【ニュージーランドT回顧】エコロブルームとボンドガールが貫禄示すワンツー 中山マイルで輝いた父ダイワメジャーの活力

勝木淳

2024年ニュージーランドT、レース結果,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

実績ある関東馬の出現

2024年4月6日に中山競馬場で開催されたニュージーランドTは、終わってみれば前走重賞2着のエコロブルームとボンドガールのワンツーフィニッシュ。実績馬が一枚上だった。平均ペースでも序盤が緩かった流れは本番で影響しそうだ。

レース前から再三指摘されてきたように、ニュージーランドTはアーリントンCが4月に移ってきた2018年以降、確実にメンバーレベルが低下した。関西の実績馬、上がり馬が遠征を避け、地元のトライアルに向かうので仕方ないことだ。これをいつまでも嘆いても意味がない。現行の枠組みのなかでいかに存在感を示せるのか。そのひとつの答えが、今年のレースにあった。

2018年以降、前走重賞だった馬は【1-5-4-30】。前走条件戦が【4-1-2-30】で、1勝クラス1着馬【3-1-1-20】に対し、重賞3着以内【0-2-0-4】と明らかに重賞好走馬の出走が減った。だが、これは単に減っただけで、相性が悪くなったわけではない。

実際、今年は前走重賞2着のエコロブルーム、ボンドガールがワンツーで、前走重賞3着以内は【1-3-0-5】に変わった。やはり力関係は1勝クラスを勝った昇級組より直前の重賞で好走した馬が上だ。

どちらも関東馬であり、マイル路線も重賞で戦える関東馬さえいれば、関東のトライアルの格もあがる。3着には同舞台で1勝クラスを勝ったばかりのユキノロイヤルが入ったが、これが現状の力関係とみるべきだろう。


ダイワメジャーの活力

ユキノロイヤルの好走は先手を奪い、マイペースに持ち込んだことで展開利を引き寄せたことが大きい。前後半800mは47.3-47.1のイーブンペースだが、序盤600mが36.0と遅く、ユキノロイヤルは必要以上に脚を使わずに平均ペースを演出できた。ラスト600mは35.5なので、最終的には後傾ラップになり、後ろから末脚に賭ける形では上位進出は叶わない。

このコースは2コーナーに突入する200~400mのラップが流れを決める。今年は11.6で、直近10年では17年ジョーストリクトリが勝った年に並ぶ最遅ラップでもあった。先週のダービー卿CTにつづき、ここが遅いと先行馬にとって中山の直線はそう苦しくない。余力さえあれば、急坂も怖くはない。

エコロブルームは道中インの3、4番手で運び、折り合いを欠いたキャプテンシーが動いても平常心を保ち、直線に向いた。完成度の高さを感じさせるレース運びだった。

実績馬に理想的なポジションで流れに乗られてはどうしようもない。やはりハイペースを我慢したシンザン記念の経験は大きく、今回はかなり楽に追走できたのではないか。かわって、本番はまたも厳しい流れになる可能性がある。次に向けてこのレースがどう影響するのか。しっかり考えたいところでもある。

父ダイワメジャーには本当に頭がさがる。翌日桜花賞のアスコリピチェーノもいるが、ディープインパクトもキングカメハメハもハーツクライもいないなか、孤軍奮闘している。

内国産のライバルたちは2010年代に活躍した馬たちばかり。ひと世代上のダイワメジャーはまだまだクラシックや3歳マイル路線で活力を示している。現役時代同様、本当に頑健で丈夫な馬だ。母の父ノーザンテーストの凄みを改めて感じさせてくれる。


穴種牡馬ディーマジェスティ

2着ボンドガールは桜花賞除外によって、同週のこちらに回ってきた。2/3の抽選で弾かれた不運こそあったが、ここで2着と気を吐いたことでまた次へつながっていく。

昨年は似たパターンのウンブライルがNHKマイルCでも2着と好走した。実績面ではボンドガールが上回る。秋から少し順調さを欠いていたが、上手に流れに乗り、2着と好走したことで再浮上のきっかけをつかんだのではないか。こちらも父ダイワメジャー。秘める活力は高い。

除外馬が別の重賞で激走するのは、阪神牝馬Sの3着馬モリアーナと同じパターン。GⅠ出走を目指した馬はたとえ除外されても状態がよく、しばらくこのパターンには注意が必要だろう。

3着ユキノロイヤルは近年の好走パターンのひとつ。前走マイルの1勝クラスを勝ち、昇級初戦だった。特にこの馬は東京で3戦3敗、中山は2戦2勝の明らかな中山巧者でもある。好位から粘り込む形をみても、速い上がりでは好走できない。今回はそういった特徴と枠順を踏まえ、先手を奪いに行ったのが功を奏した。

父は皐月賞馬ディーマジェスティ。産駒の競馬場別最多勝も中山の10勝で、中山開催中は忘れずにチェックしたい。芝1600mは勝率も高く、回収率も単勝が250%、複勝も104%と高い。ユキノロイヤル自身も今回9番人気で、これまでの2勝も3番人気と6番人気だった。人気になりにくい種牡馬なので、ぜひ味方につけよう。


2024年ニュージーランドT、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬中心の文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。

《関連記事》
【皐月賞】前走ホープフルS勝ち馬は文句なしの主役 レガレイラが76年ぶりの快挙へ視界良好
【アンタレスS】複勝率66.7%の名古屋城S組 テーオードレフォンはデータ、展開ともに向く
【アーリントンC】関西主場のマイル組が狙い目 中心はオフトレイル、ディスペランツァ

おすすめ記事