【スプリンターズS】「高松宮記念10着以下」をあえて狙うべし データで導く穴馬候補3頭

鈴木ユウヤ

スプリンターズステークス2024、データで探す穴馬,ⒸSPAIA

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データで見る「穴候補3頭」

今週日曜の中山メインはスプリンターズS。下半期のGⅠシーズン開幕を告げる短距離決戦だ。昨年覇者のママコチャに高松宮記念を制したマッドクール、悲願のタイトルを狙う実力馬ナムラクレア、そして前哨戦を勝ったサトノレーヴ、トウシンマカオの「5歳5強」が中心となりそうだ。

しかし現在のスプリント路線は絶対王者がいない混戦模様。高松宮記念とスプリンターズSでは直近3年、計6戦連続で1番人気馬が連対を外している。波乱の予感も十分に感じながら、様々な切り口のデータを駆使して3頭の穴候補を導き出した。


「高松宮記念大敗馬」はむしろ高回収率 ルガル

まず1頭目はルガルを取り上げる。年初のシルクロードSは先行抜け出しで3馬身差勝ち。その走りを受けて高松宮記念では1番人気に推されるも10着に敗れ、レース後に骨折が判明した。今回は半年ぶりの実戦となる。

スプリンターズSを予想する上で押さえておきたいポイントのひとつは「高松宮記念と結果がさほど連動しない」ということ。左回りで長くタフな直線を持ち、そして雨に見舞われやすい春の中京と、右回りで直線は短く、たいてい高速決着になる秋の中山では好走馬が変わるのも当然だろう。

スプリンターズS 同年高松宮記念の着順別成績,ⒸSPAIA


データで示そう。過去9年(※14年は新潟代替のため除外)のスプリンターズSにおいて「同年の高松宮記念9着以内」は【3-4-3-31】勝率7.3%、複勝率24.4%、単回収率20%、複回収率63%。これに対し「同10着以下」は【2-2-3-16】勝率8.7%、複勝率30.4%、単回収率107%、複回収率149%となっている。上半期のスプリントGⅠで大きく負けていたグループの方がむしろ好走率も回収率も高い。この逆転現象を馬券に生かしたい。

ルガルはこれまで1200m戦で【2-2-0-1】。高松宮記念の敗因を道悪、あるいは骨折の影響と割り切ってしまえば、この距離ではまだ底を見せていない。問題は故障明けでどこまで仕上がっているかだが、1週前追い切りは時計、ラストの伸びともに上々だった模様。力を出せれば好勝負になっていい。


「古馬重賞で連対した3歳馬」は買い! ピューロマジック

2頭目は3歳の快速馬ピューロマジック。葵S、北九州記念と逃げて連勝したが、セントウルSで13着と敗れたことにより、やや評価を落として本番を迎える見込みだ。

スプリンターズS 3歳馬の成績,ⒸSPAIA


過去10年の当レース(14年の新潟開催含む)において、3歳馬の成績は【1-2-1-16】複勝率20.0%、複回収率98%。悪くはないが、特段よくもないように見える。ただ、これは世代限定戦の実績しかない馬が数字を下げているもの。「古馬(3歳以上)重賞で連対したことがある馬」に限ると【1-2-1-7】複勝率36.4%、複回収率178%までアップする。年長馬と渡り合えることを証明済みの3歳馬は穴として面白い。

ピューロマジックは北九州記念が前後半32.3-35.6の超ハイペース逃げで、後続にも脚を使わせて押し切る内容だった。一方のセントウルSはレースラップで前後半33.6-34.1と、打って変わって他馬を引き付けるスタイル。結果から言えば、こういう質の逃げ方が合わなかったのだろう。

中山芝1200mはスタートから下り坂。ビュンビュン飛ばして持ち味を生かせば、ラスト200mの坂で鈍っても残り目はある。


芝1200mは香港馬強し! ムゲン

最後は香港短距離界からの刺客ムゲンをピックアップする。前走で軽ハンデにも恵まれて初めて重賞(GⅢプレミアC)を勝ったばかりだが、強気に日本遠征を敢行してきた。

「スプリント大国」とも言われる香港競馬はその異名にたがわず短距離馬の層が厚い。しばしばJRAにも遠征してきては、日本馬相手に互角以上の戦いを見せてきた歴史がある。

香港馬のJRA芝1200m重賞成績,ⒸSPAIA


1986年以降のJRA芝1200m重賞において、香港調教馬の成績は【3-2-2-13】勝率15.0%、複勝率35.0%、単回収率189%、複回収率146%。機械的に単複を買うだけでプラス収支だった。

特にアツいのは「日本初出走」のレースで【2-2-2-5】勝率18.2%、複勝率54.5%、単回収率325%、複回収率255%とインパクト大の数字だ。日本のファンに名が売れていない状態の方が馬券妙味にも富んでいる。

……という話を高松宮記念の時にも紹介したところ、ビクターザウィナーが5番人気3着ときっちり結果を出した。同じパターンをムゲンにも期待しよう。

今春に行われたチェアマンズスプリントプライズでは3着。高松宮記念上位馬のビクターザウィナー(7着)、マッドクール(11着)に大きく先着している。アウェーでの戦いになるが、能力的には本邦の一線級ともヒケを取らない。

<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、X(Twitter)やブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。

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