【阪神大賞典】キセキ本命は最適解ではない!4歳馬の2着狙いに妙味あり

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今も昔も役割は変わらず
3月22日(日)に阪神競馬場で行われる阪神大賞典は、誰もが認める天皇賞・春の最も重要な前哨戦。少なくとも、20年前はそうだった。しかし、今はステイヤー受難の時代で、長距離レース数の減少とともに長距離馬の層も手薄な状態が続いている。
幸い、天皇賞・春はほとんどの年でフルゲートに近い頭数を確保できているが、ピークを過ぎた高齢馬や重賞実績のない馬の参戦が目立ち、この阪神大賞典ともども質が落ちているのは間違いない。

そんな中、阪神大賞典の位置付けは変わったのだろうか。2000~2009年、そして2010年~2019年の10年間を比べてみたが、天皇賞・春で馬券に絡んだ馬はともに阪神大賞典組がトップだった。どうやら、本番に向けての最も重要な一戦というのは不変のようである。
JC組<有馬記念組

今回も過去10年のデータを元に検証を進めてみる。昨年末にGIを連戦した実力馬が年明け初戦に選択するレース、というのが率直な印象だが、データでも前走でGIを使っていた馬の成績がよく、9連対と半数近くを占めている。続いてGⅡ、GⅢ組がそれぞれ4連対。オープンや条件戦を使ってきた馬は勝率0%となっている。
GIの中でも特に有馬記念組が【4.5.1.5】と好成績。サンプルは少ないとはいえ、ジャパンカップ組は【0.0.1.2】と結果が出ていない。有力視されるユーキャンスマイル、ムイトオブリガードがジャパンカップ組となるが、不利なデータを覆せるのかどうか。


年齢別では4歳馬、5歳馬、6歳馬……と、年齢が上がるにつれて勝ち数が減っていく。4歳馬は9連対で、勝率、連対率ともに優秀な数字。ちなみに、昨年は1~3着を6歳馬が独占したが、これは出走馬が全て6歳以上だったため。基本的に「出走メンバーで一番若い年齢の馬が好走する確率が高い」と考えてよさそうだ。
東西の所属別に見ると、栗東所属が10勝2着8回で、美浦所属馬を圧倒している。来週に行われる日経賞は東西拮抗していることを思うと、かなり偏った数字だといえる。
ただ、好走確率の高い4歳馬との組み合わせで見ると、4歳馬+美浦所属馬は【0.2.0.2】と連対率が5割。つまり、ここ10年で連対した関東馬は4歳馬だけ。今年の出走馬ではボスジラがそれに該当する。
古きよきステイヤー、メロディーレーン
このレースもサンデー系が強いレースなのだが、中でもステイゴールドとハーツクライ産駒がそれぞれ6連対。特にステイゴールド産駒は勝率4割、連対率6割と圧倒的な数字。阪神大賞典は内回りの長距離戦。ステイゴールドが最も得意とする分野とはいえ、それにしてもこの成績は優秀である(半分はゴールドシップ1頭で稼いだものだが)。
血統ついでに、本サイトでもおなじみ勝木氏の注目馬、メロディーレーンについても少し触れておこう。とある海外サイトを使って、阪神大賞典に登録している全頭のドサージュ(配合理論)を調べてみたのだが、結果は、DI(Dosage Index)、CD(Center of Distribution)ともに、メロディーレーンが抜けてスタミナ寄りという結果が出た。
逆にいえば、現代競馬、特に日本の芝でさらに上を狙うにはスピード不足ということでもある(阪神芝2600mでレコード勝ちしているが、ここ10年で10回しか行われておらず、しかも未勝利、500万、1勝クラスしかサンプルがなくうのみにはできない)。
時計や上がりがかかること、また1週前のデータにあったように外枠を引くことなど、好走するにはいくつものハードルを越えなくてはいけないが、長距離戦が最も可能性のあるレースなのは間違いない。父がこのレースと相性のいいステイゴールド産駒ということもあり、同じ京都の外回りで行われる菊花賞より条件は合っているはずだ。
キセキで仕方ない、こともない
1番人気に◎を打って飛んでいく日々が続いているので、何とか穴馬をと思うのだが、何せこの阪神大賞典はここ10年で半分以上が馬連3ケタ配当の本命戦。データ上、人気馬に寄っていくのも仕方がないのだろうか。
そのデータで最も注目したいのは、やはり有馬記念組が強いこと。続いて、4歳馬、そしてステイゴールドorハーツクライ産駒になる。
今年のメンバーで有馬記念組はキセキだけ。有馬記念はスタートした瞬間に天を仰いだファンも多かったと思うが、3角で9番手以下の馬が上位独占した結果からすると、逃げていれば大敗していた可能性は高い。しかし、あくまでも可能性であって、逃げて強い競馬をしたかもしれないし、この馬が前へ行くことによって展開が変わっていたかもしれない。それはともかく、差す競馬で善戦した前走を踏まえると、これまでのようにハナにこだわることはなさそう。発馬が決まり、他馬が行かなければ行く、というスタンスになると思われる。
ルーラーシップの父はキングカメハメハだが、実はキングカメハメハ産駒は芝3000mで勝ち星がない。ただ、その後継者は多種多様でつかみどころがないのもこの系統の特徴。少なくともルーラーシップ産駒はキセキ(菊花賞)がいるし、今年の万葉Sの2着馬もルーラーシップ産駒だったように、キングカメハメハより長距離適性がありそうだ。
キセキに死角がないように思えるが、あきらめずに探してみよう。同じルーラーシップ産駒のムイトオブリガードはどうか。不良馬場で菊花賞を勝ったキセキとは対照的に、こちらは条件戦ながらレコード駆けの実績がある。重馬場だったJCに目を瞑る手もあるが、有馬記念組を差し置いてJC組を上にするのは抵抗があるし、キセキだって一昨年のJCで本来のレコードよりはるかに速いタイムで走っている。同じくJC組のユーキャンスマイルは3000mで勝ち星のないキングカメハメハ産駒で、さらに厳しい情勢。
好走率の高い4歳馬は4頭いて、そのうちの3頭がディープインパクト産駒。その中ではボスジラに注目。上記に挙げたように、4歳馬の関東馬は【0.2.0.2】。さらに、条件戦を経由してきた馬は勝率0%。この馬の2着狙いが正解のような気がしてきた。
今回、ステイゴールド産駒はいないので、その孫メロディーレーンとハーツクライ産駒はどうだろうか。ハーツクライ産駒はタイセイトレイルとレノヴァールの2頭。ともに5歳馬、栗東所属でダイヤモンドSを経由しており、着順も4、5着と似たようなもの。本命にするには強調材料が少ないものの、ノーマークにするほどデータは弱くない。ともに連候補に入れておこう。
最後にメロディーレーン。キングカメハメハ→ルーラーシップのラインと違って、ステイゴールド→オルフェーヴルは産駒の特徴が割と似ている。父系はクリアとするが、条件戦上がりの馬は勝率0%。何より不運なのは、道悪などで時計がかかって台頭するという特徴が、格上のキセキも同じということ。そのキセキだが、JCを好時計で走っており万能型なのは間違いないが、フィエールマンとブラストワンピースが最下位、ブービーに沈んだ凱旋門賞で頑張ったように、個人的には重い芝の方がより得意と考えている。それはさておき、メロディーレーンは1着となるとさすがに難しそうだが、相性のいい父系や好走率の高い4歳世代ということで、馬券圏内なら十分可能性はあるだろう。
勝つのはキセキかもしれないが、ボスジラが2着に来るのはデータ的に十分あり得る。配当的な妙味も考えて、今回はボスジラに◎を打ってみる。もちろん、馬券はボスジラの2着固定で。こういう買い方もデータならでは、といえるかも?
◎ボスジラ
○キセキ
▲メロディーレーン
△タイセイトレイル
×レノヴァール

門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。
競馬ニホンが休刊となってもうすぐ2年。時がたつのは早いなと思いつつ、物忘れと老眼の進行の速さにも驚いている。
