【毎日王冠】近5年4勝の「3歳馬」が優勢 好相性のダービー組、シックスペンスに再上昇の可能性
勝木淳
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1番人気7勝、波乱なし
JRAが2025年開催日程を発表した。例年より早い公表だったが、大きな改編だったため、各方面に気をつかったのだろうか。大きな変更が色々あったが、今回の改編の軸はローテーションへの気配りにある。
レース後はトレセン近郊の牧場へ行き、消耗した体力を取り戻してから次へ向かう。そんなローテ―ションが常識になった昨今、中2、3週しかない前哨戦は時代に合わなくなった。直行ローテしかり、夏場の始動しかり、陣営の選択にはサラブレッドがベストパフォーマンスを発揮するためのサイクルが中心にある。
中3週の場合、レース後すぐに牧場に戻り、1週間ほど休み、またトレセンに戻るという形にならざるを得ない。中2週ではほぼ不可能に近い。前哨戦のメンバーがそろわず、その前哨戦を勝った馬も本番には出てこない。こうなるのは現代競馬では自然な流れだ。
毎日王冠も今年なら、本番まで中2週でサイクルが合わない。来年からは中3週になり、ここを使って、天皇賞(秋)に向かう馬は少し増えるだろう。フルゲートにならないGⅠ、少頭数の前哨戦は売上にも直結する。むろん、これもJRAの頭にある。
今年の有馬記念は12月22日だが、来年は12月28日が日曜日という特殊なカレンダーなので、開催が目一杯行われる。そのため来年の毎日王冠は10月5日と違和感は薄いが、今年に当てはめると9月29日である。9月の毎日王冠となると、オールカマーより先に行われていた1980年以来。新スケジュールになじむまで少々、時間がほしい。データは過去10年分を使用する。
かつてほどGⅠ級の出走馬が減ったとはいえ、1番人気【7-1-0-2】勝率70.0%、複勝率80.0%と強力だ。18~22年まで5連勝し、昨年はソングラインが2着だった。馬券を外したのは7年前までさかのぼる。3着内までの場合、5番人気【0-1-2-7】複勝率30.0%まで。
そもそも頭数が揃わない上に展開不問の東京芝1800mとあっては紛れなど波乱が生じる要素は極めて少ない。そして、近年の毎日王冠は天皇賞(秋)ではなく、マイルCSを目指す上級マイラーたちの出走が目立つ。これも波乱が少ない要因だろう。
古馬がマイラー中心の顔ぶれになったためか、3歳が【4-1-0-11】勝率25.0%、複勝率31.3%と強く、近5年で4勝を挙げる。クラシックを戦い、秋は中距離へ。そんなシフトチェンジが毎日王冠で結果を残す。今年はスプリングSを勝ったシックスペンスがいる。ラジオNIKKEI賞を勝ったオフトレイルも含め、有力だろう。
古馬勢は4歳【3-2-5-20】勝率10.0%、複勝率33.3%、5歳【3-4-4-23】勝率8.8%、複勝率32.4%の二世代が中心だ。
最有力はシックスペンス
古馬勢の顔ぶれでは5歳ローシャムパークが主役だろう。大阪杯2着、宝塚記念5着と春はGⅠで善戦し、さらに成長を感じさせた。昨年のオールカマーに続く重賞3勝目は近い。
前走GⅠ組は【5-6-4-31】勝率10.9%、複勝率32.6%。ここは前走安田記念【3-4-3-14】勝率12.5%、複勝率41.7%、ダービー【2-1-0-3】勝率33.3%、複勝率50.0%が中心。ダービー9番人気以内かつ9着以内だと【2-1-0-1】。20年2番人気10着サトノインプレッサを除くと、すべて連対を果たした。同馬は毎日杯1着、NHKマイルC13着、ダービー4着と春の強行軍が響いたようだ。
シックスペンスの春はスプリングSからダービーの2戦だけ。スプリングSでは好位から上がり33.3の末脚をみせた。ダービーの内容は少々物足りなかったが、秋を迎え、再上昇する可能性にかけたい。
ローシャムパークの前走宝塚記念は【0-1-1-6】複勝率25.0%とダービーに比べると落ちる。来年からは日程が改善させるが、6月末からの約3カ月では夏休みとしては短いのか。ただそれだけではないだろう。やはり宝塚記念は芝2200mで行われる特殊なレースだからでもある。
今年は京都だったが、基本は阪神芝2200mが舞台。東京で欠かせない瞬発力よりも、持続力勝負になりやすく、11秒台前半のラップをふたつ並べるのではなく、11秒台後半を3つ4つ並べないと太刀打ちできず、宝塚記念での経験は毎日王冠につながらない。ローシャムパークも戦歴的には中山、阪神、函館に集まっている。東京もむらさき賞勝ちがあるので、決して不得手ではない。だが、重賞、それも抜群に速い時計が出る開幕週でどうなるか。
前走GⅢ組【3-3-4-35】勝率6.7%、複勝率22.2%はさすがに格が落ちるので、好走が条件になる。1着【3-1-0-8】勝率25.0%、複勝率33.3%を筆頭に4着以内は【3-2-3-14】。あっても6~9着【0-1-1-7】複勝率22.2%まで。まずは好走馬から。オフトレイル、エルトンバローズ、ヨーホーレイク、ニシノスーベニアあたりが候補になる。
さらに距離もポイントだ。同じ1800mだと【3-2-1-10】勝率18.8%、複勝率37.5%だが、それ以外は【0-1-3-25】。1800mにこだわって出走すれば、活路を見出せる。ヨーホーレイクの勝った鳴尾記念は来年から12月に移り、1800mに変わるが、今年は2000m。狙うなら、オフトレイル、エルトンバローズ、ニシノスーベニアか。
この中で前走1着は、昨年の勝ち馬エルトンバローズと同じ道をたどるオフトレイルのみ。気になるのはエルトンバローズほどの先行力はなく、位置取りの優位性がない差しタイプだということ。33秒台の末脚を問われると、どうなるか。ローシャムパークやシックスペンスを差せる絵を描けるか。ここはよく検討しよう。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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