【オークス】素質NO.1のナミュールの巻き返しが濃厚 穴馬はオークス一本に絞ったスタニングローズ

山崎エリカ

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ナミュールvsアートハウスか

桜花賞同日の忘れな草賞で、アートハウスが3馬身差の圧勝を飾った。忘れな草賞のアートハウスは7番枠から五分のスタートを切って、折り合い重視で好位の外。かなりのスローペースを2角で内に入れて、中団に近い位置でとにかく我慢の競馬。3角でも内々で脚を温存し、4角でも3列目の内目から直線序盤で先頭列の間を割って先頭に立つと、そこから突き抜けての勝利でした。前走のラスト2Fは11秒6-11秒1。

新馬戦ではラストで加速する馬は度々目にするが、前目内目が有利な馬場だったにせよ、リステッド競走でこれをやってのけたのはかなりの素質があればこそ。川田騎手が桜花賞馬ではなく、こちらを選んだのも納得だ。

しかし、今回は休養明けで好走した後の一戦。成長期のキャリアの浅い3歳馬で、いくら前走が余裕あるレース内容だったと言っても、今回で反動が出る可能性もゼロではない。将来性はかなり高く、古馬になってからのナミュールとの対決が楽しみで、今回も買い目に加えるが、全幅の信頼を置くことは難しい。

能力値上位5頭の紹介

2022年オークス出走馬のPP指数


【能力値1位 ナミュール】
昨年9月の新馬戦で2番手からラスト2Fを10秒8-10秒7で伸びて勝利と驚きの内容を見せ、その時点で高評価した馬。新馬戦で見せた瞬発力から現3歳牝馬世代の中では潜在スピード、素質はNO.1と評価していたが、前々走のチューリップ賞ではそれを見せつけるような勝ちっぷりだった。

前々走は中団中目を追走し、3~4角で包まれ、直線序盤でも進路がない状態。内回りとの合流地点で馬群がバラけたところを捌いてようやく外に出し、ラスト1Fで突き抜けて完勝。進路確保にスムーズさを欠きながらも、メンバー最速タイの上がり3Fタイムを記録した。

しかし、前走の桜花賞は10着完敗。前走は内有利馬場に加えて、4角からペースアップする流れ。18番枠からやや出遅れて、後方の外目を追走し、3角外から中団まで位置を上げたが、4角で外を回るロスが致命的となった。それでも勝ち馬との着差は0.3秒差という評価はできるが、同じように中団から4角で外を回ったサークルオブライフに最速の上がり3Fタイムを譲る形となってしまったのは、褒められるものではない。

前走時は末脚が不発する形だったが、これは桜花賞時のコラムでも指摘したように、休養明け好走の反動によるものだろう。一方、サークルオブライフは、国枝調教師が「(休養明けを)1回使われたことで落ち着きが出て、いい感じ」とコメントしていたように、桜花賞が目標だった。このことから同馬との逆転、また内枠を利して上位争いした馬たちとの逆転が期待できる。

【能力値2位 ウォーターナビレラ】
桜花賞2着馬。新馬戦からセンス抜群の走りを見せていた馬で、その後も毎回好内容のレースを続け、世代トップクラスの一頭として活躍してきた。前々走のチューリップ賞は、いかにも前哨戦といったレースぶりで、今までと違う脚をタメる競馬を試す形。9番枠から中団中目に収めていったが、3~4角で包まれ動けず、直線でも進路を作れずブレーキ気味と、スムーズさを欠いて5着に敗れた。

前走の桜花賞では、前々走で力を出し切てなかったことが功を奏して上昇。前目内目有利の馬場を6番枠を利して、2列目の内でレースを進めたことも相まって、ハナ差2着に巻き返した。4角から勝負に出て早め先頭に立ったぶん、ラストで甘さを見せてしまったが、実質上は1着と言える好内容だった。

ただ今回に向けてとなると、この馬の最大目標は桜花賞だったと推測されるだけに、楽観視はできない。また今回は1番枠だけに勝ちに行く競馬になると見ているが、先行策で一気の距離延長をこなすのは楽なことではない。武豊騎手と言えば、2013年のクロフネサプライズでかなり折り合い欠いて大逃げし、大敗してしまったことが思い出されるが、それと比べればウォーターナビレラはかなり折り合いが楽。総合能力の高さでどこまでやれるか。

【能力値2位 サークルオブライフ】
デビュー2戦目の未勝利戦では、出遅れて最後方から捲り上げていく大きなロスを克服しての勝利。その時点で高い潜在能力を感じた馬。その後はアルテミスS、阪神JFを連勝し、2歳牝馬チャンピオンとなった。前々走のチューリップ賞では3着に敗れたが、あくまでこの馬にとっては叩き台。今までと違う先行策を試し、いかにも前哨戦らしいレースぶりだった。この敗戦により、桜花賞本番では差すことを決めていたのだろう。

前走の桜花賞時は中間の追い切りが強化され、ピークのデキ。ただ、16番枠でナミュール同様に4角で外を回るロスが応えて、実に惜しい4着に敗れた。勝ち馬との着差は0.1秒差。内と外がフラットな馬場なら勝っていた可能性が高かったと見ている。前走では脚を余すような競馬になっており、実に惜しい内容だったが、前走が最大目標となると、今回は前走ほどの期待はできないだろう。

【能力値2位 ピンハイ】
新馬戦を勝利した後の前々走のチューリップ賞では2着。前々走は1番枠から出遅れて後方から最短距離競馬をしたことが好走要因だが、休養明けで最強クラスが揃った今年のチューリップ賞2着は高く評価できる。

前走の桜花賞も5番枠からやや出負けし、無理のない範囲の挽回で中団の内目に潜み、ここでも最短距離の競馬。ラスト1Fで狭いところを捌きながらの競馬になったが、内有利の競馬を加味すれば前々走同様に恵まれたと言える5着だった。

しかし、休養明けのチューリップ賞で激走した直後ながら結果は5着だったことから潜在能力はかなりのものを感じる。ここまでの成績は恵まれた面も目立つが、キャリアは浅いだけに、侮れない一頭と言えるだろう。

【能力値2位 スターズオンアース】
桜花賞馬。新馬戦では上がり3Fタイム32秒台の脚を使って2着と素質の高さは感じさせていた馬だが、その後は一戦ごとに着実に上昇してきた。前走の桜花賞は8番枠からやや出遅れ、押して挽回しながら中団馬群の中目を追走。最後はウォーターナビレラの後ろから同馬を目標に追ったら届いたという内容だった。

前走は鞍上の好騎乗と運が光った一戦。人気を背負って勝ちに行く立場だったら、ああいう競馬は難しかっただろう。今回は受けて立つ立場。また前走で能力を出し切ったように感じるので、上積みがどこまであるかも課題。それに今回の大外18番枠は前走桜花賞時のような致命的な不利と言える材料ではないのだが、有利と言えるものでもない。

穴馬はオークス一本に絞ったスタニングローズ

スタニングローズは芝1400mの新馬戦でデビューし、そこでは2着に敗れたが、そこから距離を延ばして上昇。初めての芝1800m戦となった前走のフラワーCで初重賞制覇を達成した。同馬は2歳時に新潟2歳S、サウジアラビアRC、デイリー杯2歳Sに出走し、そこでは3~5着だったが、実はどれも噛み合っていない。

新潟2歳Sは前半4F48秒5-後半4F45秒3のかなりのスローペースで前が有利の展開となったなか、五分のスタートを切りながらも内と外から寄って来られ、窮屈になって下がり後方からの競馬。サウジアラビアRCも前半4F50秒0-後半4F46秒4のかなりのスローペースで、ここでも前が有利の展開だったが、3角からラスト1F手前まで3列目の内で包まれ、仕掛けが遅れてしまう形となった。

そしてデイリー杯2歳Sでは、逃げ馬不在。これまでの競馬とは一転して好発を決め、ハナを主張して行ったが、外からプルパレイに出られて2列目の内に控える形。4角で2番手外から仕掛けていったが、ここではゆったりとしたペースで極端な上がり勝負となったために、キレ負けする形となった。

一方、タフな馬場で1Fの距離延長でもあった前走のフラワーCでは、1番枠からやや出遅れはいるものの、二の脚で無理なく2列目の内を追走し、最後までしぶとい粘りを見せた。芝1600mではテンに置かれ気味だったために再三の不利を受けたものの、芝1800mでは楽に追走。こういった一連の成績から、陣営は同馬を距離が伸びてこそと判断し、オークス一本に絞り込んできたのだろう。今回はこの距離で能力値上位馬やアートハウスとの差を、どこまで詰められるかが課題となる。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ナミュールの前々走指数「-16」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.6秒速い
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。


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