【チャンピオンズC】ダートで上昇一途のジュンライトボルト! 一気の天下取りに期待

山崎エリカ

2022年チャンピオンズC出走馬のPP指数,ⒸSPAIA

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JBCクラシックの勝ち馬は苦戦の舞台

今年も昨年の当レースを6馬身差で圧勝し、今秋のJBCクラシックも優勝したテーオーケインズの1番人気が予想される。しかし、前走で同レースを優勝した馬は、ほとんどが苦戦している。JBCクラシックは2001年に創設され今年で22回目となるが、昨年まで16頭の勝ち馬が次走で当レース(JCダートを含む)に挑み、15頭が敗れている。

唯一の連勝馬は2007年のヴァーミリアンのみ。同馬は3年連続でJBCクラシックを優勝した猛者だが、その間の当レースは1勝2敗だ。同じく3年連続で同レースを制したアドマイヤドンは、その3年間の次走JCダートでは全て敗れている。ハイレベルなGⅠを連勝するのは、簡単なことではないということだ。

特に休養明けのJBCクラシックで自己最高指数を記録した馬は苦戦必至。2021年のクリソベリルは同レースで自己最高タイの指数を記録、次走の当レースで断然の1番人気に支持されながらも4着に敗れた。しかし、テーオーケインズが昨年の当レースで記録した指数は「-39」。一方、前走JBCクラシックで記録した指数は平安Sを下回る「-36」。前走で能力を発揮したとは言い難く、ここが今回のポイントとなるだろう。

能力値1~5位馬に紹介

2022年チャンピオンズC出走馬のPP指数一覧,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


【能力値1位 ジュンライトボルト】
デビューからしばらく芝を使われていたが、長期休養明けの3走前からダート路線に転向し、上昇一途。上がり馬の立場でありながら、ここでは能力値1位となる。勝ってきたレースが格下のため、「レベルが高くなかった」という声もあるが、決してそんなことはない。

前走のシリウスSは、9番枠から五分のスタートを切り押して追走して好位を狙ったが、内の馬が積極的にいく展開で中団中目からとなった。3角で外に出し、3~4角ですっと位置を押し上げ、4角で2列目の外。ラスト1F手前で先頭に立つと、そのまま押し切っての優勝だった。3~4角から勝ちにいったことで、4角ではかなり外を回るロスがあったが、終始最短距離を立ち回ったハピを撃破していることも評価できる。

前々走のBSN賞でも前半4F48秒2-後半4F50秒9とかなり流れが速くなった中、6番枠からまずまずのスタートを切り、押して先行争いに加わった。そこから一旦2番手の好位から中目に控えていく競馬。ここでも3~4角の外からすっと位置を押し上げ、4角3列目から直線序盤で先頭に立って勝利している。

本馬はそこまで前の位置を取れる馬ではないが、道中でそれを挽回できる機動力がある。その強みを存分に生かすには中枠より外がベストだったが、今回は5番枠。それでも距離が1800mあれば、どこかで外に出せるだろう。シリウスSの勝ち馬はこのレースで苦戦傾向だが、先週のジャパンCを制したヴェラアズールのように天井が高ければ通用するだろう。ヴェラアズールはデビューからしばらくダートを使われたが、芝路線で花開いた馬。本馬はその逆パターンと見る。

【能力値2位 テーオーケインズ】
昨年のチャンピオンズCは、戦慄の6馬身差で優勝。出遅れた前走から一転してスタートを決め、様子を窺いながらコントロールして好位の中目に収めていく形。キックバックを受けて少し掛かり気味だったが我慢させ、3~4角で2列目まで押し上げて直線へ。早め先頭に立ったインティを楽々と交わし、そこから一気に後続との差を広げて6馬身差。問答無用の勝ちっぷりで、当時の日本馬が相手なら二枚上を感じさせるものだった。

本馬は勝つ時の破壊力は高いが、負ける時は脆く、よく出遅れる。昨年の帝王賞は3馬身差の圧勝を飾り、その次走で出遅れて4着と凡走。今年の平安Sで強豪相手に優勝したが、その次走の帝王賞でも出遅れて4着と凡走した。出遅れ自体が致命的ではないが、そこから挽回して好位を取りにいくことが、末脚不発に繋がっている。

ただし、前走のJBCクラシックは帝王賞、チャンピオンズC、平安Sと比べると走っていない。前走は逃げたクラウンプライドの前半3Fが盛岡ダ2000mで35秒4であるように、今夏のマーキュリーCほどではないが明確にハイペースだった。その流れを13番枠の好位外から1角のロスを嫌って中団まで位置を下げ、向正面では好位の外まで位置を押し上げた。そのことで終いに甘さを見せたが、相手が楽だったため押し切れた。前走JBCクラシック勝ちの馬は苦戦傾向だが、まだ余力は残っている可能性はある。

【能力値3位 ハピ】
3歳馬ながら古馬相手の前々走シリウスSで2着。そのレースは8番枠からやや出遅れ、二の脚もひと息。それでも押して中団最内まで上がり、ジュンライトボルトの後ろを追走。3~4角で前の同馬が外に行ったことで内のスペースが広がり、そこを通って3列目で直線。4角で包まれたため直線序盤は前が壁になり追い出しがやや遅れたが、進路を確保してからはラスト1Fで2馬身はあった勝ち馬との差を3/4差まで詰めてゴールした。

前々走はやや速い流れでラスト1Fが13秒3まで失速したことを考えれば、最短距離で脚をため、最後の直線で仕掛けがワンテンポ待たされた本馬はもっと伸びてきても良かったと見ている。つまり、上手く脚をためたことが最後の伸びに繋がった。

前走のみやこSも8番枠からやや出遅れ。そこから押して前走よりも前を意識した競馬だったが、結局、好位の後ろまでしか取れず前々走と似たような競馬になった。4角で中目に出して、ここでもワンテンポ追い出しを待たされた。そこから捌いて3列目まで上がり、直線序盤で内のスペースを拾って2列目まで上がったが、ラスト1Fで甘くなり外から差されての4着だった。勝ちにいく競馬をしないぶん善戦するが、ワンパンチ足りない印象を受ける。

【能力値4位 シャマル】
東京スプリント、サマーチャンピオン、オーバルスプリントと今年の1200m~1400mの重賞を3勝した馬。さらに距離を延ばした前走マイルCS南部杯でも3着と好走した。前走は15番枠から好発を切って先頭に立ったが、内の各馬が抵抗してきたこともあり、最終的には控えて好位の外。3角で4頭分外を回るロスを作りながらも食らいつき、4角で少し置かれて3列目で直線へ。しかし、そこからもジリジリ伸び、ヘリオス、カフェファラオの叩き合いから半馬身差まで詰め寄ってゴールした。

前走は地力強化が窺えた一戦。しかし、高速ダートで前半4F45秒9-後半4F48秒7の超ハイペースで、ヒロシゲゴールドが2着だった昨年同様にスピード色の強いレースだった。ゆえに前走だけでさらなる距離延長にどこまで対応できるかの判断はしにくい。

ただ本馬は前にいきたい馬が揃った今年1月の伊賀Sで、3番枠から前に行けず、揉まれて後退し6着に凡退。その後は鞍上が揉まれない競馬を意識することで勝ち上がってきた。今回は川田騎手への手替わり。揉まれる競馬に慣れさせるのか、それとも13番枠からこれまでのように積極的な競馬をするのか? あまりに積極的な競馬だと、同タイプのノットゥルノの日本テレビ盃のような失速があっても不思議ない。また前走で自己最高指数タイを記録していることから、さらなる上昇も期待しにくい。

【能力値4位 グロリアムンディ】
ダートでは5戦4勝2着1回と底を見せていない馬。ダート路線に転向し、上昇一途で前々走のアンタレスSで2着と好走した。そのレースは13番枠からまずまずのスタートを切り、楽に先行して2列目の外。前2頭がペースを引き上げていく中、1~2角の3頭分外を回ったことで、向正面ではやや離れた3列目の外を追走していた。そこから3角手前で再びじわっと差を詰め、3~4角でも緩みなくレースが流れる中で4頭分外を回り、ひとつ内のケイアイパープルとともに先頭列で直線に。ラスト1Fで抜け出したが、最後は外からオメガパフュームに差された。

前走は緩みない流れを終始外々の競馬。前へ行った2頭が2桁着順に沈む流れを、好位の外々から2着に粘った競馬は評価できる。また本馬は出遅れることもあるが二の脚が速く、楽に好位が取れる。ただこれまでのダート5戦が全て時計の掛かるレース。それを外目の枠からの逃げか、好位の外というような大味な競馬で勝ち上がっている。

一方、今回は一転して1番枠。3走前の名古屋城Sでは好位馬群の中目でレースを進めているものの、手応えが良く前との距離をコントロールされて乗られており、諸に砂を被るような競馬ではなかった。大味な競馬が目立つだけに、最内枠で揉まれた場合の不安はある。ただダートでの強さは本物だけに、シリウスSのハピのような立ち回りで、さらに走りを上昇させる可能性も十分ある。

穴馬はオーヴェルニュとノットゥルノ

【オーヴェルニュ】
昨春の中京ダ1900m戦の平安Sを高指数勝ちした実績馬。本馬はそれが自己最高指数となる。昨年の平安Sは3番枠から好発を決めてすっと先頭、そこから控えて好位の内を追走した。3~4角で2番手まで上がり、ラスト1F手前で抜け出すと、そこから突き抜けての6馬身差の圧勝だった。当時がレコードタイムでの優勝だったように、馬場が高速化するほど走る傾向がある。また昨年の東海Sで1着、今年は2着と好走しているように中京ダ1800m適性が高いことも、穴馬に推すポイントだ。

今年の東海S2着後はややスランプだったが、休養明けの前々走シリウスSでは3着と復調の兆しを見せた。前々走は3番枠からまずまずのスタートを切って、コントロールしながら外のクリノフラッシュを先に行かせて2列目の内を追走。キックバックが苦手なため、前にスペースを作り追走していたが、3~4角でそのスペースを一気に詰めた。4角でクリノフラッシュ直後の2列目から、直線序盤で狭い内を突いて早め先頭の競馬。外から一気にジュンライトボルトと、ハピにも差されたが、前が厳しい流れだったことを考えれば上々の内容だった。

前走のJBCクラシックは得意の高速ダートだったが、6着。これは明確なハイペースを好位の外と先行したこともあるが、休養明けで好走した反動が出た可能性が高い。完全な力負けではなく、得意の舞台で巻き返してくるだろう。

【ノットゥルノ】
今夏のジャパンダートダービーでは、兵庫チャンピオンシップで敗れたブリッツファングを3着に破り優勝した馬。同レースは大外14番枠からスタートで滑って出遅れたものの、大外枠の利を生かしてじわっと好位の外を追走。3角外から動き、最後の直線では早め先頭に立ったブリッツファングのすぐ外からラスト1Fで先頭に立ち、ペイシャエスの追撃を3/4馬身振り切って優勝した。

本馬は3走前に出遅れたように、スタートや二の脚がひと息ながら、揉まれ弱い面がある。それゆえベストは外枠だが前走は3番枠。そこからサルサディオーネの外を狙ったことでオーバーペースに巻き込まれて7着に失速した。しかし、今回は逃げ馬不在。恐らく外枠から前を主張する馬を行かせて、その外を狙う可能性が高い。展開次第ではワンチャンスありそうだ。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ジュンライトボルトの前走指数「-33」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも3.3秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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