【マーメイドS】実績に対し斤量恵まれたラヴェルとピンハイを推奨 内枠を生かせばチャンスあり

山崎エリカ

2024年マーメイドSのPP指数,ⒸSPAIA

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能力値1~5位の紹介

2024年マーメイドSのPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 コスタボニータ】
牝馬重賞の中距離路線で安定勢力として活躍し、前走の福島牝馬Sで重賞初制覇を達成した。前走は1番枠から好スタートを切り、外から前を主張する馬たちを行かせて、3列目の最内を楽に確保。道中のペースは遅かったが、前のスペースを維持して追走した。3~4角でそのスペースを潰して2列目に上がり、4角出口では逃げるウインピクシスの直後。直線序盤は進路を作り切れず、外のフィールシンパシーに先手をとられたが、ラスト1Fで外に誘導して追われると、同馬を捉え切ってクビ差で勝利した。

前走はスローペースで上がりの速い決着。1~4角の全てで最短距離を完璧に立ち回っており、直線序盤で仕掛けを待たされなければ、もっと着差が付いていた可能性が高い内容だった。

コスタボニータはゲートも二の脚も速い馬。昨年のクイーンSや3走前の愛知杯など、これまでも内枠を引いてしまえば高確率で好走している。レース巧者なので外枠が苦手というわけではないが、内枠を引くと枠の利を生かした乗り方で100点に近いレースができるということだ。よって、今回の9番枠は減点材料ということになるが、ここも崩れずには走れるだろう。

【能力値2位 タガノパッション】
3走前の愛知杯では2着と、上述のコスタボニータに先着した馬。その愛知杯は3番枠からやや出遅れ、そこから押して行ったがペースが速くてあまり進まず、下がって後方からの追走。1~2角で最内を通しロスなく進めて脚を温存して、向正面でペースが落ちると、徐々に中団まで取り付いていった。3~4角で苦しくなり下がってくる馬をかわして、4角で中目に誘導、コスタボニータの後ろから直線へ。序盤の伸びはやや地味だが、食らいついて4番手に上がる。ラスト1Fでしぶとく伸びて、先頭のミッキーゴージャスに半馬身差まで詰め寄って2着を確保した。

このレースは逃げ馬がぶっ飛ばして、前後半5F57秒4-60秒5とかなりのハイペース。本馬は開幕日の内枠で位置を取りに行かずに、1~4角の全てで内目を立ち回れていた。また前半で脚を温存したことで展開に恵まれ、また3角までにコスタボニータの後ろまで持っていったことでその後の進路取りもスムーズだった。

一方、前々走の中山牝馬Sは前後半4F49秒6-後半47秒5のスローペースでコンクシェルが逃げ切る展開。1番枠から中団内目を追走していたが、向正面で内の馬が下がってきた影響で後方に下がり、4角でも仕掛けを待たされて能力を出し切れず6着敗退だった。

前走の福島牝馬Sは11番枠から出遅れて後方からの追走。向正面でペースが落ち着いたところで、外から動いて行ったが、捲り失敗で3、4角と大外を回らされる形になった。福島競馬場はスパイラルカーブで3角が緩く、内の馬に抵抗されやすいので捲りに行くのはかなりのリスクだった。ここでは6着に敗退した。

今回は3走前のような競馬ができるかが焦点。最内を引いたベリーヴィーナスとアリスヴェリテが競り合ってペースが上がればチャンスがありそうだ。ベリーヴィーナスの陣営はアリスヴェリテにハナを譲らないとコメントしているだけに、タガノパッション向きの展開になる可能性もありそうだ。

【能力値3位 エーデルブルーメ】
未勝利から3勝クラスまで全て芝2000mで勝利した馬で、デビューからほとんど芝2000mを使われ続け、少しずつ地力をつけてきた。前走のダイワスカーレットCでは15番枠からやや出遅れたが、軽く促して中団の外まで挽回。前2頭が後続を引き離していく展開を、向正面半ばからじわっと進出して、3~4角の外から好位まで上がって直線へ。序盤で一気に伸びて先頭に立つと、食らいつくシェイクユアハートをラスト1Fで振り切り、1馬身半差で完勝した。

この前走はそれなりにレースが流れて、3~4角でペースダウンする展開。そこで外から仕掛けたことで、噛み合った感がある。それでも2着馬には1馬身半差、3着馬には3馬身半差をつけており、OP級の自己最高指数を記録した。ここでのダメージが残るかどうかは本馬の潜在能力次第だが、前走の強さから要警戒だ。

【能力値4位 アリスヴェリテ】
デビュー2戦目の野路菊Sで当時の牡馬世代トップ級だったファントムシーフの2着に入線し、3着馬に6馬身差を付けると、次走アルテミスSでは逃げてリバティアイランドとクビ差の3着に入線した実力馬。しかし、前で粘り込むレースができないと能力を出すことができず、その後は折り合う競馬で不振が続いた。

ところが、ここにきて減量騎手の柴田裕一郎騎手に乗り替わり、逃げにこだわる競馬ぶりで復活。3走前の1勝クラスでは陣営から「2番手で」という指示でも出ていたのか、6番枠から好スタートを切りながらも、序盤は最内からハナを主張した馬の2番手で折り合おうとしていた。しかし、1~2角で持ったまま先頭に立ち大逃げを打つと、そのまま5馬身差で完勝した。

前走の2勝クラスでは外枠から好スタートを切ったルソルティールが本馬より勢いがあったが、2番枠からかなり押してハナを主張。ここでもハナを取り切ると1~2角でグングン後続を引き離し、4角では約12馬身差、ラスト1Fでもまだ6馬身のリード。最後は2着馬カンティプールにクビ差まで迫られたが、3着馬には3馬身半差を付けての完勝だった。

このレースは超高速馬場ながら5F通過56秒8と、かなりハイペースの大逃げで最後までしぶとく踏ん張る形。かなり強い内容だった。今回は前走の疲れが懸念されるところではあるが、ハンデは50kgと恵まれた。この馬は速い上がりが使えないので、前半から掛かり気味に出して行く柴田裕一郎騎手と手が合うと見ているが、今回は乗り替わり。また、最内枠を引いた同型馬のベリーヴィーナス陣営の逃げ宣言により、競り合うことを躊躇してしまう可能性がある。しかし、自身の競馬ができれば面白く、押し切りか大失速かという極端な結果になりそうだ。

【能力値5位タイ ミッキーゴージャス】
昨秋の夕月特別(2勝クラス)から3連勝で重賞の愛知杯を優勝した馬。前々走の愛知杯では12番枠から五分のスタート。そこから内の馬の出方をうかがっていたが、内の馬が飛ばして行ったため無理なく中団やや後方の中目を追走。このレースは前半3F33秒5と速かったが4F目からペースダウンし、そこで好位の中目まで上がり3角では2列目の外、4角で勢いに乗せ先頭列で直線へ。序盤でややフラフラしながらもラスト1Fで先頭に立ち、外から追撃するタガノパッションを半馬身差で振り切って勝利した。

今年の愛知杯は1回小倉の開幕日に行われ、標準的な馬場で前後半5F57秒4-60秒5の激流だった。前半3F33秒5の区間で脚を温存し、ペースが緩んだ中盤で進出して行く形。勝ちに行く競馬をしていたが、展開が噛み合った面もあった。

前走の大阪杯は前後半5F60秒2-58秒0とかなりのスローペースで前有利の展開。1番枠からまずまずのスタートを切り、そこからは押して好位を狙いに行ったが、最終的に下がって中団の最内で包まれてしまい、後手後手になって14着に大敗した。ただ、向正面で押していっても進んでいかなかったあたり、調子落ちを感じさせる内容だった。

今回はそこから立て直されての一戦。川田騎手が乗らないことや、中間の追い切りからは完調手前を感じさせるが、相手弱化のここは前走よりも走れるだろう。また、今回はトップハンデの56.5kg。ゲートも二の脚も速くないので、内枠を生かせず、3~4角の外から進出するような形になりそうだが、前がペースを引き上げて展開に恵まれればチャンスはある。

【能力値5位タイ ベリーヴィーナス】
昨年3月、中京芝2000mの1勝クラスでは、向正面の中間で先頭に立つと、そのまま最後まで止まらず3馬身半差で圧勝。ここで2勝クラス勝ちレベルの指数を記録した。その後は脚をタメる競馬で徐々に成績が落ちていったが、前々走の四国新聞杯(2勝クラスで)は五分のスタートながら、押して出鞭も入れて逃げる競馬。すると、後続に1馬身3/4差をつけて快勝し、つづく前走の下鴨S(3勝クラス)も逃げ切った。

前走は6番枠からまずまずのスタートだったが、そこから押してハナを主張し主導権を握った。単騎で逃げて向正面で2番手に4馬身、3番手とは8馬身ほど差を広げていたが、3角で詰め寄られて1馬身差に。4角ではペースを引き上げて3/4差ほどのリードで直線へ。ラスト1Fでは内のシェイクユアハートに半馬身差まで詰め寄られたが、しぶとく粘って同馬を振り切り、外から迫るショウナンアデイブの追撃も半馬身差で振り切った。

ベリーヴィーナスは前走もバテそうでバテないレースをしているようにスタミナ特化型で、脚をタメる競馬では能力を出し切れない。馬場が悪化して逃げた際に、最も能力を出し切れるタイプだ。

今回は同型のアリスヴェリテの存在が厄介。現在の京都芝はかなり馬場が良いので、能力を出し切るためにはかなりのオーバーペースを刻む必要がある。自分の競馬ができれば、今回のメンバーでも通用するが、乗り方は簡単ではなさそうだ。


実績に対し斤量恵まれたラヴェルとピンハイに注目

【ラヴェル】
小倉芝1800mの2歳新馬戦で派手に出遅れながらも、位置取りを最低限リカバリーすると、ラスト2Fを11秒7-11秒3の好ラップで勝利した素質馬。その次走のアルテミスSでも大外10番枠から出遅れて後方からの追走になったが、3~4角でリバティアイランドに蓋をしながら先に動いて、最後の直線で一気の伸びを見せた。リバティアイランドを完封したあの走りは素晴らしいものだった。

その後、オークスでは1番枠からまずまずのスタートを決めて、2列目の最内を追走。3~4角でも最短距離を通してラスト2Fでは一旦抜け出し、あわやの場面を作って4着に善戦。この走りからも同世代の牝馬としては潜在能力がトップクラスと言えるだろう。

3歳秋以降は伸び悩んでいたが、立て直された前々走の京都記念では5着と復調の兆しを見せた。同レースでは6番枠から五分のスタートを切り、そこからコントロールしながら中団外目を追走。道中は我慢させ、3角手前で外に誘導してじわっと押し上げていく。3~4角ではかなりロスを作りながら仕掛けを待って、好位の直後から直線へ。序盤で追われるとそれなりに伸びたが、ラスト1Fではキレがなくなってしまった。結果、3着争いに迫る5着だった。

このレースでは、かなり折り合い重視で乗られており、3、4角も大外を回るロスがあった。突き詰めると距離が長かったのだろうが、このロスがたたって最後の直線ではラヴェルらしいキレを見せることが出来なかった。

ただ、クビ差の4着だったシュヴァリエローズは、2走後の目黒記念で2着に好走しているように、ここで通用する実力はあるはず。また、前走の中山牝馬Sは前有利の展開を16番枠から好位の外で追走していたが、雁行状態のため中団中目へと一列下げた結果、4角で出口が狭くなって押し込められるロスがあり、能力を出し切れなかった。

今回はハンデが54kgと魅力的で枠番も5番枠。内で脚をタメて持ち味の瞬発力を生かせば、京都記念時の指数にプラスαを期待できそう。チャンスは十分あると見る。

【ピンハイ】
デビュー2戦目のチューリップ賞でいきなり2着に食い込いこむ離れ業を演じた素質馬。その後は期待されたほど走っているわけではないが、昨秋は古馬OPのカシオペアSで2着、続く中日新聞杯で3着に善戦。

3走前の中日新聞杯では15番枠から出遅れて後方からの追走になったが、そこから中団の外まで進出。道中もスローの団子気味で内には入れられず、中団の外々を追走した。3~4角ではロスを顧みず、外から勢いに乗せて直線へ。序盤でじわじわ伸びて好位まで上がると、ラスト1Fで外からハヤヤッコにはかわされたが、3/4+クビ差で3着となった。

中日新聞杯は後ろの位置になって早仕掛けをしたため、最後に伸びあぐねたが、無理なく追走すれば芝2000mでも問題ないはずだ。また、前走の都大路Sでは4着に敗れているが、このレースでは超絶高速馬場かつスローペースで、上がりが極端に速い決着となり決め手を欠いて負けたものだ。

思い返せばデビュー2戦目のチューリップ賞も、例年と比べると緩みなく流れており、1番枠を利して中団の最内を立ち回ったものだった。ピンハイが好走している時は、ほとんど平均ペースよりも流れが速いレースだ。今回ベリーヴィーナスとアリスヴェリテが競り合ってペースを引き上げれば、3番枠を利した立ち回りでチャンスがあると見る。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)コスタボニータの前走指数「-20」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.8秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。


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