォスがそろってここから始動する。前走GⅠ【5-5-3-20】勝率15.2%、複勝率39.4%のうち、安田記念は【3-4-0-5】勝率25.0%、複勝率58.3%。2頭の壁は高そうだ。

ただし、安田記念3着以内の富士S出走はなく、内訳は4、5着【1-1-0-0】、6~9着【0-2-0-3】、10着以下【2-1-0-2】。3着ソウルラッシュ、5着セリフォスのほかに10着エアロロノア、11着レッドモンレーヴなども軽く扱えない。

ほか、前走ダービーは【0-0-0-4】。適距離へのシフトチェンジだったとしても、800mの距離短縮は簡単ではない。

前走GⅡ、GⅢ 主なレース別成績,ⒸSPAIA


GⅠ以外の重賞についてレース内訳をみる。関屋記念【2-0-0-8】勝率、複勝率20.0%はやや極端。好走した2頭は関屋記念1、3着で前走3着以内が条件だ。3着ジュンブロッサムは評価。4着ロジリオンは微妙で、14着パラレルヴィジョンは苦しい。

京成杯AH【1-2-1-22】勝率3.8%、複勝率15.4%は斤量がポイント。前走から斤量増、増減なしは【0-2-0-18】、斤量減【1-0-1-4】勝率16.7%、複勝率33.3%。別定にかわって斤量が減る、つまり基礎重量より京成杯AHでハンデを課せられた実績馬がいい。ただし、今年の2着タイムトゥヘヴンは斤量が増える。

前走距離別成績,ⒸSPAIA


クラスを問わず、全体の前走距離別成績は1600m【7-7-6-69】勝率7.9%、複勝率22.5%、1600m未満からの距離延長【0-0-0-11】、1600m超からの距離短縮【3-3-4-40】勝率6.0%、複勝率20.0%。朱鷺Sを勝ったバルサムノートは延長なので、距離の壁がある。短縮の狙いは3着以内【0-2-2-8】もいいが、4、5着【2-0-1-6】、10着以下【1-1-1-18】と惜敗、大敗からの巻き返しもある。短縮は前走ダービー組を除けば前走着順を気にしなくていい。

過去10年のデータから見る富士S,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。

《関連記事》
“イン突き”の岩田康誠騎手は内枠で単回収率900%超え GⅡで妙味のある騎手、厩舎を東大HCが調査
トライアルに強い騎手を特集 頭で狙いたい岩田望来騎手、「中山マイスター」津村明秀騎手に注目
【競馬】2024年に産駒がデビューする種牡馬まとめ ダート馬ルヴァンスレーヴが種付け数トップ 

おすすめ記事