「吉田勝己氏の牝馬」は買い!東大HCが「ラストラン」を徹底分析

東大ホースメンクラブ

引退レースインフォグラフィックⒸSPAIA

ⒸSPAIA

実際に馬はラストランで走っているのか

引退レースインフォグラフィックⒸSPAIA

今週のコラムのテーマは「ラストラン」。規定によりクラブ所属牝馬は6歳春シーズンをもって引退するため、初春のこの時期によく聞かれるフレーズだ。古くはオグリキャップやディープインパクト、オルフェーヴルの有馬記念が印象的だ。

直近でもリスグラシューが有馬記念で見事にGⅠ3連勝を飾り、先日の川崎・エンプレス杯を制したアンデスクイーンもこれが引退レースだった。週中のレース記事では「有終の美」「万全の仕上げ」などの煽り文句が躍るが、実際に馬はラストランで走っているのか、データを使って分析する。

分析に用いるデータは、過去5年に中央での引退レースを走った馬のうち、未勝利を脱出できなかったことが理由の抹消を除くため、「4歳以上」まで現役を続けた馬のラストランとする(期間は断りない限り2015年3月14日〜2020年3月7日)。

3月はラストランが狙える?

最初に引退レースの全体成績を確認する。

ラストランのレース・過去5年成績ⒸSPAIA


凡走が続いて引退する馬がかなりの数に上るため、全体成績は芳しくない。回収率は全体で単勝:25%、複勝:20%と低水準だ。前走掲示板組や人気を集めている場合など、能力の衰えを見せていない馬に限定しても好走率・回収率ともに強調材料に欠ける。

ただし月別成績を確認すると、3月は7月に次いでラストランの馬が結果を残していた。3月にラストランを迎えた馬の成績は、
(全体成績)【14-13-18-514】勝率2.5%/連対率4.8%/複勝率8.1%
前走5着以内【8-8-15-107】勝率5.8%/連対率11.6%/複勝率22.5%
5番人気以内【11-11-11-74】勝率10.3%/連対率20.6%/複勝率30.8%
と複勝率が向上する。さらに牝馬に限定すると好走率・回収率ともに改善していた。

ラストランのレース・過去5年のクラス別成績ⒸSPAIA


次にクラス別成績を確認。低水準ではあるものの、上級条件になるに従い好走率が向上する比例が見られる。

GⅠでは期間内に12頭が馬券になっているが、このうちレース前から引退が決まっていた馬は非常に少ない。つまり、純粋な意味での「引退レース」の好走率は数字よりも高くない。ラストランのGⅠで好走した馬の一覧を次の表にあげた。

ラストランのレース・過去5年のGⅠで馬券になった馬と引退理由ⒸSPAIA


ほとんどが故障を理由に予期せぬラストランになったケースで、レース前から引退が決まっていた例はほんのわずかしかない。GⅠでは引退レースとなる馬を積極的に狙いにくいのが実情だ。

中山牝馬Sはラストランを狙え

次にラストランとなる牝馬に限定して成績を確認する。

ラストランのレース・牝馬成績ⒸSPAIA


※クラブはG1レーシング、ウイン、キャロットファーム、グリーンファーム、サラブレットクラブ・ラフィアン、サンデーレーシング、シルクレーシング、ターフ・スポート、ノルマンディーサラブレッドレーシング、ヒダカ・ブリーダーズ・ユニオン、ライオンレースホース、ロードホースクラブ、ローレルレーシング、広尾レース、社台レースホース、大樹ファーム、東京ホースレーシング、優駿ホースクラブ

こちらも1割に満たない好走率だが、クラブ所属牝馬の好走率が全体より高い。前述したサンビスタやリスグラシューなど、ラストランで結果を残しているイメージが強いが、規定による引退が決まっている6歳シーズンに限定すると、
6歳×クラブ所属牝馬【5-5-10-146】勝率3.0%/連対率6.0%/複勝率12.0%
と好走率がおよそ倍になる。昨年の中山牝馬Sで11番人気ながら3着に頑張ったアッフィラートも該当馬の1頭だ。中山牝馬Sは引退レースとなるクラブ牝馬が走っており、過去5年でもアッフィラート、17年2着マジックタイム、15年2着アイスフォーリスが馬券になっている。

6歳牝馬に限定したクラブ別成績ではサンデーレーシング(【2-3-2-25】複勝率21.9%)とシルクレーシング(【1-1-2-14】複勝率22.2%)の信頼度が高い。成績が悪いのはキャロットファーム(【0-1-1-27】複勝率6.9%)・社台レースホース(【0-0-1-15】)・GⅠレーシング(【0-0-0-11】)だった。

クラブではないものの、ラストランとなる牝馬の好走率が最も高いのはノーザンファーム代表・吉田勝己氏だ。該当馬は【4-4-2-36】複勝率27.8%、単勝回収率は166%と群を抜いている。万全の仕上げで臨む氏の所有牝馬にはぜひ注目してほしい。

ラストランのレース・過去5年の調教師別成績ⒸSPAIA

最後に調教師別成績を確認する。サンビスタを見事GⅠ勝利に導いた角居勝彦調教師は2割に迫る連対率を誇っている。角居調教師を複勝率で上回る国枝栄調教師は10番人気以内に限定すると複勝率が3割ちょうど、単勝回収率138%・複勝回収率78%と出色の数字をマーク。まずはこの2人の調教師を押さえておきたい。

須貝尚介調教師は人気馬を中心に好走しており、信頼できる調教師の一人。大久保龍志調教師はダノンシャークは引退レースとなった16年のマイルCSで14番人気ながら4着に激走したのが記憶に新しい。全体でも2割近い好走率を残し、芝に限定すると複勝率22.2%、単勝回収率は158%に達する。管理馬がラストランでターフを沸かせる姿に期待が持てる。

おすすめ記事