【ジャパンC】本命は3歳牝馬で斤量利あるリバティアイランド 一角崩しの最有力候補はドウデュース

山崎エリカ

2023年ジャパンカップのPP指数,ⒸSPAIA

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前へ行ってこその強豪2頭が出走

東京芝2400mは日本を代表する大レースが行われる舞台であり、コースに癖がない。当レースでは、2020年のようにキセキの暴走逃げで5F通過57秒9まで上がったこともあれば、21年のように同62秒2の極端なスローペースになったこともある。

今回は前に行ってこそのパンサラッサとタイトルホルダーが出走。パンサラッサはスタートも二の脚も速くはないが、アメリカンタイプの逃げ馬なので何が何でもハナを切りにいくだろう。

この2頭の直接対決となった一昨年の有馬記念では、パンサラッサが内からハナを主張して逃げる展開になったが、前半に坂のあるコースでそこまでペースは上がらなかった。ただ、今回は前半がやや下り坂の東京芝2400m。20年の暴走レベルのペースまで上がる可能性がある。

東京芝コースは見た目には馬場の内側が傷んでいるが、路盤が硬いため、秋の東京17日間連続開催の最終週であっても、超高速馬場が維持され、内でも残れる。3分所(中目)が有利で、外よりも内が伸びる状態だけに、ハイペースでも強い馬なら前から押し切れる。しかし、2020年のキセキが刻んだような暴走レベルのペースになることも見据えて、ここは末脚型の馬を中心に予想を組み立てたい。


能力値1~5位の紹介

2023年ジャパンCのPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 タイトルホルダー】
一昨年の菊花賞馬であり、昨春は天皇賞(春)と宝塚記念を連勝した。その天皇賞(春)では16番枠から好スタートを決めて、押して内に切れ込みながらハナを主張し、淡々とした逃げ。レース前日の夜中からの雨で高速馬場とは言えない状況だったが、5F通過60秒5の芝2000m戦かのようなハイペースで進み、1周目の4角では2番手クレッシェンドラヴに6馬身ほどの差をつけていた。

スタンド前から息を入れ、1~2角でさらにペースダウン。2角ではクレッシェンドラヴとの差は1馬身に詰まったが、向正面から再びペースをじわじわ引き上げた。2周目の4角では2番手のテーオーロイヤルが進出。ここで軽く仕掛け、同馬を振り切った。その後、3~4角の外から仕掛けて上がってきたディープボンドに7馬身差をつけて圧勝した。

本馬は昨春の天皇賞で自己最高指数を記録しているようにステイヤー。3走前の極悪馬場の日経賞でも迷いなくハナを主張して逃げ、4角で後続馬に約2馬身つけていた差を、直線で8馬身差まで広げて独走した。このことから中距離も悪くはないが、勝ち負けまでとなると馬場がもっと悪化して、スタミナが生かされる流れになってほしいところではある。

休養明けの前走オールカマーは、高指数を記録した昨春の天皇賞や今年の日経賞とは異なり、超スローペースでの逃げ。後半勝負に持ち込んだことで、決め手ある馬たちと接戦となり2着だったが、そういう競馬でも昨年の日経賞で優勝していることを考えると物足りない。好走条件が揃った時に発揮する能力はイクイノックス以上だが、好走条件が揃っていない今回は強く推せない。

【能力値2位 イクイノックス】
昨秋の天皇賞(秋)でGⅠ初制覇を達成し、そこからGⅠを連勝している現役最強馬。前走の天皇賞(秋)では7番枠からまずまずのスタートを切って、そこからコントロールし、外のジャックドールを行かせて上手く3番手の内に収める完璧な入り方。道中は2番手ガイアフォースから2馬身半くらい後ろにつけていた。3~4角では最短距離を通して直線序盤でガイアフォースの外に出ると、馬なりで上がり、ラスト2Fで堂々と先頭に立った。ラスト1Fで外から追い込み馬に強襲されたが、それでも2馬身半差で完勝した。

前走は速い流れに積極的に乗って、自己最高指数を記録と文句なしの勝ちっぷり。ただし、世界レコードタイムが記録されたように、消耗度の高いレースとなった。目いっぱい走ったことは、今回において余力の面で減点材料。前走から指数ダウンする可能性が高い。

ただ、スローペースならリバティアイランド、ドウデュース、スターズオンアース、ヴェラアズールの決め手に屈する可能性もあったが、今回はパンサラッサやタイトルホルダーなどの強豪がレースを引っ張る可能性が高い。決め手自慢たちの末脚が存分に生かされない可能性があり、そういう意味では本馬に優位性が出てきた。また、2番枠なら終始ハイペースの外々を回る心配もない。休養明けで消耗度の高いレースをしたことは明確に減点だが、その他の減点材料はなく、3着以内の可能性は高いと見る。

【能力値3位 リバティアイランド】
今年の三冠牝馬。オークスでは5番枠からまずまずのスタートを切って、じわっと包まれない外に誘導されたが、出し切れずに中団中目を追走した。そこからは、3角手前で最内に入れて、4角出口で馬場の良い外へ誘導、と完璧な立ち回り。直線序盤で2列目まで上がり、ラスト1Fで一気に先頭に立つと、最後まで加速して、後続に6馬身差をつけて圧勝した。この時点で古馬GⅠでも通用する指数を記録した。

前走の秋華賞では6番枠からやや出遅れたが、そこから押して挽回し、好位中目を追走。ペースが遅く、道中で包まれたために3角で外に出して、早仕掛けを余儀なくされた。3~4角でスッと上がって、4角で先頭列に並びかけ、直線序盤でもう先頭。この早仕掛けで最後が甘くなり、2着マスクトディーヴァに1馬身差まで詰め寄られるも勝ち切った。ただ、この時に本来の能力を出し切れなかったことで、今回は上昇が期待できる。

今回はパンサラッサやタイトルホルダーなどの強豪がレースを引っ張ってくれるため、内枠で包まれるリスクは減ったし、前走のように早仕掛けする必要もない。3歳牝馬の斤量減が目いっぱい生かされるのは後半の加速力比べになった場合。今回は後半の持続力比べになる可能性が高く、その恩恵が生かされないのは減点材料だが、ここへ向けての臨戦過程はイクイノックスをはじめ、古馬の有力馬たちよりもいい。後半勝負ならイクイノックスに逆転する可能性もあると見て、本命候補としたい。

【能力値4位 スターズオンアース】
昨年の二冠牝馬。三冠がかかった秋華賞では9番枠から出遅れて挟まれ、最後方付近からの競馬。そこから内目に入れ、4角で中目のスペースを拾って直線と、上手く立ち回れてはいた。ただ平均よりもやや遅いペースで推移し、前にいた馬が最後まで粘っていたため、結果的に序盤が致命的となり、3着に敗れた。

そこから立て直された2走前の大阪杯では、成長を見せハナ差の2着に好走した。ここでも11番枠から出遅れて接触し、そこから中団馬群の中目を狙ったが、窮屈になって中団やや後方まで下げて追走。3~4角でペースが上がる中、やり過ごして4角で3列目の外、ヒシイグアスの後ろを狙って直線を向いた。直線序盤で同馬の外に出ると、しぶとく伸び続け、ゴール前でダノンザキッドを飲み込み、さらに逃げ粘るジャックドールにも襲い掛かるかの勢いでのハナ差だった。

前走のヴィクトリアマイルは、2番枠からスタートを決めて好位の最内を上手く立ち回ってはいたが、3~4角でペースが緩んだところでブレーキ。4角で逃げ馬の後ろから外に出たが、反応ひと息でやや伸びを欠き、3着に敗れた。休養明けの大阪杯で好走した反動もあったし、マイルのトップクラスが相手となると、距離が短かったというのもある。今回は立て直されて、実績のある中距離戦に戻る。相手は強くなるが、追走が楽になるぶんチャンスはあるだろう。

【能力値4位 パンサラッサ】
本馬が国内で自己最高指数を記録したのは、昨年の中山記念。5番枠からまずまずのスタートだったが、そこから押して楽にハナを取り切った。外からワールドリバイバルらが絡んできたこともあり、1~2角でもペースを落とさず、そのまま淡々と逃げてハイペースを展開。3角では2列目のワールドリバイバルらが苦しくなって下がったが、本馬は徐々にリードを広げた。4角では後続に約7馬身差、直線序盤で5馬身差まで詰まり、ラスト1Fはさすがに甘くなったが、結果的には2馬身半差で逃げ切った。

このように肉を切らせて骨を断つ、米国スタイルの逃げ切りが身上。昨年のドバイターフも、2走前のサウジC(ダート)も、本馬はスピードと、それを持続し続けるスタミナを生かして逃げ切った。前走のドバイワールドCでは五分のスタートからかなり押して、Remorseに強引に競りかけ、激しいハナ争いになった。4角で下がり、馬群に飲まれたが、5F通過59.24(日本の計測法ならあと1秒は速い)の激流中の激流では仕方ない。

21年の有馬記念大敗から次走の中山記念で自己最高指数を記録したように、また香港C大敗後のサウジCを逃げて激走したように、逃げ馬は大敗から巻き返すもの。そういう意味ではここは怖い。しかし、今回はタイトルホルダーが出走しており、楽には逃げられないと見ている。東京芝は路盤が硬いので、秋の東京連続開催の最終週に至っても超高速状態が保たれている。今回は自分の勝ちパターンに持ち込みにくいが、タイトルホルダーの出方次第ではチャンスがある。


一角崩しの期待高まるドウデュース

2歳時は3戦3勝で朝日杯FSを優勝し、昨年の日本ダービーではイクイノックスを倒して優勝した。その後の海外遠征ではタフな馬場で結果を出せなかったが、帰国初戦の京都記念では独走V。同レースでは12番枠から出遅れ、そこからコントロールして後方で我慢の競馬となった。向正面で馬群が凝縮したところを、コントロールしながら中団の外まで上がって3角へ。3~4角では外から押し上げるマイネルファンロンを目標に動いて、4角では3列目に上がった。直線序盤で同馬の外に出ると、グンと伸びて一気に先頭。ラスト1Fでそのまま突き抜けて3馬身半差で完勝、しっかり成長していることをアピールした。

しかし、その後は出走予定だったドバイターフは跛行で取り消し、そこからの休養明けとなった前走の天皇賞(秋)は7着敗退。この敗戦により人気を落としているが、このレースは折り合いを欠いたまま積極策のイクイノックスを追いかけ過ぎたことが敗因だ。

武豊騎手が鞍上の場合は、スタート後に抑えて乗られているが、前走は戸崎圭太騎手への乗り替わりだったこともあり、出たなりで位置を取っていく形。中団馬群の中目をコントロールしながら追走していたが、3角でイクイノックスの後ろだったこともあり、ここで掛かり気味のまま追いかけている。レースが緩みなく淡々と流れていた中で、明確に早仕掛けだった。しかし、戸崎騎手も今回が2戦目。前半ゆったりと入れば、鋭い末脚を期待できる。一角崩しの最有力馬は本馬と見る。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)リバティアイランドの前走指数「-23」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.3秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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