【高松宮記念】最も馬券圏内に入ったのは福永祐一元騎手 春の電撃6ハロン戦を「記録」で振り返る

緒方きしん

高松宮記念、思い出の記録,ⒸSPAIA

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上がり32秒台を唯一記録したスズカフェニックス

桜の季節となり、いよいよGⅠ戦線が本格化。今週は快速自慢が集う一戦、高松宮記念が開催される。

元々は『高松宮杯』として芝2000m戦だったが、1996年に1200mのGⅠになり、98年からは現在の『高松宮記念』の名称で開催されている。2000m戦時代にもハイセイコーやトウショウボーイ、オグリキャップやナイスネイチャといった名馬が勝利。現行条件となってからもキングヘイローやローレルゲレイロ、カレンチャンやロードカナロアといった名スプリンターを送り出している。今回はそんな『高松宮記念』における1998年以降の記録を振り返る。

勝ち馬として最も速い上がり3Fはファイングレイン(08年)とロードカナロア(13年)が繰り出した33.2。ファイングレインはこれがGⅠ初制覇。前年末にマイルのオープン競走で9着に敗れていたが、年明けにスプリント戦の淀短距離Sで勝利すると、続くシルクロードSも勝利し重賞馬の仲間入り。そして勢いそのままに挑んだのが08年の高松宮記念だった。

ロードカナロアは前年3着の雪辱を晴らす勝利で、スプリンターズS→香港スプリント→阪急杯に続き4連勝を達成した。上がり最速での勝利は前年1月のシルクロードS以来。この時点で3つのスプリントGⅠを制したロードカナロアは次走でマイルの安田記念に挑戦し勝利、引退後の種牡馬としての可能性を広げた。

前記2頭の上がり3Fは『勝ち馬として最速タイ』であって、歴代最速ではない。過去、上がり33.2を出した馬が7頭、33.1を出した馬は4頭いるものの、上がり32秒台を出した馬はただ1頭。ファイングレインが勝利した08年に1番人気3着となったスズカフェニックス、上がりは32.7である。

スズカフェニックスは、デビュー後3戦をダートで走り、3戦目のダ1200mで初勝利。その次走で芝2000mとガラリと条件を変え、そこでも勝利すると芝路線へ完全にシフトした。デビュー戦で9着に大敗して以降は大崩れすることなく順調に勝ち星を積み重ね、4歳9月に重賞初挑戦(チャレンジC4着)。翌年1月には東京新聞杯で重賞を初制覇すると、阪急杯の3着を挟んだのち07年の高松宮記念を制してGⅠ馬となった。

その後しばらく低迷しスプリンターズSでは9着に敗れたものの、連覇がかかった08年高松宮記念では、前年のスプリンターズS勝ち馬アストンマーチャンが急性心不全でこの世を去ったこともあって1番人気に推された。結果はファイングレイン、キンシャサノキセキの5歳馬ワンツーを見届ける3着ではあったが、ローレルゲレイロやスーパーホーネットといった他の人気馬にはしっかりと先着し、地力の高さを見せた。


福永祐一騎手が得意とした短距離王決定戦

スズカフェニックスの鞍上は福永祐一騎手(現・調教師)。同騎手は取り消しになったブラックタイキスを除き、高松宮記念に20回挑戦して3勝2着3回3着3回と9回馬券圏内に食い込んでいる。勝ち数はトップタイ、馬券圏内回数としては2位タイの岩田康誠騎手、四位洋文騎手の6回をおさえトップと抜群の記録を残した。1番人気になった回数でも、M.デムーロ騎手、岩田康騎手、武豊騎手、蛯名正義騎手の3回を上まわる4回(スズカフェニックス、ロードカナロア、ビッグアーサー、タワーオブロンドン)とリードし、ファンからの信頼が伺える。

今年は外国馬が参戦を予定している点にも注目したい。過去には4頭の外国馬が高松宮記念に出走しており、03年にはディスタービングザピース、エコーエディと2頭が出走するもそれぞれ13、17着と不発。しかし15年に前年の香港スプリント覇者エアロヴェロシティが参戦すると、好位からレースを進めて完勝している。エアロヴェロシティは16キロ減での出走だったが、これは歴代勝ち馬の中で前走からの増減が最も大きかった。さらに、馬体重524キロは歴代勝ち馬で最重量。雄大な馬体が印象に残る名馬だった。

過去の勝ち馬26頭のうち、馬体増で勝利したのはスズカフェニックス(2キロ増)、ダノンスマッシュ(3キロ増)だけ。基本的には馬体減で勝利した馬が多い。ナランフレグは12キロ減、キンシャサノキセキは10キロ減で勝利をあげている。その他、最も単勝人気が低かった勝ち馬は、昨年のファストフォースで12番人気。こちらも前走から8キロ減と絞っての出走だった。

いよいよ始まるGⅠ戦線、極限まで仕上げられたスプリンターたちの美しき馬体にも注目していただきたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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