【エリザベス女王杯】枠に恵まれ成長力も見込めるサリエラ、鉄砲駆けタイプのアートハウスの2頭が有力

山崎エリカ

2023年エリザベス女王杯のPP指数,ⒸSPAIA

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近年は仕掛けが遅い傾向

エリザベス女王杯は逃げ馬受難と言われていたレースだが、京都開催の直近2年は逃げ馬が連続2着と活躍。近7年はラスト5~6F目でもペースが上がらず、3~4角から動くというように、仕掛けが遅くなっている影響で、逃げ馬が粘りを見せている一方、追込馬は3着までしかきていない。

京都開催の近7年で先行馬が1勝2着4回3着1回、中団馬が3勝3着1回。どちらかというと中団よりも前の位置を取っている馬が活躍している。今年も逃げ馬不在なだけに、3~4角までペースが上がらない可能性も十分にある。しかし、今回は差し馬勢が強く、外差し有利の馬場なので、それらを主体に予想を組み立てたい。

能力値1~5位

2023年エリザベス女王杯のPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 ジェラルディーナ】
昨年のエリザベス女王杯の優勝馬。昨年は大外18番枠から五分のスタートを切ったが、二の脚が遅く、後方に下がってから中団外目を追走。3~4角で好位列まで押し上げて直線へ。そこからしぶとく伸び続け、ラスト1Fでしっかり抜け出し、1馬身3/4差で完勝した。ただし、このレースは11番枠より外の馬が掲示板を独占したように外差し馬場。本馬は馬場と展開に恵まれた面があった。

しかし、本馬はその後の有馬記念や宝塚記念でも3、4着と善戦しているように、今回のメンバーでは実績上位は明らか。スタミナが不足する休養明けの前走オールカマーでは、出遅れて中団外々から位置を押し上げていくレースをしたため6着に敗退。ひと叩きされて牝馬限定GⅠのここなら、勝ち負けが十分に期待できる。

土曜のデイリー杯2歳Sで外から差したエンヤラヴフェイス(8番人気)が2着に好走したように、今年は昨年と舞台こそ違うが外差し有利の馬場。当然ここも有力だろう。

【能力値2位 アートハウス】
昨秋のローズSではサリエラを撃破して優勝した馬。続く秋華賞はその疲れで凡退したが、立て直された愛知杯では巻き返しV。同レースは3番枠からまずまずのスタートを切り、内枠から控えたマリアエレーナの外に出して蓋をしながら、ぴったりマークで2列目の外を追走。3~4角でじわっと上がり、4角出口で馬場の良い外に誘導。そこから追われるとすっと加速し、2列目まで上がった。ラスト1Fで粘り込みを図るアイコンテーラーを捕えて突き抜け、1馬身3/4差で完勝した。

前走の中山牝馬Sは距離がやや短く、トップハンデながら3列目の内を追走と勝ちにいく競馬。休養明けで自己最高指数を記録した後の一戦だったこともあり、伸び切れなかったことは仕方ない。本馬はこれまでの4勝すべてが初戦、もしくは休養明けという鉄砲駆けタイプ。今回は腸骨骨折(骨盤骨折)からの復帰戦になるが、8ヵ月で復帰できるということは軽度だったはず。また中内田厩舎は少しでも不安を感じていたらレースに使わない厩舎で、ここは復活が期待できる。

【能力値3位 マリアエレーナ】
昨夏のマーメイドSを休養明けで2着に入ると、その次走の小倉記念では初重賞制覇を達成した馬。同レースは2番枠から好スタートを切って、いったんハナを主張し、外の各馬を行かせて好位の最内を追走と完璧な入り方。道中は前にスペースを作って3列目の最内。3~4角でそのスペースを潰して逃げ馬の直後まで上がり、4角で逃げ馬の外から楽に先頭に立つと、そこから突き抜けて5馬身差で圧勝した。本馬が同レースで記録した指数はGⅠ級のもので、ここではNo.1となる。

しかし、当時の最高の立ち回りは、鞍上の松山騎手自身の意図的なものではなく、偶然そうなっただけのもの。その後はアートハウスが優勝した愛知杯時のように、内枠から中途半端にハナをチラつかせ、外から内に切れ込まれて進路をカットされ、さらにアートハウスに蓋をされて行き場を失い、好位の最内で手綱を引っ張りながら自滅するなど、本来の能力が出し切れない競馬が続いた。本馬はキレる脚がなく、極端なスローペースの上がり勝負になると本来の能力が出し切れない。

三浦騎手への手替わりとなった前走オールカマーでは差す競馬で勝ち馬と0.2秒差の4着に善戦。前走は14番枠からやや出遅れ、促されてもあまり進んで行かず中団の外目を追走。向正面では捲られても動かず、3~4角で中団中目から外目に誘導して直線へ。直線序盤で追われるとジリジリ伸びて好位まで上がり、ラスト1Fでもしぶとく伸び、2着のタイトルホルダーにクビ+クビ差まで迫った。

前走は差す競馬に対応したが、前日が重馬場からのスタートで良馬場に回復してもやや時計が掛かっていたことや、向正面半ばで捲りが発生したことで、ラスト5F目からペースが上がり、ラスト3F35秒5と上がりの掛かる決着で決め手が求められなかった。それでも差すという選択肢ができたのは、今後に向けて好材料。今週も重馬場スタートで日曜日は馬場の回復が予想されるが、さすがに高速馬場にはならないはず。ある程度、前でレースを進めても良いし、差す競馬でもチャンスがありそうだ。

【能力値4位 ディヴィーナ】
1勝クラス、2勝クラスをそれぞれ1クラス上の指数で連勝した時点では、重賞級の馬になっていくだろうと感じていた馬。ところがその後はやや伸び悩み、3勝クラスは順当に勝利したが、オープン昇級後は期待に応えられなかった。

しかし、4走前のヴィクトリアマイルでは勝ち馬と0.2秒差の4着と一変。同レースは13番枠から出遅れ、促されても進まずに最後方列からの追走。前半3Fは34秒2となかなか速かったが、じわっと後方2列目の外まで挽回して3角へ。ペースが緩んだ3~4角では我慢し、4角外から中団まで押し上げ、ナミュールに蓋をして直線へ。直線序盤でその勢いのまま3列目の5番手に上がり、ラスト1Fでバテたロータスランドを交わすと、3着スターズオンアースに1馬身差まで迫った。

4走前はM.デムーロ騎手への手替わり。スタートしてから早めにエンジンを掛けていく競馬をするようになり、馬が変わったようだ。その後も中京記念2着、関屋記念2着、そして前走の府中牝馬Sはまさかの逃げ切りで優勝した。恐ろしいことに早めにエンジンを掛けていく競馬では底を見せていない。今回もあっさり通過するかもしれないし、前走が目いっぱいで反動が出ることもあり得る。何とも悩ましい存在だ。

【能力値5位 ルージュエヴァイユ】
新馬戦、デイジー賞を連勝し、フローラS5着後のキャリア4戦目となったオークスはスターズオンアースから0.7秒差の6着。早くから能力の高さを見せていた馬だ。古馬との対決となってからも2勝クラス、3勝クラスをあっさり連勝。その後2戦は大敗したが、エプソムCで2着に入った。

そして休養明けとなった前走の府中牝馬Sでも2着と好走。前走は5番枠から出遅れ、内枠だったために位置を下げて外に誘導し、後方外目を追走。3~4角で後方外からじわっと押し上げて中団外から直線へ。直線序盤で軽く促されると3列目まで上がり、ラスト1Fで先頭のディヴィーナが鈍化したところを差し込み、ハナ差まで迫った。

デビューから3戦全てで上がり3Fタイム最速を記録した瞬発力が、ここにきて開花してきた。今回のメンバーが相手でもトップスピードは劣らないだろう。しかし、重馬場の愛知杯で大敗しているように、スタミナにやや不安を感じる。今回は前走から2F延長の芝2200m戦。瞬発力だけというわけにはいかない。乗り方が難しそうだが、持ち味の末脚を生かしきればチャンスはありそうだ。

枠にも恵まれ、成長力も見込めるサリエラ

サリエラは昨年のローズSではキャリア3戦目ながら2着と、驚きの走りを見せた馬。前々走の目黒記念は3着。前々走は16番枠からやや出遅れたが、外枠だったこともあり、そこから無理をさせずに中団外目をコントロールしながら追走。向正面で前のセファーラジエルが捲って行ったが、本馬はそこでは動かず我慢の競馬。3~4角でペースが上がっていく中で外々を追走し、直線序盤では前が壁で外に出すのにやや苦労する場面があった。しかし、外に出してラスト2Fで外のゼッフィーロに併せて追われるとジリジリと伸び始め、前2頭から一列後ろでゴールした。

前々走は超絶高速馬場で前半5F62秒1-後半5F57秒9の超絶スローペース。3~4角からペースが上がって、そこで最内を立ち回ったヒートオンビート、ディアスティマがワン、ツーを決めた中で、本馬は3~4角の外から長くいい脚を使い上位2頭に3/4差。本馬はそこまでキレる脚はないが、良い脚を持続させる長距離タイプだ。

前走の新潟記念は芝2500m戦で差し競馬をした後の一戦で1番枠。出遅れてテンに置かれたが、そこから馬場の悪化した内から挽回していく形。道中で中目に出し、最後の直線で進路取りもスムーズだったが、伸び切れずに1番人気を裏切った。しかし、今回は前走で芝2000mを使われたことで、レースの流れに乗れるはず。今回は外差し馬場の外枠と枠順にも恵まれたことや、キャリアが浅くまだ上昇力が見込めることから有力な一頭としたい。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ジェラルディーナの前走指数「-19」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.9秒速い
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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