【皐月賞】GⅠでのペースアップに対応できるかがカギ 血統ではNureyevやSadler's Wellsに注目

坂上明大

皐月賞の有力血統,ⒸSPAIA

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傾向解説

牡馬クラシック第1戦の皐月賞。中山芝2000mという紛れが多いコースで行われ、求められる適性も日本ダービーとは大きく異なるレースです。さらに、現3歳牡馬で重賞2勝以上を挙げるのはジャンタルマンタルのみという混戦模様で、ホープフルSは牝馬のレガレイラが勝利。条件によって着順が入れ替わっていることから、適性面の評価がより重要な一戦となりそうです。本記事では血統面を中心に、皐月賞のレース傾向を整理していきます。

まず紹介したいポイントは前哨戦と皐月賞での前半1000mのペース差。「多頭数でのハイペースが多い皐月賞」と「少頭数でのスローペースが多い前哨戦」では求められる適性が大きく異なります。今年は比較的タイトな前哨戦が多かったものの、前半1000m60秒を切ったのは毎日杯のみ。前走で逃げた馬が4頭もいる顔ぶれを見ても、本番での大幅なペースアップに対応できるかが大きな課題となりそうです。

<各レースの前半1000m通過タイム>
ホープフルS:60.0秒
京成杯:60.7秒
若駒S:61.7秒
きさらぎ賞:60.2秒
共同通信杯:62.7秒
すみれS:60.2秒
弥生賞:60.4秒
若葉S:61.0秒
スプリングS:63.1秒
毎日杯:59.6秒
皐月賞(過去10年平均):59.4秒

上記の理由から①芝1600~1800mでの勝利実績、あるいは②前走初角3番手以内の先行実績というペース経験は大きなアドバンテージとなります。①については多くの馬が該当するパターンではありますが、過去10年の連対馬はすべて該当しており、②についても非常に高い回収率を記録しています。

芝1600~1800mでの勝利実績馬の成績(9番人気以内),ⒸSPAIA

前走初角3番手以内の成績(9番人気以内),ⒸSPAIA


<芝1600~1800mでの勝利実績馬の成績(9番人気以内・過去10年)>
該当馬【10-10-8-43】勝率14.1%/連対率28.2%/複勝率39.4%/単回収率140%/複回収率112%

<前走初角3番手以内の成績(9番人気以内・過去10年)>
3番手以内【6-5-5-13】勝率20.7%/連対率37.9%/複勝率55.2%/単回収率193%/複回収率176%

血統面ではノーザンテーストの血に注目。同馬は1982~88、90~92年と10度の日本リーディングサイアーに輝いた大種牡馬で、Hyperionの4×3(Lady Angelaの3×2)などから優れた底力を子孫に伝えています。また、道悪適性も非常に高く、荒れた馬場になりやすい皐月賞の舞台はピッタリ。昨年もノーザンテースト内包馬のワンツー決着となっており、今年も大注目の血統です。

ノーザンテースト内包馬の成績(9番人気以内),ⒸSPAIA


<ノーザンテースト内包馬の成績(9番人気以内・過去10年)>
該当馬【4-4-3-15】勝率15.4%/連対率30.8%/複勝率42.3%/単回収率128%/複回収率150%

他では、中山芝2000m重賞でお馴染みのNureyev≒Sadler's Wellsの活躍も目立ちます。両血脈は内回りコースをうまく立ち回る機動力とタフな競馬でもへこたれない底力を兼ね備えており、日本の主流血脈に足りない資質を補強してくれるスパイスとなっています。特にSadler's Wellsの血は道悪適性も非常に高いため、重馬場の昨年は4頭もの該当馬が掲示板内に好走しました。

Nureyev≒Sadler’s Wells内包馬の成績(9番人気以内),ⒸSPAIA


<Nureyev≒Sadler's Wells内包馬の成績(9番人気以内・過去10年)>
Nureyev【3-6-2-22】勝率9.1%/連対率27.3%/複勝率33.3%/単回収率46%/複回収率106%
Sadler's Wells【4-1-1-10】勝率25.0%/連対率31.3%/複勝率37.5%/単回収率259%/複回収率105%


血統解説

・シンエンペラー
母Starlet's Sisterは北米GⅠ・7勝の名牝Sistercharlieと2020年凱旋門賞馬Sottsassなどを出した優秀な繁殖牝馬で、本馬はSottsassの全弟という良血。母が持つMiswakiの3×3や父Siyouniから受け継ぐスピードが本馬の持ち味で、日本での瞬発力勝負にも一定以上の適性を示しています。とはいえ、Nureyev≒Sadler's Wellsの4×3などを持っていることから、日本では東京よりも中山向きの馬力型。ペース経験のアドバンテージも大きく、減点材料が非常に少ない一頭です。

・ジャンタルマンタル
母インディアマントゥアナは18年レッドカーペットH(北米GⅢ、芝11F)の勝ち馬で、父パレスマリス(13年ベルモントS)はアイアンバローズやジャスティンパレスの半兄。距離適性の幅も広く、手先が強いためダート適性も高そうな北米血統馬です。ただ、道悪馬場は苦にしないものの、相対的にはスピードを生かせる良馬場向き。緩い馬場での開催が続いていることから馬場状態には注意したいところです。

・レガレイラ
3代母ウインドインハーヘアに遡る名牝系に属し、母母ランズエッジは名馬ディープインパクトの3/4同血の妹。さらに、母ロカはアーバンシックの母であるエッジースタイルの全姉であり、本馬はアーバンシックと同じスワーヴリチャードの産駒でもあります。つまり、本馬とアーバンシックは血統構成がほとんど同じ。両馬とも不器用ではあるものの末脚の爆発力が素晴らしい素質馬たちです。ただ、中山芝2000mでは乗り難しいことは間違いなく、主戦騎手であるC.ルメール騎手からの乗り替わりも割引が必要でしょう。


2024年皐月賞に出走する有力馬の血統と評価,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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