ダービー白帽の歴史に新たな1ページ 2019年日本ダービー馬・ロジャーバローズ

SPAIA編集部

2019年日本ダービーのレース結果,ⒸSPAIA

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日本ダービーまであと3日

2022年の日本ダービーまで残り3日。連載で過去10年の日本ダービーを一戦ずつ振り返っていく。

「2頭出しは人気薄」

競馬には様々な“格言”が存在する。それは150年以上にわたる日本近代競馬の歴史の中で、先人たちが後世に遺した気付き、経験則、知見だ。そんな格言の一つが「2頭出しは人気薄を買え」。わざわざ同じ厩舎の人気馬と一緒にレースを走らせるなら、きっと陣営には何らかの勝算があるだろうから買っておくべし。この年のダービーはそんな格言が火を吹いたレースだった。

2019年日本ダービー、単勝1.6倍、堂々の1番人気はサートゥルナーリア。関西の名トレーナー・角居勝彦師が送り込む、4戦4勝の皐月賞馬。母シーザリオ、兄エピファネイア、リオンディーズがGⅠ馬という超良血だ。前走で手綱をとったルメール騎手が騎乗停止で乗り替わりの憂き目に遭ったが、代打は豪州の若き名手、ダミアン・レーン。初来日したその週に新潟大賞典を勝つなど、旋風を巻き起こしていた。

2番人気は皐月賞でアタマ差の2着にくらいついたヴェロックス、3番人気は同3着で共同通信杯の勝ち馬ダノンキングリー。これが単勝4.7倍で、4番人気アドマイヤジャスタは25.9倍と大きく離れた。“3強”の様相だ。

この週の東京は、時計が速く、そして内を通った馬の好走が目立つ馬場。デビュー以来最短の中5週、大観衆の前で出走を待つ間に少しずつボルテージが上がってしまったサートゥルナーリアは痛恨の出遅れ。挽回していくが、普段よりかなり後ろの11番手からとなる。ダノンキングリーが絶好のイン5番手、ヴェロックスは外目の7番手。

ダービー初騎乗の若武者・横山武史騎手を背に、青葉賞馬リオンリオンがぐんぐん飛ばして1000m通過は57.8秒のハイペース。離れた2番手のインコース、実質単騎逃げのような形になった角居勝彦厩舎もう1頭の出走馬、12番人気のロジャーバローズが実にリズムよく道中を進んでいく。

直線に入ると浜中俊騎手がロジャーバローズを激しいアクションで叱咤し、リオンリオンをかわして先頭に立つ。その後ろからダノンキングリーがただ1頭迫ってくるが、ヴェロックスとサートゥルナーリアは大外から。この日の東京ではもはや届かない。ダノンキングリーの差し脚をクビ差だけ振り切った殊勲の浜中騎手は、自らの勝利を確かめるようにターフビジョンを見やり、次いで後続を振り返った。

単勝オッズ93.1倍はダービーの単勝配当としては史上最高額。内枠有利が唱えられて久しいダービーにおいて、1枠1番からまさに最短距離を走りぬいての大金星。エイシンフラッシュやキズナら数多の名馬と並んで「ダービー白帽」の歴史に残る、象徴的な1勝であった。

2019年日本ダービー・全着順
1着 ロジャーバローズ 浜中俊 2.22.6
2着 ダノンキングリー 戸崎圭太
3着 ヴェロックス 川田将雅
4着 サートゥルナーリア レーン
5着 ニシノデイジー 勝浦正樹
6着 クラージュゲリエ 三浦皇成
7着 ランフォザローゼス 福永祐一
8着 レッドジェニアル 酒井学
9着 タガノディアマンテ 田辺裕信
10着 メイショウテンゲン 武豊
11着 マイネルサーパス 丹内祐次
12着 エメラルファイト 石川裕紀人
13着 ナイママ 柴田大知
14着 ヴィント 竹之下智昭
15着 リオンリオン 横山武史
16着 シュヴァルツリーゼ 石橋脩
17着 サトノルークス 池添謙一
18着 アドマイヤジャスタ M.デムーロ


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