【オーシャンS】ナックビーナスはデータを覆して今年も2着 ダノンスマッシュは悲願のGⅠ制覇に向けていざ高松宮記念へ

勝木淳

オーシャンSインフォグラフィックⒸSPAIA

ⒸSPAIA

ひたむきなビーナス

昨秋のスプリント王タワーオブロンドン、挑戦者候補第1位のダノンスマッシュがぶつかった前哨戦オーシャンSは挑戦者ダノンスマッシュが1.07.4の好時計で勝利した。

対してタワーオブロンドンは58キロという斤量が響いたのか、直線入口でダノンスマッシュに突き放され、最後は地力でジリジリと伸びて3着という結果に終わった。

それら主役ではなく、ナックビーナスに注目したい。7歳牝馬の好走例が少ないオーシャンSで2着と気を吐いた。ただの2着ではない。このレース4年連続の2着なのだ。同一重賞4年連続2着というのは早々生まれるわけではない立派な記録である。

6歳シーズンは香港遠征と夏の札幌のあとに休養と順調ではなかったが、暮れの12月ラピスラズリSで復帰(1着)、中1週で阪神遠征(タンザナイトS2着)と驚異的なファイトバックを見せた。そして挑んだオーシャンS。オープン特別3勝、3年連続重賞2着の中山芝1200m、その攻略法はすでに馬自身も知っているはずだ。先手をとったエンゲルヘンを余裕で先にやり、自身は2番手で収まる。隊列が決まれば動きがないのも中山芝1200m。途中で自身を脅かすような馬は来ない。直線で逃げるエンゲルヘンを捕らえ、早めに先頭へ。

ここから急坂を我慢して乗り越えればゴールがある。最後はひたすら粘るだけ。ナックビーナスの粘り腰は4年目になった今年も変わらなかった。ひたむきなビーナスの競馬は無情にもダノンスマッシュに屈して2着に終わった。4度目の正直とはならなかったわけだが、競馬ファンに彼女が教えてくれたことは伝わっただろう。これだけでもナックビーナスがオーシャンSを走った意味はあった。勝てない悔しさにうつぶかず、前を向いてほしいと思う。

高松宮記念へむけて

前半600m33.1-後半600m34.3というラップ、特に後半の34.3に注目したい。タワーオブロンドンのスプリンターズSは前半32.8-後半34.3。前半が速く後半は同じであれば、スプリンターズSの方がレベルが高いわけだが、9月の中山は野芝オンリーの超高速馬場。

洋芝をオーバーシードされ、休眠期から立ち上がり中のこの時期の芝での記録であることを踏まえれば、オーシャンSは価値が高い。後半600m34.3でもっとも速い脚を使ったのがダノンスマッシュ。オーシャンSの価値はすなわちダノンスマッシュの価値でもある。これまで苦手とされてきた坂があるコースでの好走は、いよいよ最後のピースが埋まったような印象すらある。

休み明けの58キロが原因で敗れたタワーオブロンドンとの差が本番でどのぐらい詰まるのか。それとも今回の差はそのままなのか。個人的にはこの差は詰まらないと考えている。ダノンスマッシュ、もはや王手だ。

オーシャンSインフォグラフィックⒸSPAIA

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「 築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。

おすすめ記事