「ディープ産駒の複勝率33.6%」東大HCが阪神芝1600mを徹底検証

東大ホースメンクラブ

阪神芝1600mインフォグラフィックⒸSPAIA

ⒸSPAIA

コース紹介

阪神芝1600mインフォグラフィックⒸSPAIA

阪神芝1600mは2006年のコース改修によって誕生した外回りが舞台。向正面をスタートして3コーナー手前まで上り、4コーナーの途中まではほぼ平坦な道を進む。残り3ハロンあたりから400m程度の下り坂を迎え、ゴール前の急坂(高低差1.8m)を駆け上がるとゴールが待ち受ける。

当該コースが舞台の重賞は6レース。グレード順に、GⅠは3歳牝馬三冠の初戦を飾る桜花賞、暮れの2歳最強マイラー決定戦の阪神JF・朝日杯FS、GⅡは桜花賞の最重要ステップレースであるチューリップ賞、ヴィクトリアマイルの前哨戦となる阪神牝馬S、GⅢは3着までにNHKマイルへの優先出走権が与えられるアーリントンCが行われる。

これらのレースに加え、2020年は京都競馬場改修などに伴う開催日割の変更を受けてさらに3つの重賞が開催される(GⅠマイルCS、GⅡデイリー杯2歳S、GⅢ中京記念)。(使用するデータは2015年3月7日〜2020年2月29日)。

奇妙な枠別成績

阪神芝1600m・過去5年の枠別成績ⒸSPAIA


枠別成績はこれまでのコース記事に見られなかった奇妙な並びを示している。成績が良いのは1枠・2枠・5枠・6枠。成績が悪いのは7枠・8枠・3枠・4枠だ。特に3・4枠は回収率も他の枠と比べて段違いに低い。オープン特別以上の48レースに限定した3枠の成績は【3-4-4-67】複勝率14.1%、単回率18%・複回率32%とさらに一段階数字を落としており消し材料だ。反対に距離ロスの少ない内枠は好走率が高いため注視が必要。

阪神芝1600m・過去5年の脚質別成績ⒸSPAIA


脚質別成績では逃げが最も有利だが、先行馬も複勝率では引けを取らない。過去5年の当該コースの前後半平均ラップは「48.1-46.9」と後傾ラップとなっていることからも前有利はうなずける。ただし外回りコースらしく直線が長いため差しも比較的届いており、上がり3ハロン最速の馬は複勝率69.7%を誇る。他のコースよりも優秀な数字で、切れ味自慢は確実に押さえておきたい。

ラップ関連で昨年最も注目を集めたのは阪神JF。勝ったレシステンシアは前半3F33.7で快調に飛ばした。このタイムは阪神外回りコースができた2006年以降で最も速い。逃げ馬に非常に負荷のかかる展開の中、さらに上がり3ハロン最速の脚を繰り出し他馬に5馬身の差をつけてゴール。

「極めて」という形容が一つでは足りないほど優秀なレースぶりだった。当該コースで逃げかつ上がり最速をマークした馬は2006年以降わずか11頭しか存在せず、このうち前半3Fが2番目に速かったのはベステンダンクが18年の米子Sでマークした34.5。レシステンシアはこのオープンクラスの古馬より1秒近くも速かった。

追い上げるロードカナロアに注目

阪神芝1600m・過去5年の種牡馬別成績ⒸSPAIA


種牡馬別では切れ味自慢が台頭するレースらしくディープインパクト産駒が走る。ただし8番人気以下では勝利がないこともあり、単回率は53%と低調だ。出走頭数は決して多くないもののヴィクトワールピサ産駒も3割近い複勝率をキープしている。ディープを猛追しているのがロードカナロアで、勝率はディープを押さえてトップに君臨。ダイワメジャー産駒もアドマイヤマーズやメジャーエンブレム、レーヌミノルらの活躍を筆頭に堅実な走りを見せている。

現役種牡馬でこのコースを特に苦手にしている馬はいないものの、ルーラーシップ産駒はのべ80頭以上の出走がありながら1勝にとどまっている。複回率は84%と水準の数字を残しているが、単回率はわずか1%とアタマでは狙いにくい。

阪神芝1600m・過去5年の騎手別成績ⒸSPAIA


騎手別成績ではルメール騎手が他コース同様に安定している。回収率も単複ともに90%程度と十分だ。川田将雅騎手はそのルメール騎手を上回る27勝を挙げており、後述する中内田充正調教師とのコンビでは【10-3-2-8】複勝率65.2%、単複ともに回収率100%超えと文句なしの成績だ。M.デムーロ騎手も【22-18-12-63】複勝率45.2%だが、回収率は60%台にとどまる。

福永祐一騎手は上記の3人に騎乗馬の質では劣るものの十二分に渡り合っており、重賞を除くと複勝率48.1%と半数近くを馬券圏内に導いている。回収率は100%近辺と馬券妙味も上々だ。浜中俊騎手・和田竜二騎手もこのコースで買える。対照的に藤岡康太騎手が【0-3-4-81】複勝率8.0%と苦手にしており、割引が必要か。

好走馬は外回りで

阪神芝1600m・過去5年の調教師別成績ⒸSPAIA


調教師別成績では栗東の名伯楽が並ぶ中、池江泰寿調教師がただひとり複勝率5割の大台に乗せた。GⅠこそ当該期間の勝利がないものの他クラスでは全般的に好成績を残しており、素直に信頼したい。

新進気鋭の中内田充正調教師は2番人気以内に限定すると【14-3-3-6】複勝率76.9%をマーク。単複回収率も100%を上回り、人気馬は無条件で軸に据えるべきだろう。ジュエラーなどを管理した藤岡健一調教師もこの舞台ではさすがの安定感を誇っている。その他では須貝尚介調教師、角居勝彦調教師を押さえておきたい。

過去5年・阪神芝1600mで馬券になった馬のコース別成績ⒸSPAIA


最後に阪神芝1600mで3着以内に入った馬における、その他全レースの成績をコース別に紹介。上級条件では芝1400m〜1800mを中心に各場で良績を残しているが、コース形態がよく似ている京都コースの成績がいい。

直線の長い外回りコースも左・右回り関係なく走っている。特に新潟の芝マイル、阪神芝1800mは回収率も高水準で、好走経験のある馬の評価を上げる必要があるだろう。

おすすめ記事