【秋華賞】有力馬ではチェルヴィニアを高評価 ハイペースに強いGraustark、His Majestyの血が後押し

坂上明大

2024年秋華賞の注目血統,ⒸSPAIA

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傾向解説

3歳牝馬三冠最終戦の秋華賞。京都競馬場改修工事の影響で2021~22年は阪神芝2000mを舞台に行われましたが、昨年からは京都芝2000mに舞台を戻し、牝馬三冠レースでは唯一の小回りコースでのGⅠ競走でもあります。阪神芝2000mと京都芝2000mとの違い、そして桜花賞やオークスとの違いも含めて、秋華賞のレース傾向を整理していきます。

京都芝2000mと阪神芝2000mでの大きな違いは「ペースの差」があげられます。阪神芝2000mで行われた年の前後半1000mラップは、2021年が61.2-60.0の後傾1.2秒、2022年が59.7-58.9の後傾0.8秒とどちらも後傾ラップを刻みました。一方で過去10年の京都開催だった8回で後傾ラップを刻んだのは3回だけで、昨年の61.9-59.2といったスローペースは珍しいパターンです。

初角までの距離が300m強と短い点は京都も阪神も同じですが、京都では前有利の意識が強過ぎるのか、先行争いが苛烈になる傾向にあります。注目したいのは初角位置別成績で、京都開催の直近8回で初角5番手以内から馬券圏内に粘り込んだのは4頭だけで、2着1回、3着3回という成績。いかに前半で脚をタメられるかが勝敗を分けるポイントとなっています。

京都開催過去8回の秋華賞、初角番手別成績(単勝オッズ19.9倍以下),ⒸSPAIA


<京都開催過去8回の秋華賞、初角番手別成績(単勝オッズ19.9倍以下)>
5番手以内【0-1-2-13】
勝率0.0%/連対率6.3%/複勝率18.8%/単回収率0%/複回収率45%
6番手以下【8-6-2-15】
勝率25.8%/連対率45.2%/複勝率51.6%/単回収率117%/複回収率107%

血統面ではGraustark=His Majestyの血に注目。ブライアンズタイム、グラスワンダー、Kingmamboなどハイペース適性の高い種牡馬たちが共通して持っています。特に同血脈のクロスを持つ馬は京都開催8回で3頭しかおらず、唯一10番人気以内だった2017年モズカッチャンは5番人気3着。集計期間外にはなりますが、2013年にはリラコサージュが15番人気3着と超人気薄での好走も果たしています。

ブライアンズタイムやグラスワンダーは機動力に優れたRobertoの血も併せ持つ相性の良い種牡馬で、Kingmambo+Robertoの配合パターンも大注目の組み合わせです。日本の主流父系であるサンデーサイレンス系の勝率、複勝率が牝馬三冠のなかで最も低いのが当レースで、春の2レースとは少々異なる適性が求められます。

京都開催過去8回の秋華賞、Graustark=His Majesty内包馬の成績(単勝オッズ19.9倍以下),ⒸSPAIA


<京都開催過去8回の秋華賞、Graustark=His Majesty内包馬の成績(単勝オッズ19.9倍以下)>
Graustark=HisMajesty【4-2-3-8】
勝率23.5%/連対率35.3%/複勝率52.9%/単回収率59%/複回収率103%


有力馬の血統を解説

・チェルヴィニア
母のチェッキーノは2016年オークス2着馬で、その全兄には2013年皐月賞3着馬コディーノなどがいます。キングカメハメハ父系×ハッピートレイルズ牝系は機動力に優れたFair Trial増幅形で、コースの得手不得手が少ないのが強みです。

本馬の父ハービンジャーはディアドラ、モズカッチャン、ナミュールという3頭の秋華賞好走馬を出しており、父ハービンジャー×母父キングカメハメハはモズカッチャンと同じ組み合わせ。His Majesty=Graustarkの5×7を持ち、牝馬三冠レースのなかで最も得意とする舞台ではないでしょうか。

・ステレンボッシュ
3代母ウインドインハーヘアにさかのぼる名牝系に属し、母ブルークランズは芝1800m以上で3勝を挙げた中距離馬。エピファネイア×ルーラーシップ×ダンスインザダークという芝中長距離血統でもあり、胴部に伸びがある馬体からも本質はオークス向きの中長距離馬です。2000mも守備範囲ですが、急かして良いタイプではないだけに、昨年の秋華賞同様にゆったりとした流れがベストではないでしょうか。

・クイーンズウォーク
母ウェイヴェルアベニューは2015年BCフィリー&メアスプリントなどを制した短距離馬で、本馬の半兄には2020年朝日杯FS勝ち馬のグレナディアガーズがいます。キズナ産駒も中距離馬体型で、ストライドが長いフットワークからも末脚は世代屈指の素質馬。北米血脈主体のスピード血統でもあり、広いコースの高速馬場がピッタリでしょう。

秋華賞の有力馬と血統,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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