【ローズS】最有力オークス組は「前走人気」にヒントあり タガノエルピーダの巻き返しに期待

勝木淳

過去10年のデータから見るローズS,ⒸSPAIA

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ローズSの難しさ

秋の3歳戦線は牡馬が距離を嫌い、菊花賞ではなく、古馬相手の中距離戦線や海外遠征と多様な目標を定めて散っていくのに対し、牝馬は既成勢力がそろって秋華賞へ向かっていく。もちろん、2000mは2400mのオークスを戦った馬にとって、短くなるので、与しやすいのは確かだ。だが、形状でいえば、そう簡単とはいいきれない。舞台は京都内回り。ここまで牝馬GⅠはすべて直線の長いコースで行われており、内回りは最終戦にして初。リバティアイランドのような絶対的エースがいれば杞憂に終わるも、混戦の今年は枠順や適性など気にしないといけない要素は多い。

今年のローズSは中京芝2000mで行われる。直線は412.5mもあり、直線に入るとすぐに急坂が残り200m標識の手前まで続く。ラストの平坦200mはスタミナ残量で決まる。ちょっとトリッキーな舞台が前哨戦になった。この舞台でローズSが行われたのは20~22年の3回。リアアメリア、アンドヴァラナウト、アートハウスが勝ち、前走オークスは2勝。唯一、春GⅠ不出走だったアンドヴァラナウトは秋華賞も3着と気を吐いた。この舞台で既成勢力を負かせば、GⅠでもやれる。残る2頭は秋華賞13、5着。休み明けでここを勝つと、次走までの中3週。GⅠに向け、上昇カーブを描かせるには、時が足りないのか。

直行ローテが主流になり、1週前の紫苑Sに対し劣勢なのは、ここに理由がある。サラブレッドの心身を最高潮まで高め、維持していくのは容易ではない。ホースマンではない我々には豊かな想像力が欠かせない。ぜひ、データとともに馬券に役立てよう。データはローテーションを中心にローズS過去10年分を使用する。

人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気【3-2-1-4】勝率30.0%、複勝率60.0%が少し抜けているが、2~5番人気は各1勝と上位は実力が拮抗している。一方で6番人気【0-2-1-7】複勝率30.0%、7番人気【2-0-1-7】勝率20.0%、複勝率30.0%など伏兵陣も抵抗する。10番人気以下【0-4-2-65】複勝率8.5%など権利をかけた一発激走もある。

所属別成績,ⒸSPAIA


東西にトライアルがひとつずつ組まれる秋は本番が西の京都で行われるだけあり、関西馬【9-8-9-116】勝率6.3%、複勝率18.3%、関東馬【1-2-1-13】勝率5.9%、複勝率23.5%。複勝率こそ関東馬が若干上回っているものの、数では関西馬が一方的。ただ、関東馬は1、2番人気なら【1-2-1-0】なので、レガレイラには当てはまらなさそうだ。舞台は東西の中間地点の中京。関西馬も輸送がある。

見直せるタガノエルピーダ

春は牡馬相手にクラシックを戦い、6、5着だったレガレイラ。秋ははじめて牝馬路線に出てくる。実績的には申し分ない。だが、牝馬限定戦には限定戦特有の流れがある。持久力勝負とは違う瞬発力勝負になった際は位置取りの差でわからない。

前走クラス別成績,ⒸSPAIA
前走オークス・着順別成績,ⒸSPAIA


前走オークスは【6-2-3-34】勝率13.3%、複勝率24.4%。当然最有力だが、オークス1着【2-1-0-0】をはじめ5着以内【4-1-3-5】、6着以下【2-1-0-28】なので、掲示板は目安になる。4着クイーンズウォークは実績も申し分ない。春二冠は8、4着。当然、2000mはいい。

6着以下でもオークス9番人気以内だと【2-1-0-18】。着順で区切らず、前走オークス全体で見ても10番人気以下は【0-0-0-12】。春クラシック出走の既成勢力は着順より人気を目安にしたい。というのも着順は結果だが、人気はオークスまでの過程が決め手。春のプロセスが良かった馬は秋になっても決して見限ってはいけない。オークスではなにかしらの要因で結果を残せなかったかもしれないが、そこまで積み上げたプロセスと経験は財産そのもの。決して消えることはない。オークス6着以下、かつ9番人気以内は16着タガノエルピーダ。2歳時は新馬直後に朝日杯FS3着。チューリップ賞は4着も忘れな草賞を勝利。オークスでは気難しさをみせ、大敗したが、休み明けでフレッシュな状態なら違う。

前走条件戦・着順別成績,ⒸSPAIA


前走条件戦組は前走1着が【4-4-3-46】勝率7.0%、複勝率19.3%。まずは条件戦を突破した馬を重視したい。とはいえ、2着【0-2-1-8】複勝率27.3%、4着【0-1-2-3】複勝率50.0%など、牝馬は負けても好走する場合があるので、注意が必要。前走条件戦1着は数が多いが、前走4番人気以内で勝利だと【4-4-3-38】。5番人気以下【0-0-0-8】なので、少しは絞れる。条件戦で人気を背負って勝っている事実を重視しよう。やはりここも人気だ。

過去10年のデータから見るローズS,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。

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