【高松宮記念】注目は近5年で4勝をあげるStorm Cat内包馬 好配合のナムラクレアが昨年のリベンジへ

坂上明大

高松宮記念の傾向と血統,ⒸSPAIA

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傾向解説

春の芝スプリント最強馬決定戦の高松宮記念。昨年の同レース以降に芝1200m重賞を2勝以上したのはジャスパークローネとトウシンマカオのみと芝スプリント路線は大混戦です。血統面を中心に高松宮記念で求められる適性を整理しつつ、新王者に最も近い存在を探っていきたいと思います。

まず紹介したいデータは社台系生産馬の成績。社台グループといえば日本競馬を牽引する一大グループであり、特にノーザンファームにおいては過去10年の日本ダービーで7勝を挙げるという素晴らしい成績を残しています。しかし、そんな社台グループも高松宮記念では過去10年で未勝利。日本の主流条件である芝中距離で強い馬をつくるのが社台グループの生産方針であり、芝スプリント路線ではその勢いが鈍るのも仕方ないことといえるでしょう。

社台グループ生産馬(過去10年),ⒸSPAIA


<社台グループ生産馬(過去10年)>
ノーザンF【0-3-2-26】勝率0%/連対率9.7%/複勝率16.1%/単回収率0%/複回収率29%
社台F【0-0-3-13】勝率0%/連対率0%/複勝率18.8%/単回収率0%/複回収率105%
社台C白老F【0-0-0-4】勝率0%/連対率0%/複勝率0%/単回収率0%/複回収率0%

血統面においても社台グループを中心としたリーディング上位種牡馬の苦戦傾向が目立ち、特に1990年代以降の日本競馬の血統地図をたった一頭で塗り替えた大種牡馬サンデーサイレンスの血はむしろ持たない方がいいほど。父系での勝利もダイワメジャー産駒(14年コパノリチャード)とゴールドアリュール産駒(22年ナランフレグ)の2勝のみで、どちらも道悪馬場という点もポイント。日本の主流とはかけ離れた適性が求められるレースであることは間違いありません。

父or母父サンデーサイレンス系(過去10年),ⒸSPAIA


<父or母父サンデーサイレンス系(過去10年)>
該当馬【2-7-7-89】勝率1.9%/連対率8.6%/複勝率15.2%/単回収率33%/複回収率46%
非該当馬【8-3-3-61】勝率10.7%/連対率14.7%/複勝率18.7%/単回収率137%/複回収率227%

反対に注目血統に挙げたいのはStorm Catフォーティナイナーなどのダッシュ力に優れた北米血脈。特にStorm Cat内包馬は2019~21年と連続で勝ち馬を出しており(20年は繰り上がり1着)、昨年も12番人気のファストフォースが大金星を挙げています。さらに、馬券圏外でも14年15番人気4着エーシントップや16年16番人気4着アクティブミノル、20年12番人気5着シヴァージなど期待以上の走りを見せる馬も多数。爆発力にも期待が持てる大注目の血統といえるでしょう。

血統別成績(過去10年),ⒸSPAIA


<血統別成績(過去10年)>
Storm Cat【4-2-3-32】勝率9.8%/連対率14.6%/複勝率22.0%/単回収率191%/複回収率185%
フォーティナイナー【2-2-1-11】勝率12.5%/連対率25.0%/複勝率31.3%/単回収率88%/複回収率208%


血統解説

・ナムラクレア
3代母Coup de Genie(93年モルニ賞、サラマンドル賞)はMachiavellian(89年モルニ賞、サラマンドル賞)の全妹という良血。Northern Dancerの血量が多い反面、母母Fountain of Peaceが同血脈を持たない配合のバランスも素晴らしい馬です。サンデーサイレンス系ミッキーアイル産駒ではありますが、本馬は母父Storm Catの影響が強い馬体を有し、スプリントGⅠを獲れる資質を十分に秘めています。

・トウシンマカオ
母ユキノマーメイドはスペシャルウィーク産駒の芝中距離馬で、現役時代には芝1800m以上で4勝。ビッグアーサー産駒の本馬は芝短距離路線で活躍していますが、スプリンターとしては四肢が長く、差し脚質に出ているのは母方の影響を受け継いだ証です。器用さが求められるスプリンターズSよりは高松宮記念向きではありますが、血統傾向からは推奨しづらい一頭です。

・ママコチャ
母母シラユキヒメに遡る白毛一族で、母ブチコはダート1800mで4勝を挙げたダート中距離馬。本馬の父クロフネはカレンチャンという高松宮記念勝ち馬を出しており、シラユキヒメ牝系のクロフネ産駒にはマイルGⅠ・3勝馬ソダシがいます。マイラー寄りの配合形で、スプリンターズSは持ち味の機動力と川田将雅騎手の好騎乗が光った一戦。大崩れは考えづらいですが、長い直線で甘さを見せる可能性はあります。

2024年高松宮記念に出走する注目馬の血統と評価,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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