【京阪杯回顧】“前半32.7”の激流を断ち切ったエーティーマクフィ ルガルは内容濃い2着
勝木淳

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エーティーマクフィ、理想的な展開で一閃
ジャパンCデーを締める京阪杯はエーティーマクフィが制し、重賞初制覇。2着ルガル、3着ヨシノイースターで決着した。
ジャパンCの衝撃的な結末が東海道を飛び越えて乗り移ったかのような激しい競馬だった。ジャスパークローネ、カルチャーデイが競り、クラスペディア、ペアポルックスら先行勢を引き離していった。前半600m32.7は京都芝1200mでは珍しい猛ペース。外回りほどではないが、内回りも序盤は緩い上り坂に向かって進むため、ハイペースになりづらい。
このコースで前半600m32.7を切ったのは、ヘニーハウンドが勝った14年オパールSの同32.6だけ。京阪杯では記録されていない。後半は11.2-11.6-11.9と失速ラップを描き、上がり600mは34.7。その差2.0の前傾ラップとなれば、差し馬に出番が回ってくる。
勝ったエーティーマクフィはデビュー当初は芝を使われてきたが、2勝目が遠く、ダートへ転戦。初ダートで結果を残し、2年前の京都ダート1200m大山崎Sでオープン入り。その後も一貫してダート路線を歩むも、惜敗続き。そこで心機一転、再び芝に戻したところ、一発回答。今年の6月青函Sを12番人気で制した。
そして、今回は初の京都芝1200mで重賞初制覇。なんともつかみどころがない不思議な馬だ。かといって通算成績は【6-10-6-8】。芝、ダート問わず堅実に走っており、決してムラ馬でもない。レースも中団馬群の中でじっと脚をため、4コーナー出口で流れるように大外に持ち出し、末脚を炸裂させた。理想的なレース運びだった。
適性の幅が広いマクフィ
父マクフィはこれでJRA重賞6勝目。ダートはヴァルツァーシャルのマーチS1勝。残りはオールアットワンスのアイビスSD2勝とイミグラントソングのニュージーランドT、シリウスコルトの新潟大賞典、そして今回の京阪杯。短距離、マイル、中距離と偏りがなく、こちらもイマイチつかめない。重賞に限らず、通算でみると、芝53勝、ダート93勝でダート寄りの成績だが、勝率は6.4%、6.1%で変わらない。
さすがに2000mを超えると厳しいが、1000~2000mまで距離適性の幅は広い。2024年のサイヤーランキングは42位。そう目立つ種牡馬ではないが、自身が現役時代、ヨーロッパのマイルチャンピオンだったこともあり、総合力が高い。
さらにマクフィにはヨーロッパのチャンピオン種牡馬ドバウィの血が流れている。ドバウィの距離適性も広い。父ほどのスケールではないが、マクフィの幅広さは父に似ており、今後も様々なカテゴリーで活躍するだろう。ちなみに母の父の成績をみると、エーティーマクフィの母の父ハーツクライなど中距離志向のサンデーサイレンス系もいいが、米国血脈との相性もいい。
好位で残ったルガル
前後半600m32.7-34.7の急流だったことを踏まえれば、2着ルガルは好位から一旦、先頭と見せ場をつくった。前走はゲートが決まらず、後方からの競馬になったが、乗り慣れた西村淳也騎手に手替わりし、今回はスタートもクリアし、しっかり出していけた。
たとえハイペースであっても積極果敢に前をとり、粘り込む形が本来のスタイルであり、そういった意味で収穫があった。5歳にしてデビュー以来最高体重での好走はさらなるパワーアップを予感させる。
3着ヨシノイースターは7歳シーズンの今年、かなり調子がいい。春はオープンを勝ち、夏に重賞2着、秋はスプリンターズS5着と健闘した。さすがにもう厳しかろうと思ったが、今回もまた3着と気を吐いた。内田博幸騎手と手が合う印象もあり、引き続きコンビ継続なら追いかけてもいい。
京都らしからぬハイペースになり、同舞台オパールS1、2着メイショウソラフネ、ナムラクララは大敗を喫したが、それだけ特殊な流れであったことを覚えておきたい。年が明ければすぐ京都開催がはじまり、淀短距離S、シルクロードSと適鞍がある。京阪杯の着順によって人気が落ちるなら、狙いだろう。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 伝説のグランプリホース』(ガイドワークス)に寄稿。
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