【プロキオンS】小倉開催2回は二桁人気が2頭食い込む大波乱 多様な条件のダート重賞を「記録」で振り返る

緒方きしん

プロキオンSに関する「記録」,ⒸSPAIA

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今年も荒れるか、小倉開催のプロキオンS

今週はプロキオンSが開催される。過去、中京や阪神のほか京都や小倉でも開催されたダート重賞。今年は3度目の小倉開催となる。波乱決着となるか、それとも順当決着となるか。今回はオープン時代含む1991年以降のプロキオンSを記録で振り返る。

小倉開催だった過去2回のプロキオンS(2021、22年)では、どちらも万馬券が出る波乱決着となっている。2021年は馬連が536.8倍、三連単で19441.4倍、2022年は馬連が296.3倍、三連単7196.5倍というもの。いずれも2着に14番人気、3着に12番人気が食い込んだことで波乱となった。

2021年まで14番人気以降の馬が馬券圏内にきたことはなかったプロキオンS。それもそのはずで、オープン時代含む、過去31回で1番人気馬が10勝、2番人気馬は7勝と人気サイドが強い傾向にある。歴代の勝ち馬をオッズが低い順に並べると、3位が2008年ヴァンクルタテヤマ(22.6倍)、2位が2011年シルクフォーチュン(44.8倍)、1位が2012年トシキャンディ(119.2倍)となっている。

トシキャンディが制した2012年は、プロキオンSが重賞になってから初めて中京開催に移行した年。1番人気は母が名牝ビリーヴで7歳にダート転向して以降4戦2勝と絶好調だったファリダット、2番人気は前年・京都開催のプロキオンSで勝利しフェブラリーSでも2着となっていたシルクフォーチュンなど、強豪が参戦していた。一方、牝馬のトシキャンディはこれが昇級2戦目&重賞初挑戦。出走16頭のなかで12番人気と、完全なる伏兵扱いであった。

トシキャンディは2009年にJRAデビュー。4戦するも馬券圏内に食い込むことはなく、佐賀へと移籍する。移籍前はダートを1戦して12着惨敗だったが、移籍後は2戦目で勝利をあげた。さらに4戦目からは連勝街道を突き進み、6連勝を達成。その後はJRAに再度移籍すると、初戦でJRA初勝利をあげた。そして中央復帰から約2年半が経過したプロキオンSで、見事に逃げ切り勝ちを果たしたのだった。

兵庫からきた名手がJRA重賞初制覇

昨年は594kgのドンフランキーが勝利したプロキオンS。当然ながら、プロキオンS勝ち馬の最重量であり、次点となるアルクトスの548kgの大差をつけている。ドンフランキーは前走から4kg減での出走だったというから驚きだ。ちなみに、過去にプロキオンSを制した馬のうち、500kg台は17頭で400kg台は14頭となっている。

歴代の勝ち馬で馬体重の軽い順に並べると、3位が2007年ワイルドワンダー(452kg)、2位が1991年ストロングパワー(444kg)、1位が2008年ヴァンクルタテヤマ(432kg)となる。ワイルドワンダーとストロングパワーは1番人気での勝利だったが、ヴァンクルタテヤマは7番人気での勝利だった。

ヴァンクルタテヤマはデビュー戦以降、一戦を除いてダートを走ってきた生粋のダート馬。特に得意としていたのがダート1000m戦であった。デビュー勝ちを含め、プロキオンS出走までにあげた5勝のうち4勝がダート1000m戦という極端なまでの戦績である。プロキオンS制覇後も一戦だけだが出走し、その北海道スプリントCでも勝利をあげた。

そんなダート1000mのスペシャリストであるヴァンクルタテヤマだが、馬体重はデビュー時が422kg、4歳夏には418kgだった小柄な馬体の持ち主。重賞初挑戦となったプロキオンSでは432kgでの出走であった。

ヴァンクルタテヤマの鞍上を務めたのは、赤木高太郎騎手。赤木騎手は兵庫競馬出身の名手で、中央に移籍後も2006年度フェアプレー賞を受賞するなど活躍した。地方時代から海外挑戦などを意欲的に行う積極派で、猛勉強をするなど努力家の一面も持つ騎手であった。そんな赤木騎手、唯一のJRA重賞制覇が、このプロキオンS。早めに抜け出すと、単勝1.7倍の圧倒的1番人気ワイルドワンダーの追撃を振り切った。

舞台も様々、距離も様々。多彩な条件で開催されドラマを生み出してきたプロキオンS。今年のドラマやいかに──。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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