【オークス】過去10年で7勝2着5回の血統 欧州芝長距離GⅠ馬Mill Reefに注目 有力馬の血統解説
坂上明大
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【傾向解説】
牝馬クラシック第2戦・オークス。桜花賞馬リバティアイランドの一強オッズが想定される一方で、重賞で2勝以上を挙げているのは同馬とキタウイングのみという、2番手以下は大混戦の3歳牝馬路線。さらに、東京芝2400mという3歳牝馬にとっては過酷な条件で行われるため、距離適性の評価も非常に重要な一戦です。本記事では血統面を中心に、オークスで求められる適性を整理していきます。
まず、念頭に置いておきたいのは、3歳牝馬限定の芝2400m戦が特殊条件であるということ。2~3歳牝馬路線は桜花賞まで芝1600mで強い馬を選定する番組構成にあり、最初の芝1800m以上の牝馬限定重賞は3月後半に行われるフラワーC。桜花賞に出走するような世代上位の実力馬たちは中距離戦を経験していることも少なく、未知の距離への対応力が求められるローテーションとなっています。そもそも牝馬限定戦ではオークスの2400mが最も長い距離条件であるため、今後2400m以上のレースを使うことがない馬が多数派という点も、オークスの特殊性を表しています。
上記の理由からスタミナ面の裏付けが欲しいところで、前走上がり3F3位以内を記録するような、ゴールまで脚色が鈍っていない馬、特に「前走で前目につけられなかった馬」の好走が目立つのがオークスの大きな特徴といえるでしょう。過去10年でも、前走で上がり3F3位以内、かつ初角で出走頭数の中央値より後方にいた馬から7頭の勝ち馬が出ており、直近5年においては勝ち馬全5頭がこれに該当しています。
<前走上がり3F3位以内&初角中央以下(過去10年)>
【7-1-4-34】勝率15.2%/連対率17.4%/複勝率26.1%/単勝回収率85%/複勝回収率108%
血統面では、Mill Reefの血を引く馬の活躍が目立ちます。Mill Reefは英ダービーやキングジョージⅥ&QES、凱旋門賞など、欧州芝長距離GⅠで無類の強さを発揮した名馬。その子孫は芝中長距離戦に強く、特にしなやかで息の長い末脚を持ち味とする馬が多いことで知られています。近年では6代以前に隠れるような古い血統になりましたが、昨年はMill Reefの6×7を持つスターズオンアースが1着、Mill Reefの5×5を持つスタニングローズが2着というMill Reefクロス馬のワンツー決着となりました。Mill Reefと同じNever Bend×Princequillo系のRivermanなどと合わせて、Mill Reefらしさが強化された馬には注目したいところです。
<血統別成績(過去10年、単勝オッズ29.9倍以下)>
Mill Reef 【7-5-1-15】勝率25.0%/連対率42.9%/複勝率46.4%/単勝回収率184%/複勝回収率122%
Riverman 【2-0-0-4】勝率33.3%/連対率33.3%/複勝率33.3%/単勝回収率276%/複勝回収率60%
その他では、ゴールドシップやハービンジャーなど追走力では劣るものの、芝中長距離戦で息の長い末脚が持ち味である種牡馬の活躍も目立つため、同馬らや同様のタイプの種牡馬の産駒にも注意が必要です。
<父別成績(過去10年)>
ゴールドシップ 【1-0-1-1】勝率33.3%/連対率33.3%/複勝率66.7%/単勝回収率296%/複勝回収率360%
ハービンジャー 【0-1-1-6】勝率0.0%/連対率12.5%/複勝率25.0%/単勝回収率0%/複勝回収率86%
【血統解説】
・リバティアイランド
母ヤンキーローズは2016年スプリングチャンピオンSなどGⅠ・2勝の活躍馬で、母母CondesaarはMonroe≒Sex Appealの2×3を持ちます。2018年優勝馬アーモンドアイとは父父にキングカメハメハを持つ点、Sex Appealの血を増幅している点が共通し、特に本馬はオーストラリア産馬の母の仔らしい筋肉量豊富な、スピードに優れた好配合馬といえるでしょう。芝1600~2000mがベストですが、同世代の牝馬同士なら基礎能力の差で優位に立てる器であり、桜花賞を後方から突き抜けたレースぶりも高評価できるポイントです。
・ハーパー
母セレスタはアルゼンチンの芝1600mの3歳牝馬GⅠの勝ち馬で、半姉ヴァレーデラルナも2022年JBCレディスクラシック優勝馬という良血馬です。姉や本馬は父方にトニービンの血を引くという共通点がありますが、4代母の父Strawberry Roadとトニービンの血は相性が良く、昨年のダービー馬ドウデュースもこの配合パターンに該当します。桜花賞でも先団に取り付けるスピードを見せましたが、中長距離種牡馬ハーツクライの産駒であることから距離延長への対応力は高いとみています。
・シンリョクカ
母レイカーラはターコイズSなど芝1600~1800mで5勝の活躍馬で、伯父にダノンシャーク(2014年マイルCS)がいる下河辺牧場ゆかりの血統です。母レイカーラはこのレースと相性のいいMill Reefの血を5×4でインブリードしています。桜花賞では直行のローテーションながら初角11番手から上がり3F3位の末脚を披露。血統面からも実績面からも巻き返しが期待できる一頭です。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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