【日本ダービー】世代の頂点を決める戦い! 2007年覇者・牝馬ウオッカと出走馬たちのその後

緒方きしん

日本ダービー過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA

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世代頂点の座はどの馬に

オークスは桜花賞馬スターズオンアースが快勝、牝馬三冠に王手をかけた。2着には10番人気のスタニングローズが食い込む健闘。これでオークスは4年連続で馬券圏内に2桁人気馬が入った。秋華賞に向けて、各陣営の動向が気になるところだ。

さて、今週は3歳馬の頂点を決める一戦、日本ダービーが開催される。皐月賞馬ジオグリフをはじめ、イクイノックス、ドウデュース、ダノンベルーガら皐月賞上位組が集結。さらにアスクワイルドモア、プラダリア、ピースオブエイト、セイウンハーデスなど他路線を勝ってきた注目馬も揃った。面白いダービーになりそうだ。

戦前、戦時中にはワカタカ、ヒサトモ、セントライト、クリフジなどが勝利。その後もトキノミノル、シンザン、シンボリルドルフなど数々の名馬が勝利してきた歴史ある一戦である。近年では、キズナやドゥラメンテもダービーを制し、種牡馬として活躍している。今年の王座はどの馬が掴み取るだろうか。今回は、日本ダービーの歴史を振り返る。

1番人気はやや苦戦傾向

日本ダービー過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


ここ5年間で、1番人気でダービーを制したのはコントレイルただ1頭。2021年エフフォーリアは2着、2019年サートゥルナーリアは4着など苦戦傾向にある。ここ10年でも、1番人気で勝ったのはコントレイル、ドゥラメンテ、キズナの3頭と、やはり勝率はあまり高くない。

近年は、オークス同様に2桁人気馬の好走も目立つ日本ダービー。1番人気ダノンプレミアムが6着に敗れた2018年は、1着ワグネリアン(5番人気)、2着エポカドーロ(4番人気)、3着コズミックフォース(16番人気)の三連単が285万馬券となっている。

翌年の勝ち馬ロジャーバローズは12番人気であり、2020年3着のヴェルトライゼンデも10番人気だった。昨年の牡馬クラシックを盛り上げたステラヴェローチェも、2桁人気ではないものの、ダービーでは9番人気3着だった。

しかし、そういった1番人気に逆風が吹く状況はあくまで直近の話であり、活躍が目立っていた時代もある。例えば、2001年ジャングルポケットがダービーを制してからは、タニノギムレット、ネオユニヴァース、キングカメハメハ 、ディープインパクト、メイショウサムソンと6連勝を果たしている。さらに遡って、スペシャルウィークやナリタブライアン、トウカイテイオーたちも1番人気に応えての戴冠だった。

3番人気10.5倍、牝馬でダービーを制したウオッカ

2001年から続いていた1番人気の連勝をストップさせたのが、2007年のウオッカである。1番人気はジャングルポケット産駒のフサイチホウオー。デビューから4連勝で共同通信杯などを制し、初めて土がついた皐月賞も3着と大きく負けていなかったことで信頼を集めた。

他にも2歳王者ドリームジャーニー、皐月賞馬ヴィクトリー、シンザン記念でダイワスカーレットを撃破したアドマイヤオーラらが集結。その中で、牝馬のウオッカは3番人気という評価に収まっていた。

ウオッカはダービー出走時、6戦4勝。デビュー2戦目の条件戦を取りこぼしつつも2歳女王に輝き、3歳になってからもチューリップ賞でダイワスカーレットらを相手に勝利していたが、桜花賞で2敗目を喫した。しかし陣営はダービーへの挑戦を決断。牝馬ながら、父タニノギムレットとダービー親子制覇を目指すこととなる。ウオッカはアストンマーチャン、ローブデコルテ、ピンクカメオを下した阪神JFとぴったり同じ482キロでレースを迎えた。

レースを引っ張ったのは、14番人気の伏兵アサクサキングス。2月のきさらぎ賞は制していたものの、皐月賞7着、NHKマイルカップ11着と精彩を欠いて人気を落としていた。乗り替わりで初コンビとなった福永祐一騎手は、勝利したきさらぎ賞以来となる逃げを選択。これが功を奏し、アサクサキングスは余力を残したままレース終盤を迎える。

東京競馬場の長い直線に入ると、後続馬が追い込み始める。ウオッカとドリームジャーニーの2歳チャンピオン2頭が鋭く伸びるが、ドリームジャーニーはほぼ最後方からの追い出しで届きそうにない。中団から早めに抜け出したウオッカがそのまま差を広げると、アサクサキングスに3馬身差をつけ圧勝。アドマイヤオーラは3着、フサイチホウオーは7着、ヴィクトリーは9着に敗れた。

ウオッカの単勝オッズは10.5倍。単勝オッズ10倍以上の馬がダービーを制するのは、1997年サニーブライアン以来10年ぶりだった。

ダービー後の活躍にも注目

牝馬によるダービー制覇は、1937年ヒサトモ、1943年クリフジに続く史上3頭目。64年ぶりの快挙となった。「牝馬が強い時代」と呼ばれて久しいが、それでも、2007年以降牡馬クラシックを制した牝馬はいない。ウオッカのダービー制覇は競馬界に大きな衝撃を与える勝利だったと言えるだろう。

2着に粘った伏兵アサクサキングスは秋に菊花賞を制覇。同年の最優秀3歳牡馬に輝いた。3着のアドマイヤオーラはGⅠ勝ちこそなかったものの、種牡馬として、数少ない世代からアルクトスやクロスクリーガー、ノボバカラといった名ダート馬を輩出。5着のドリームジャーニーは2009年に宝塚、有馬のグランプリ制覇を、13着のローレルゲレイロも同じく2009年に高松宮記念、スプリンターズSのスプリントGⅠ制覇を達成した。

ウオッカはその後、天皇賞(秋)やジャパンCを制するなど2010年まで現役を続けて一時代を築き上げた。引退後は海外で繁殖牝馬となり世界の名馬たちとの間に仔を授かったが、2019年に蹄葉炎を発症し急逝してしまう。しかし彼女の遺した産駒から、タニノフランケルが種牡馬となり、その血を繋いでいこうとしている。

今年のダービーはどのようなレースで、どの馬が勝つのだろうか。きっと、勝ち馬だけでなく敗れた馬たちもそれぞれの活躍の場を見つけ、輝いていくことだろう。ぜひ、ダービー当日だけでなく、彼らのその後にもご注目いただきたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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