【クイーンS】武豊騎手の本気に期待、本命候補はボンドガール 穴馬コンクシェルは逃げ切る公算あり

山崎エリカ

2024年クイーンステークスのPP指数,ⒸSPAIA

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内と前が有利になる展開を想定

札幌はJRA全競馬場の中でもっともコーナーの距離が長いコース。コーナーで外を回ると距離損が大きくなる上に、札幌芝1800mは最初のコーナー(1角)までの距離が185mと極めて短く、外枠の馬はスタートも二の脚も速くないと初角の時点で外を回ることになるため、ロスなく立ち回れる内枠有利なコースとなっている。クイーンSも例に漏れず、過去10年で1~2番枠は【5-3-5-7】と好成績だ。

ただ札幌芝は開幕週の先週でも外差しが決まっていたように、例年よりもやや時計が掛かっており、極端に内が有利ではない。今回はコンクシェル、ウインピクシス、ラリュエルと逃げ馬が揃っており、展開次第では外差しが決まる可能性もある。

しかし、コンクシェルは横山武史騎手、ウインピクシスは横山和生騎手。この兄弟が競り合う展開はとてもイメージしにくい。ウインピクシスのほうがテンは速いが、内のコンクシェルを行かせてそこまでペースが上がらず、内と前が有利になるパターンと予想する。


能力値1~5位の紹介

2024年クイーンSのPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 ウンブライル】
2歳時に新馬戦、もみじSを連勝。3歳になってからは時計が掛かる馬場で行われたニュージーランドTとNHKマイルCで2着に善戦し、同世代の中では実力上位であることを示していた。そこから骨折休養後の復帰初戦となった今年2月の東京新聞杯では大幅馬体増で出走。レースは9番枠から立ち遅れて後方から中団中目まで挽回するロスや、3~4角で包まれて最後の直線で前が壁になった影響から、チグハグな競馬で能力を出し切れなかった。

結果的に始動戦で無理をしなかったこともあって、次走の阪神牝馬Sでは体調面が大幅に良化し、体も絞れて2着と好走。同レースでも9番枠からやや出遅れたが、ここでは無理なく中団の外目を追走した。直線序盤で追われると2列目付近まで上がり、ラスト1Fでもしぶとく伸びて先に抜け出したマスクトディーヴァに半馬身差まで迫った。

前走のヴィクトリアマイルは、前々走で自己最高指数を記録と能力を出し切っていたため、お釣りがなく6着に敗れた。しかし、5番枠からやや出遅れ、かなり押して好位の中目を取る競馬ながら大崩れしなかった。今回は立て直されての前進が期待できる。

序盤でやや置かれ気味になることや後半で長くいい脚を使うことから、距離が長くなるのも好ましい。内枠でもあり、時計の掛かる馬場でも実績があることから、雨が降ればよりいいだろう。逃げ馬が揃ったここでペースが上がり差し有利の展開になると見るなら本命候補。ただ、個人的には前有利と見ているだけに、3番手くらいの評価に止めたい。

【能力値2位 ドゥアイズ】
札幌芝1800mの新馬戦でデビューし、そこから阪神JF3着を含めてデビューから5戦までは全て3着以内に善戦。桜花賞でも5着と健闘したが、オークス、秋華賞と距離が延びると崩れた。古馬になってマイル路線を使われ始めて再浮上し、3走前の洛陽Sでは自己最高指数を記録した。

洛陽Sは15番枠から五分のスタート。そこから促されて好位の外目を追走していたが、前2頭が飛ばす展開になり、最終的には中団外目を追走した。3~4角で前2頭が苦しくなってペースダウンすると2列目以降が徐々に前との差を詰めた。本馬はそこでワンテンポ待ち、4角出口で仕掛けて外に誘導した。直線序盤で追われてしぶとく伸び、ラスト1Fで先頭に。そのまま抜け出すと、大外から猛追するトランキリテを振り切って半馬身差で勝利した。

前へ行った2頭がシンガリとブービーに敗れ、トランキリテが大外一気で2着に浮上したことからもわかるように、かなりのハイペース。また最後の直線で外に出せば出すほど伸びる時計の掛かる馬場状態だった。つまり、2、3着馬ほどではないが、展開に恵まれての勝利だった。

前走のヴィクトリアマイルでも4着に善戦しているが、ここもややハイペースで外差し有利の馬場状態。ラスト1F手前でウンブライルが強引に進路をこじ開けた影響で外に弾かれるロスはあったが、おおむね上手く立ち回れており、ワンパンチ不足を露呈してしまった。

1800mは守備範囲だが、内有利の札幌芝1800mで13番枠というのはいい条件ではない。かなりのスローペースの阪神牝馬Sでも出遅れて後方からの追走になりながら5着に善戦したように、展開に恵まれなくても掲示板入りを果たす可能性は高い。しかし、展開に恵まれたとしても武器がないので3着、良くて2着くらいで終わってしまうのではと見ている。

【能力値3位 モリアーナ】
昨年の紫苑S覇者。同レースでは2番枠からまずまずのスタートだったが、二の脚がひと息で最後方まで下げた。逃げ馬がペースを引き上げたことで隊列が縦長となり、道中では後方2列目付近。3角では前にいた馬たちが苦しくなり下がってきた。コーナーの途中で内目から中目へ縫うように上がったが、直線序盤でもまだ中団列。ラスト1Fでも先頭と6馬身ほどの差があったが、そこから一気に詰め切って半馬身差で差し切った。このラスト1Fの伸びは非凡で、かなりインパクトがあった。

昨年のNHKマイルC以来のマイル戦となった前々走の阪神牝馬Sでは3着。6番枠から出遅れ、押して行ったが最後方に下がってしまった。4角で前が壁になる場面もあったが、外の進路を確保して追われると、そこからしぶとく伸びて3列目付近まで上がった。ラスト1Fで2着ウンブライルとの差は詰め切れなかったが、シングザットソングとの3着争いはハナ差で制した。

前走のヴィクトリアマイルは13番枠から出遅れて7着に敗れた。着差は0.5秒差で前々走の阪神牝馬Sと比較すると、さほど指数を下げていないが、前走のような緩みない流れのマイル戦は追走に忙しく、前に取り付くことに苦労している。

今回は1800m戦。前走から1Fでも距離が長くなるのはプラス。ただポジションを取りに行った阪神JFでは着順を落としているように、後方で脚を温存してこそのタイプ。後方で脚をタメて、紫苑S時のように展開に恵まれればチャンスがある。

【能力値4位 アルジーヌ】
休養明けの前走で準オープンの博多Sを勝利した上がり馬。前走は12番枠から五分のスタートを決め、中団馬群の後方の外を追走した。向正面で中団馬群の前の外まで上がって3角へ。3~4角から進出して4頭分外から一気に先頭。直線序盤でしぶとく伸び、最後は1馬身3/4差で完勝した。

前走は馬体重24kg増が示すように、休養中に成長していたようでまさに一変といったレースぶり。勝ちに行く競馬での勝利であり、かなり強い内容だった。今回は休養明け好走後のダメージが懸念される一戦であるが、前走は前々走で減った馬体を戻した分もあるにせよ、緩さを残していたのも確か。体が絞れてまた前進という可能性もあるが、絞れていないようなら評価を下げたい。

【能力値5位 スタニングローズ】
中京芝1400mの新馬戦でデビューし、しばらくマイル路線を使われていたが、一昨年のオークスでは10番人気2着と好走。同年秋の始動戦、紫苑Sを勝利すると、秋華賞ではスターズオンアースの牝馬三冠を阻んで戴冠した。このように中距離路線で素質が開花した馬だ。

本馬が自己最高指数を記録したのは、一昨年の秋華賞。7番枠からまずまずのスタートだったが、コントロールして好位直後の中目を追走。道中で前にスペースを作り内と外を両睨みで進め、3~4角でそのスペースを詰めて4角では外を選択し直線へ。直線序盤で追い出されると先頭付近まで上がり、ラスト1Fで抜け出した。内からスターズオンアース、外からナミュールに迫られたが振り切って半馬身差で勝利した。

二年連続で出走したヴィクトリアマイルはどちらも見せ場がなかったが、長期休養明けの復帰戦となった前々走の大阪杯は意外と悪くない内容だった。

大阪杯は5番枠から外のベラジオオペラを制してハナを主張したことで、終始ベラジオオペラにプレッシャーをかけられる苦しい競馬で8着に敗れた。ただ、これまで逃げたことがない馬が逃げるというのは、例えスローペースでも厳しいもの。その上、スタミナが不足しがちな休養明けでは、仕方のない結果だったと言える。

今シーズンの調子は悪くなさそうだが、今回のメンバーで外目の枠、さらに斤量51~57kgと差があるなかで、もっとも重い斤量を背負うとなると楽に先行できない可能性が高い。その点は評価を下げるが、前走から1Fでも距離が長くなる点は好ましく、必ず買いたい馬ではある。


本命候補は最内枠で斤量51kgのボンドガール、穴馬はコンクシェル

【ボンドガール】
昨年6月の新馬戦で、同日の安田記念のシュネルマイスターの上がり3F32秒8、香港JCTに出走したのちの菊花賞馬ドゥレッツァの上がり3F32秒7には劣るが、同日の東京芝では堂々の3位となる33秒0を記録して快勝した。当時の2着馬はのちのオークス馬チェルヴィニア、3着以下にものちの活躍馬がズラリでこの勝利は強烈なインパクトがあった。

そこから休養明けで挑んだ昨年10月のサウジアラビアRCでは2着に敗れたが、同レースは前半3Fのペースが速く、3~4角でペースダウンする展開。それを3番枠から出遅れて、前半から掛かり気味になりながら中団中目まで押し上げたところを、3~4角では我慢させており、レースの流れと噛み合っていなかった。それでも2着と好走したのは実力の証だ。

そこから再始動戦となった前々走のニュージーランドTでも2着に敗退。当日は時計の掛かる外差し有利の馬場でレースも緩みなく流れたが、馬場の悪化した好位の内を立ち回ったのが敗因の一つ。新馬戦とは真逆のような流れであり、スタミナが不足しがちな長期休養明けでは苦しかっただろう。

前走のNHKマイルCでは本命に推したが、まさかの17着大敗。これは最後の直線で最内から先頭を狙ったが、アスコリピチェーノが寄せてくるというC.ルメール騎手の焦りが伝わってくるようなラフプレーがあったから。窮屈になり、ボンドガールの鞍上・武豊騎手が安全確保のために位置を下げ、そこから流して終わった。

前走、スムーズだったらどこまでやれていたかは不明だが、これまで決定的な負け方をしていないし、キャリア4戦と浅く、まだまだ伸びしろも見込める。何よりも前走の悔しさをバネに、55歳にして斤量51kgまで減量して挑む武豊騎手の本気に期待したい。

【コンクシェル】
昨夏の小倉芝1800m戦、不知火特別(2勝クラス)で逃げて5馬身差で圧勝し、重賞でも通用する指数を記録した馬。その後は不振だったが、立て直されて年明け2戦目の初音S(3勝クラス)を勝利すると、次走の中山牝馬Sで初重賞制覇を達成と再び軌道に乗ってきた。

自己最高指数を記録したのは初音Sでのこと。5番枠から好スタートを決め、押してハナを主張。外から競ってくるセンタースリールに抵抗しながら進めて、最終的には同馬を行かせて2番手で折り合った。3角ではセンタースリールと3馬身、4角では2馬身半ほどの差で直線へ。ラスト2Fで仕掛けて抜け出すと、ラスト1Fでそのまま突き抜けて3馬身差で完勝した。

本馬が初音Sで記録した指数は、当然ここでも通用するもの。ただこの手の馬は自分の競馬ができれば強いが、そうでなければ惨敗することが多い。昨年のローズS、秋華賞、そして今年初戦の節分Sは自分の競馬ができずに惨敗した。反対に初音Sは揉まれない競馬で3馬身差の圧勝。中山牝馬Sもゆったりと逃げて勝利した。

前走はマイル戦で楽に逃げられず能力を出し切れなかったが、今回は実績のある芝1800m戦。前走で速い流れを経験しているので、今回は自分の競馬に持ち込めそうだ。今回の鞍上は横山武史騎手。同型馬でテンの速いウインピクシスは、同騎手の兄、横山和生騎手が騎乗することもあり、無理に競ってはいかないだろう。それなら一発が期待できる。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ウンブライルの前走指数「-19」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.9秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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