【スプリンターズS】セントウルS組は「着順」で明暗 連覇へ向け復調ムードのママコチャが最有力

勝木淳

過去10年のデータから見るスプリンターズS,ⒸSPAIA

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休み明けでも侮れない香港勢

秋のGⅠ開幕戦になったのは2000年代に入ってから。それまでは有馬記念の前週に行われ、GⅠ戦線のクライマックスに組み込まれていた。開幕戦に移った最初のスプリンターズSは16番人気ダイタクヤマトが勝ち、単勝25,750円の大波乱に終わった。

夏とつながったことで難しくなったともいわれたが、サマースプリントシリーズの創設など整備も進み、以後、10番人気以下の勝利は新潟開催の2014年を除けば、2010年の香港勢ウルトラファンタジー1頭にとどまる。

今年は2018年ラッキーバブルズ以来、6年ぶりに香港勢がやってくる。勝利すれば、上記ウルトラファンタジー、サイレントウィットネスに続く3勝目。外国馬は豪州テイクオーバーターゲットを含めるとこれまで3勝。シーズンが開幕したばかりの香港から参戦するビクターザウィナー、ムゲンはともに休み明け。だが、過去に勝った香港勢2頭も5、6月以来の休み明けだった。実績を考えても、決して軽く扱えない。

データは2014年新潟を含む過去10年分を使用する。

人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気は【4-0-2-4】勝率40.0%、複勝率60.0%とまずまず。3番人気以内8勝と近年はそうは荒れない。どうしたってダイタクヤマトのイメージを引きずるのはあまり古すぎると反省した。

10番人気以下の1勝は新潟のスプリンターズSを13番人気で勝ったスノードラゴンだけ。18年13番人気3着ラインスピリットなど人気薄の激走は過去にあったが、近年はさほど目立たない。サマースプリントシリーズで名をあげた馬、春の実績馬など人気に推されやすい馬たちが実力を出し切っている。

年齢別成績,ⒸSPAIA


3歳【1-2-1-16】勝率5.0%、複勝率20.0%、4歳【3-3-5-23】勝率8.8%、複勝率32.4%とスプリント戦らしく若い馬も結果を残すものの、6歳【3-0-2-26】勝率9.7%、複勝率16.1%とベテランも活躍する。スピード勝負だからと6歳以上を軽く扱うと痛い目に遭うレースだ。

主力はセントウルS組

迎え撃つ日本勢はサマースプリント王サトノレーヴ、セントウルSを勝った重賞4勝馬トウシンマカオ、前年覇者ママコチャ、悲願のGⅠ制覇をかけるナムラクレア、スピードなら負けない3歳ピューロマジックと多彩。秋のGⅠ開幕戦にふさわしい好カードだ。

前走クラス別成績,ⒸSPAIA


外国馬はこの10年【0-0-0-3】だが、正直、香港GⅠ級は残念ながら競走中止したラッキーバブルズを除くと、いない。ムゲンは今春チェアマンズスプリントプライズ3着、ビクターザウィナーは高松宮記念3着と実績がある。さすがにサイレントウィットネスとまではいわないが、ノーチャンスではないだろう。

日本馬は前走GⅠ【2-3-1-9】勝率13.3%、複勝率40.0%だが、安田記念【2-1-1-6】が強く、高松宮記念以来は【0-1-0-1】。だが、安田記念からの距離短縮馬は今年不在だ。

前走サマーシリーズ・レース別成績,ⒸSPAIA


中心はやはりサマーシリーズだ。まず前走セントウルS【4-3-1-44】勝率7.7%、複勝率15.4%に注目しよう。

中京のセントウルSは過去3回で【1-2-0-13】勝率6.3%、複勝率18.8%、阪神セントウルSが【3-1-1-31】勝率8.3%、複勝率13.9%なので、そこまで嫌うことはない。着順では、5着以内【4-3-1-22】、6着以下【0-0-0-22】と掲示板以内が条件になる。

今年のセントウルSは前後半600m33.6-34.1の平均ペース。ママコチャが積極的にレースを動かし、最後にトウシンマカオに差されたが、存在感を示した。休み明けでレースを支配した事実は重く、連覇へ向け復調を感じるレースだった。差したトウシンマカオの脚力を認めつつ、ママコチャを最有力にあげたい。

また狭いインを抜けたモズメイメイもシリーズ3、1、3着と完全に一時の不振は抜け出した。昨年は大敗したが、プロセスが違う。

前走キーンランドC・着順別成績,ⒸSPAIA


今年、大挙出走するのが前走キーンランドC【1-1-5-37】勝率2.3%、複勝率15.9%。一時期ほど勢いがない。やはり中4週で北海道から戻って仕上げるのは簡単ではない。

着順の内訳は1着【0-0-3-5】複勝率37.5%、2着【0-1-1-3】複勝率40.0%と好走も悪くないが、ここから勝ったのはキーンランドC8着だったスノードラゴン。傾向が読みにくく、1、2着サトノレーヴ、エイシンスポッターを上げつつ、5着ナムラクレアも捨てきれない。

今年のレースは前後半600m33.6-34.3と少しだけ前傾ラップ。粘るサトノレーヴ、その背後にいたナムラクレアも休み明けで、目標を見据えた仕上げだったなら悪くはない。なお、北九州記念は今年、CBC賞と入れ替わっているので、データとしては数字通り受けとれない。

過去10年のデータから見るスプリンターズS,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。

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