【競馬】パドックの見方を東大HCの獣医学専修生が伝授

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
パドックで注目すべき3つのポイント
そもそもパドックって一体何を見ればいいの?と思っている方も多いだろう。しかし、パドックには当日の仕上がりを見極めるヒントがたくさんある。そこで、東京大学「農学部獣医学専修」の筆者がパドックでのチェックポイントを伝授したい。
パドックの見方が簡単に分かるものは、歩法、発汗、周回位置だ。まず、歩法とは常歩・速歩など馬の歩き方のことで、パドックでは馬のテンションを反映している。首を使って大きな常歩で歩くことが理想である。馬は常歩で歩くとき、正面から見ると∞を描くように、また横から見ると前後に首を動かしている。
首の動きは常歩のリズムと連動しているので、首の使い方から歩法の良しあしを判断できるというわけだ。そして、首の動きが大きい時は、馬が後肢をしっかりと踏み込んで体を大きく使って歩いており、良い状態と言える。逆に首の動きが小さい時は、緊張していたり筋肉がほぐれていなかったりと体を柔軟に使える状態ではないと考えられ、あまり良い状態とは言えない。
次に発汗も馬のテンションを表す指標の一つだ。馬は暑いだけでは汗をかかず、運動や興奮によってかく。つまり、パドックでの発汗は興奮を表していると言える。
最後に周回位置とはパドックの内側・外側のどこを歩いているかのことである。リズム良く歩けている馬は内回りする必要がなく、落ち着いている馬は観客の近くを歩いても問題がないため、外目を歩く様子がしばしば見受けられる。
馬個別で過去のパドックと比較せよ
先ほど、パドックで見るべき馬の状態について解説したが、1回だけ見て馬の状態を判断するのは難しく、どんな個性の馬か知った上で見る必要がある。例えば2019年菊花賞勝ち馬ワールドプレミアは、菊花賞のパドックで首をブンブン振り回すなど気の悪いところを見せており、買うのを控えたくなるような様子だった。
しかし、テンションの高さはこの馬の個性で、菊花賞以前のパドックも常にテンションの高さを見せながら菊花賞に至るまで1度も馬券圏内を外すことがなかった。菊花賞の結果(1着)が示す通り、パドックで割引する必要はなかったということが分かる。
また他にもメンコやブリンカーなどには音や視界を遮ることで馬が興奮するのを防ぎ集中を促す効果があるので、馬装からは厩舎がその馬の様子をどのように捉えているかうかがえる。馬に対する制限が強く、テンションが上がってきた場合に二人引きに切り替えることがあるので、人数が前走と異なったり途中で変化したりした場合にも注目したい。
