【中京記念】エアグルーヴの曾孫ボーデンにかかる意外な「一族初」とは? 久々の重賞挑戦で戴冠なるか
逆瀬川龍之介
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6歳以上のエアグルーヴ牝系は意外にも……
名牝エアグルーヴを祖とする一族は21世紀の日本競馬をリードしている「名牝系」と断言していいだろう。エアグルーヴ自身は現役時代に19戦9勝。96年のオークスで母ダイナカールとの母仔制覇を達成。97年の天皇賞(秋)ではバブルガムフェローとの一騎打ちを制し、2つ目のGⅠタイトルを獲得した。そして同年には71年のトウメイ以来、26年ぶりとなる牝馬の年度代表馬に輝いている。まさに名牝のなかの名牝だ。
現役として超一流の成績を残したエアグルーヴだが、繁殖としても驚異的な活躍をみせた。初仔のアドマイヤグルーヴは03、04年のエリザベス女王杯の覇者。ルーラーシップは12年のクイーンエリザベスⅡ世Cを制し、種牡馬としても大成功している。また、フォゲッタブルとグルヴェイグも重賞を制覇。さらには孫のドゥラメンテ、曾孫のジュンライトボルトやローシャムパークなど、その血を引く馬の活躍は目覚ましい。
今週の中京記念には曾孫のボーデンがエントリーしている。父がハービンジャー、母がボージェスト、祖母がアドマイヤグルーヴ、叔父がドゥラメンテという血統。ここまで19戦4勝。デビュー2戦目の未勝利を圧勝し、続くスプリングSで3着となった時には「遅れてきたクラシック候補」と呼ばれたほど。しかし、3勝クラスで壁に当たった。
今年1月の節分Sで8着に敗れ、連敗は8に。そこで陣営は競走能力の向上を狙って去勢を敢行するとともに、上原佑紀厩舎への転厩を決断。これが奏功し、前走の錦Sにはマイナス18kgのシェイプアップされた馬体で出走して連敗を脱出。内容も後方からメンバー中最速となる上がり3F33秒3の末脚を繰り出し、鮮やかな差し切りを決めるという上々のものだった。休み休み使われてきた分、6歳といってもフレッシュ。この勝利をきっかけに重賞やオープンでも好勝負が期待される。
今回は意外な「一族初」がかかる一戦でもある。エアグルーヴの血を引く牝系は、自身も含めてJRAの重賞を29勝しているが、年齢別では2歳で0勝、3歳で10勝、4歳で13勝、5歳で6勝。6歳以上は20戦して、22年ダイヤモンドSで激走したランフォザローゼスの2着が最高着順。超良血ゆえ牡馬も牝馬も早めに〝第二の馬生〟に転じていることもあるが、6歳以上が重賞未勝利というのは意外な事実ではないだろうか。
幸か不幸か、セン馬となったボーデンは走り続けることで自らの存在価値を高めるしかない。ちなみにエアグルーヴ牝系のセン馬が重賞を勝ったこともない。ボーデン自身はここで初タイトルをつかみ取り、名牝系に新たな1ページを刻むことができるか。復活を遂げた良血馬の走りに注目したい。
《ライタープロフィール》
逆瀬川龍之介
国内の主要セール、GⅠのパドックはもちろん、時には海外のセリにも足を運ぶ馬体至上主義のライター。その相馬眼を頼りにする厩舎関係者、馬主は少なくない。一方、マニアック、かつ実用的なデータを駆使して、ネット媒体や雑誌などにも寄稿するなど、マルチな才能を持っている。
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