【桜花賞】「馬体重460kg以上」の「父サンデー系」に注目 クイーンズウォークら有力馬を血統面から解説
坂上明大
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傾向解説
牝馬クラシック第1戦の桜花賞。現3歳牝馬で重賞2勝以上しているのはアスコリピチェーノのみという混戦模様。レース毎に着順が入れ替わっているだけに、今年は適性や状態面の評価がより重要な一戦となりそうです。本記事では血統面を中心に、桜花賞のレース傾向を整理していきます。
まず紹介したいデータは前走レース別成績。2~3歳GⅠは1600~3000mで行われるため、前哨戦なども1600m以上のレースがハイレベルになりやすいです。特に桜花賞までの牝馬路線についてはほぼ例外なくマイル路線が最も強い傾向にあります。同コースで行われる阪神JFやチューリップ賞はもちろんのこと、シンザン記念やクイーンCなどハイレベルなマイル路線で戦ってきた馬を中心に考えるのが桜花賞予想におけるセオリーではないでしょうか。
<前走マイルのレース別成績(過去10年、主要レースのみ)>
チューリップ賞【3-8-6-30】勝率6.4%/連対率23.4%/複勝率36.2%/単回収率34%/複回収率111%
阪神JF【2-2-0-5】勝率22.2%/連対率44.4%/複勝率44.4%/単回収率57%/複回収率61%
クイーンC【1-0-1-18】勝率5.0%/連対率5.0%/複勝率10.0%/単回収率72%/複回収率28%
シンザン記念【1-0-0-2】勝率33.3%/連対率33.3%/複勝率33.3%/単回収率130%/複回収率46%
朝日杯FS【1-0-0-1】勝率50.0%/連対率50.0%/複勝率50.0%/単回収率170%/複回収率85%
エルフィンS【1-0-0-3】勝率25.0%/連対率25.0%/複勝率25.0%/単回収率105%/複回収率47%
フェアリーS【0-0-1-4】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率20.0%/単回収率0%/複回収率70%
また、馬体重別成績にも明確な傾向あり。芝1600mというスピードが求められる条件から筋肉量が多いことは大きなアドバンテージで、成長スピードという点においても馬体重は重要な指標となっています。特に過去10年の勝ち馬は全10頭が馬体重460キロ以上で、逆に馬体重459キロ以下の馬は14年オークスを勝ったヌーヴォレコルトや21年秋華賞馬のアカイトリノムスメのように、オークスや秋華賞向きとみることもできるでしょう。
<馬体重別成績(過去10年)>
~419kg【0-1-1-14】勝率0.0%/連対率6.3%/複勝率12.5%/単回収率0%/複回収率56%
420~439kg【0-2-3-34】勝率0.0%/連対率5.1%/複勝率12.8%/単回収率0%/複回収率45%
440~459kg【0-2-1-47】勝率0.0%/連対率4.0%/複勝率6.0%/単回収率0%/複回収率29%
460~479kg【9-2-2-37】勝率18.0%/連対率22.0%/複勝率26.0%/単回収率166%/複回収率56%
480~499kg【1-3-3-10】勝率5.9%/連対率23.5%/複勝率41.2%/単回収率29%/複回収率114%
500kg~【0-0-0-6】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回収率0%/複回収率0%
血統面では、クラシックレースらしくディープインパクトを中心としたサンデーサイレンス系、キングカメハメハを中心としたKingmambo系という日本の主流系統が中心となっています。ただ、サンデーサイレンス系、特にディープインパクト系は小柄な中長距離馬も多いため、前述の馬体重460キロ以上というボーダーはクリアしておきたいところです。
<父系別成績(馬体重460kg以上・過去10年)>
サンデーサイレンス系【4-5-2-26】勝率10.8%/連対率24.3%/複勝率29.7%/単回収率136%/複回収率80%
Kingmambo系【4-0-1-7】勝率33.3%/連対率33.3%/複勝率41.7%/単回収率251%/複回収率84%
血統解説
・アスコリピチェーノ
母はデインヒル系Danehill Dancer産駒で、繁殖牝馬としてはアスコルターレ(21年マーガレットS)などスピードと早熟性に優れた産駒を多く輩出しています。
阪神JFでは「ダイワメジャーを父に配しており、まさに2歳GⅠ向きの早熟型。兄姉と比べて気性的に落ち着きがある点も評価が高く、血統面からは最上位の評価を与えたい一頭」と評価しました。この完成度の高さはもちろん今回も生きますが、4カ月弱の月日が経った桜花賞ではさらなる成長力とスケールの大きさが求められます。大崩れは考えづらいですが、阪神JF下位組や他路線組の逆転があっても何ら驚けません。
・クイーンズウォーク
母ウェイヴェルアベニューは15年BCフィリー&メアスプリントなどを制した短距離馬で、本馬の半兄には20年朝日杯FS勝ち馬グレナディアガーズがいます。ディープインパクト系キズナ産駒の本馬は馬格にも恵まれ、前走クイーンC時の馬体重は516キロ。昨年優勝馬リバティアイランドと同じ川田将雅騎手×中内田充正厩舎×サンデーレーシングでもあり、大きな爆発力を秘めた素質馬といえるでしょう。
・ステレンボッシュ
3代母ウインドインハーヘアに遡る名牝系に属し、母ブルークランズは芝1800m以上で3勝をあげた中距離馬。エピファネイア×ルーラーシップ×ダンスインザダークという芝中長距離血統でもあり、胴伸びの馬体からも本質はオークス向きの中長距離馬です。ただ、それでいて阪神JFではアスコリピチェーノの2着と好走し、成長力を加味すれば逆転の可能性は十分。今回だけではなく、今後の飛躍にも大いに期待したい良血馬です。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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