【デイリー杯2歳S回顧】レコード決着で見せた勝負根性と脚力 アドマイヤクワッズがGⅠ戦線へ名乗り
勝木淳

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底力を引き出すイーブンペース
朝日杯FSの前哨戦にあたるデイリー杯2歳Sはアドマイヤクワッズが勝ち、重賞初制覇。2着カヴァレリッツォ、3着アイガーリーで決着した。
ジャンダルム、アドマイヤマーズ、セリフォス、ジャンタルマンタルとマイル以下のGⅠ馬を輩出した西の登竜門的レースを勝ったのはアドマイヤクワッズ。勝ち時計1:33.1は2歳コースレコードであり、上記先輩たちの記録を上回った。この時点でGⅠ候補の仲間入りを果たしたといっていい。
レースラップもレコードにふさわしいハイレベルであり、前半800mは12.3-10.9-11.3-12.0、序盤600m34.5、800m通過は46.5。京都の馬場コンディションが絶好だったにせよ、エイシンディードはやや速めのラップを刻んだ。
少頭数のせいか、それでも馬群はひと塊で進み、各馬、それなりに体力を消耗していた。特に2着カヴァレリッツォはエイシンディードがかなり内をあけて逃げていたため、がら空きのインに入って、前に馬を置けず、かなり行きたがっていた。
後半800mは12.1-12.1-11.2-11.2、800m46.6、ラスト600m34.5と前後半の落ち込みがほぼないイーブンペース。3着馬が大きく離された結果をみると、1、2着馬は力の違いをみせた。
勝ったアドマイヤクワッズは序盤、後ろに控え、インでカヴァレリッツォを壁に使う形で追走し、直線では各馬が避けるインに飛び込んでいった。最後の200mでは競り合いに持ち込み、わずかに前に出た。
直線の攻防はラスト2F11.2-11.2。後ろから差したアドマイヤクワッズはインに飛び込む作戦も功を奏したが、かなりの勝負根性と脚力の持ち主だ。
リアルスティール産駒、絶好調
アドマイヤクワッズの父であり、ブリーダーズCクラシックを勝ったフォーエバーヤングを送ったリアルスティールは、ここにきて絶好調。初年度産駒からレーベンスティール、オールパルフェと重賞ウイナーが出たものの、2勝クラスを突破できた馬が少なく、やや物足りなさもあった。
ところが、フォーエバーヤングの現4歳世代になると、2、3勝クラスの勝ち鞍が倍以上に激増。JRA重賞勝ちは11月9日時点までヴェローチェエラの函館記念だけだが、なにせダート世界一の馬がいる。
産駒の通算勝ち鞍を月別でみると、最多は3月の29勝。11月は勝率で3月に迫る数字を残す。早期組がデビューする6~9月の数字が落ちていることを踏まえると、じわじわと力をつけていく成長曲線を描く。3月の内訳では3歳1勝クラスが【8-4-1-16】勝率27.6%、複勝率44.8%と抜けており、少しばかり遅れてクラシック、ダート三冠路線に乗るイメージだ。
父リアルスティールは12月デビューから連勝を飾り、共同通信杯ではドゥラメンテに勝利した。その後はもどかしい成績が続いたが、4歳時のドバイターフでもう一枚殻をぶち破った。産駒の成長曲線は父によく似ている。
アドマイヤクワッズも2戦目でインパクトある勝ち方を披露した。父と同じく、ここからもう一段上のステージに上がる機会があるはずだ。1:33.1の勝ち時計はそんな奥行きすら感じる数字でもある。
意外性を秘めるモズアスコット
2着カヴァレリッツォは行きたがった前半を思えば、よく最後までアドマイヤクワッズに抵抗できた。こちらも体力的には非凡なものがある。
父サートゥルナーリアは一瞬の切れ味は目立つが、持続力勝負だと少し足りないといったイメージの産駒が多い。瞬発力で決められる展開に強く、ショウヘイ、ファンダム、フェスティバルヒルの重賞勝利はいずれもスローペースだった。
そう考えれば、持続力勝負だった今回はよく食い下がった。スローペースで折り合いを欠く危うさはありつつも、もう少し距離を延ばし、瞬発力勝負のレースでタイトル奪取と賞金加算を目指してほしい。
離れた3着はアイガーリー。ブービー人気ながら武豊騎手がしっかり3着にもってきた。デビュー戦はスローを逃げて上がり33.7とまとめ、今回は多少上がりをかけつつも、1:34.0と時計を詰めた。それも控えて達成しており、こちらも将来性を感じる。
モズアスコットも二世代目の今年は2歳重賞でも結果を残し、全9勝中3勝は7、8番人気(11月9日時点)、9番人気2着2回など、意外性の種牡馬でもある。3歳世代で穴を開けまくったファウストラーゼンのような馬を探し、味方につけよう。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『もう一つの引退馬伝説2 関係者が語るあの馬たちのその後』(マイクロマガジン社)に寄稿。
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