【京阪杯回顧】トウシンマカオが連覇達成 京都特有の前半が緩い流れを味方につける
勝木淳
ⒸSPAIA
適性がハマったトウシンマカオ
ジャパンCの衝撃から数十分。この日を締めくくる一戦、京阪杯はトウシンマカオの連覇で幕を閉じた。前走スワンSで1400mを経験し、逃げて0.7秒差の9着だったが、先手をとったことが刺激になったか、今回は特に行きっぷりがよく、枠順を利用して外からねじ伏せた。昨年は阪神での京阪杯だったが、どちらも前半がそこまで速くならない。3コーナーまでが短い阪神と、中間地点にアップダウンがある京都は飛ばしたくても飛ばせないコースレイアウトだ。今回もスタート直後、先行勢は様子をうかがっており、なにがなんでも行く構えを見せた馬はいない。ビッグシーザーが先手をとったものの、この状況ではハイペースは期待できない。前半600m33.7はスローに近く、京都芝1200mでよく見る流れに落ち着いた。
トウシンマカオは前半が速くなりすぎないスプリント戦が得意だからこそ、前走で距離延長に活路を求めた。阪神、京都での連覇はその証だろう。前半が速いと置かれてしまい、勝負所で遅れをとってしまう。今夏、北海道で連続3着だったのも、直線が短く、挽回しきれないからこそ。好走できる流れや競馬場が限られていて、分かりやすいタイプではある。
母系に入るニジンスキー
前半が速くなかったが、後半600mも11.0-11.3-11.4、33.7と速くなく、開催最終日らしい少しタフな馬場だったこともトウシンマカオに味方した。昨年は前後半600m33.3-33.9で、このぐらいの上がりの競馬は合う。兄弟には8歳時にGⅡ2着があるベステンダンクがいる。やはり少し時計がかかる馬場を得意としていた。母ユキノマーメイド、その母サスペンスクイーンと洋芝など重めの馬場に強く、トウシンマカオもこの点を受け継いだ。
父ビッグアーサーは重賞2勝がいずれも1200mで、馬券になったのは1400m以下ばかり。自身と同じスプリンターを多く出す。高松宮記念を1.06.7と当時のレコードで勝利するなど、サクラバクシンオー譲りのスピードが身上だった。母系のタフさと父の距離適性はトウシンマカオの適性そのもの。ひとつ上に行くには、ハイペースへの対応がカギになる。チャンスは前半がそこまで速くならない高松宮記念だろう。
母の父スペシャルウィークは1999年ジャパンC勝ち馬。エルコンドルパサーに勝った凱旋門賞馬モンジュー、独バーデン大賞連覇のタイガーヒルなど、豪華な外国馬が参戦していた。スペシャルウィークといえば、ニジンスキー持ちの底力型で有名だが、母ユキノマーメイドは母系にもニジンスキーの名がある。トウシンマカオもまだまだ血統的に奥がありそうだ。
ルガルを1200mで追いかけるのは危険
2着は1番人気ルガルだった。スワンSで0.2秒差の4着と見せ場を作った3歳馬で、決して1200mがベストといった戦歴でもなさそうだ。5番手でついて回れたのは京都の速くない流れだったからであり、今回で1200m重賞の主役になるようなら、取り扱いには注意しよう。まだ3歳なので、対応してくる可能性はあるが、最後は伸びきれなかったように、この距離は現状では忙しいのではないか。
3着エイシンスポッターは上がり最速32.2を記録するも、及ばなかった。スローに近い流れで4コーナー15番手なら、よく差してきたものだ。5月の鞍馬Sでオープンを勝ったが、不良馬場でのもので、良馬場の重賞だと前半のスピードに課題が残る。溜めてこそのタイプではあるが、重賞で勝負圏内に入るには、もう少し追走が楽にならないといけない。現状は展開待ちなので、ハイペース、時計を要する馬場で狙いうちしたい。
12番人気トゥラヴェスーラはエイシンスポッターとハナ差4着に健闘した。今年の高松宮記念3着など、人気が落ちた頃に激走する付き合いにくい馬だ。次走次第だが、今回の4着で人気が上がるようなら、ちょっと立ち止まろう。8歳でも頑張る偉い馬なのでつい買いたくなってしまうが、買いどころが非常に難しい。叩き2戦目は【1-1-0-6】で休養明けの反動が出るタイプの可能性もある。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
《関連記事》
・【チャンピオンズC】レモンポップら前走交流重賞組の古馬優勢 新星セラフィックコールに立ちはだかる壁あり
・【ステイヤーズS】リピーターが強くアイアンバローズに勝機到来 立ちはだかるはテーオーロイヤルとマイネルウィルトス
・【チャンピオンズC】過去10年のレース結果一覧
おすすめ記事